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週末にグランツリーなどのショッピングモールを歩いていると、大きなお腹を抱えながら、上のお子さんの手を引いて歩くお母さんたちをお見かけすることがあります。そのたびに、「どうかお身体を大切に」と心の中でそっとエールを送っています。
さて、前回の「アブリスボ(RSウイルス母子免疫ワクチン)」のお話には、多くのプレママ・プレパパから反響をいただきました。
「知らなかった」「お腹にいる今から赤ちゃんを守れるなんて」という温かいお声を診察室で直接伺い、私たち小児科医から正しい情報を発信していくことの意義を改めて実感しているところです。
「小児科医から妊婦さんへのお願い」シリーズ第2回となる今回は、もう一つの恐ろしい感染症から赤ちゃんを守るお話です。
テーマは「百日咳(ひゃくにちぜき)」。そして、それを防ぐために妊婦さんにぜひ知っていただきたい「百日咳ワクチン」について解説します。
欧米などの医療先進国では、妊婦さんがこのワクチンを接種することは広く一般化しています。日本ではまだ産婦人科で勧められる機会が少ないからこそ、生まれてくる赤ちゃんを一番近くで診る立場である小児科医として、どうしても今お伝えしたい大切な事実があります。
<忙しい方のためのまとめ>
生後2ヶ月未満の赤ちゃんに対する「百日咳」の命にかかわるリスク
大人の「熱のない長引く咳」が百日咳であった場合、自ら免疫を作れない生後2ヶ月未満の赤ちゃんに感染すると、「無呼吸発作」などを引き起こし、命に関わる重大な脅威となります。
「母子免疫」による無防備な期間(生後2ヶ月間の空白)の強力な保護
お母さんが妊娠中にワクチンを接種することで、へその緒を通じて赤ちゃんへ抗体が引き継がれます。これにより、赤ちゃんが自分でワクチンを打てるようになるまでの最も無防備な期間を、感染や重症化から強力に守ることができます。
妊婦さんの負担に寄り添う「選べる2種類のワクチン」
当院では、「国産DPT」と、副反応を抑えた世界標準の「輸入Tdap」の2種類をご用意しています。
■ 接種のご予約・ご相談はこちらから
「先生、上の子の風邪がうつったのか、私までコンコンと咳が長引いちゃって……」
診察室で、お腹の大きな妊婦さんからこのようなお話を伺うことがよくあります。熱もないし、ただの風邪。大人はそう思いがちです。
しかし。私たち小児科医は、この「熱もない、ただ長引く咳」にギョッとします。なぜなら、その「ただの咳」の正体が『百日咳』だった場合、これから生まれてくる赤ちゃんにとって非常に大きな脅威となってしまうからです。
「百日咳って、昔の病気じゃないの?」
そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。確かに大人がかかった場合は、名前の通り少ししつこい咳が続く程度で、いつの間にか自然に治ってしまうことがほとんどです。自分が百日咳であることに気づかないまま過ごしている方も少なくありません。
しかし、生後数ヶ月、特に「生後2ヶ月未満」の赤ちゃんが感染すると、話は一変します。
生まれたばかりの小さな赤ちゃんは、私たち大人のように「ゴホン」と上手に咳をして痰を出すことができません。「コンコンコンコン!」と発作のように連続して激しく咳き込んだ後、息を吸うタイミングを見失ってしまいます。そして顔を真っ青(あるいは真っ黒)にして、突然息を止めてしまうのです。
これが、百日咳の最も注意すべき特徴である「無呼吸発作」です。
脳への酸素供給が滞ることで後遺症が残ったり、最悪の場合は命に関わることもあります。生まれて間もない我が子が急に息をしなくなる様子を前にしたご家族のショックは、計り知れません。
「日本ではそんなにひどいことは起きないのでは?」と思われるかもしれませんが、決して遠い海外の昔話ではありません。
日本小児科学会の報告によると、日本国内の直近(2025年)の百日咳流行期において、少なくとも8人の乳児が百日咳によって命を落としているという悲しい事実が明らかになっています。決して他人事ではありません。
赤ちゃんは生後2ヶ月になると、ヒブや肺炎球菌、ロタ、B型肝炎、そして百日咳を含む「五種混合」ワクチンの接種をスタートできます。
これは裏を返せば、「生まれてから生後2ヶ月を迎えるまでの間、赤ちゃんは百日咳と戦うための免疫を自分では持っていない」ということです。完全に丸腰の状態で、目に見えない細菌の脅威にさらされている状態と言えます。
上のお子さんや、一番身近なお父さん・お母さんが外から持ち込んでしまうかもしれない百日咳。手洗いやうがい、咳エチケットだけでは、強い感染力を完全に防ぎきることは困難です。
