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こんにちは。
「武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科」院長のくま先生(小児科専門医)です。
今回は「耳垢(みみあか)」と耳かきについてのお話です。
健診や予防接種の時に、当院では子育てのお悩みにも寄り添いたいと考え「何か困っていることはありませんか?」と必ず聞くようにしています。
そこで、よく耳かきの頻度について質問があるので、このブログにまとめてみました。
まずは、私の思い出話から。
私がまだ医師になって2年目のころ、外来で小学生の男の子にこんなことを聞かれました。
「先生、みみかきなんてする必要あるの?僕は嫌いなのに、お母さんが『気持ちいいから』って言ってくる」
その時、私は「耳が詰まっちゃうからねー」と答えたものの、彼の「なぜ?」という問いに対して、医学的な根拠をもって自信をもって説明することができませんでした。当時は日々の業務に追われ、耳垢という身近なテーマについて深く調べる余裕がなかったのも事実ですが、今思い返すと少し恥ずかしい失敗談です。
今回は、当時の私と同じように「こどものみみかきってどれくらい必要?」と疑問に思っている親御さんに向けて、耳垢(みみあか)の秘密をわかりやすくお話しします。
<忙しい方のためのまとめ>
家庭での耳かきの頻度は「ゼロ」で大丈夫
人間の耳には自浄作用(セルフクリーニング機能)があり、食事やおしゃべりであごを動かすことで、古い耳垢は自然に外へと排出されます。
耳垢はゴミではなく、耳を守る「天然のバリア」
弱酸性で抗菌作用や保湿効果を備えており、デリケートな耳の中を乾燥やばい菌(カビなど)から守る優秀な役割を果たしています。
お手入れは「お風呂上がりに耳の穴の手前とまわり(耳介)を優しく拭うだけ」
綿棒は耳