そこで、この「最も無防備な2ヶ月間の空白」を守り抜くための有力な選択肢となるのが、ママから赤ちゃんへ、お腹の中で免疫をプレゼントする「母子免疫(ぼしめんえき)」なのです。
「妊娠中にワクチンを打つことで、本当に赤ちゃんを守れるの?」
そう疑問に思われるお母さんのために、オランダで2026年4月に発表された大規模な流行分析のデータをご紹介します。
お母さんが未接種だった場合のリスク
生後2ヶ月未満で百日咳にかかってしまった赤ちゃんの母親を調べたところ、じつに8割以上(83%)が「ワクチン未接種」でした。
ワクチンによる高い予防効果
お母さんが妊娠中に百日咳のワクチンを受けていた場合、生まれた赤ちゃんが生後2ヶ月未満で百日咳にかかるリスクを「9割以上(91%)」防ぐことができていました。
重症化の回避
たとえ感染したとしても、入院が必要になるような重症化を「9割(90%)」防いでいたことも分かっています。
お母さんが妊娠中にワクチンを1回接種するだけで、生まれてすぐの赤ちゃんに「心強い盾」をプレゼントできることが、データからも明確に示されています。
これまで、日本の大人が接種できる百日咳ワクチン(乳幼児用の3種混合:DTaP)は、大人が打つと注射した部分が大きく腫れたり、強い痛みが出たりといった副反応が起こりやすいという課題がありました。
そのため当院では、「妊婦さんに強い副反応で辛い思いをしてほしくない」という想いから、大人向けに成分量が調整された世界標準の「輸入ワクチンTdap」をいち早く導入してまいりました。
| 比較項目 | 国内産ワクチン(DPT) | 輸入ワクチン(Tdap) |
| 特徴 | 国内承認 | 世界標準として広く普及。大人向けに成分調整 |
| 安全性 | 不活化ワクチンのため、お腹の赤ちゃんへの影響は心配ありません | 同左 |
| 局所の副反応 | 腫れや痛みが出やすい傾向がある | 腫れや痛みが抑えられている |
| 当院価格(自費) | 税込 9,900円 | 税込 13,200円 |
※どちらを選べばいいか迷われた際は、受診時に小児科専門医の立場から丁寧にご説明いたします。どうぞ安心してご相談ください。

「産婦人科ではなく、どうして小児科で妊婦向けのワクチンを勧めるの?」と聞かれることがあります。
理由は2つ。
1つ目はもちろん「予防できるはずの病気で、生まれたばかりの赤ちゃんの命が危険にさらされる姿を、もう見たくないから」です。
生まれてきた赤ちゃんが百日咳で苦しそうに呼吸を止め、集中治療室で必死に闘っている姿を実際に診て、治療を行うのは私たち小児科医です。現場のリアルな怖さを知っているからこそ、リスクや費用といった側面もきちんとお伝えした上で、それでも「大切な選択肢として知っておいてほしい」と強く願っています。
2つ目は、赤ちゃんが生まれてくる前から小児科かかりつけ医を持ってほしいという考えからです。赤ちゃんが生まれて間もなくは、お母さんの体調も整わず、生後2か月から始まるワクチンデビューをどうするか、もし生まれてきた赤ちゃんに湿疹などの皮膚トラブルがあった場合どうするかなどを考える余裕はないと思います。赤ちゃんが生まれる前の少しだけまだ余裕がある間に、小児科の下見ついでにワクチン接種を受けていただければと考えています。
「上の子の時にはこんな話聞かなかったな」という経産婦さんも、ぜひ最新の医療の進歩に目を向けていただければと思います。。少しでも「話だけでも聞いてみたいな」「赤ちゃんにお守りをあげたいな」と思われたら、そのままにせず、当院(044-739-0888)までお気軽にお問い合わせください。
お母さんの「我が子を無事に守り抜きたい」という温かく強い想いを、私たちスタッフ一同、全力でサポートいたします。
【予告】
次回、シリーズ第3回は「インフルエンザワクチン」についてです。お母さん自身と赤ちゃんを冬のウイルスから守るための必須知識をお届けします。お楽しみに!
※本記事の内容は2026年8月時点の医療情報に基づいています。ワクチンの効果や副反応には個人差があります。接種のご相談やご自身の健康状態に関するご質問は、ぜひお気軽に当院までご相談ください。
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Instagram: 武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科
当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)
© Morino Kodomo Clinic
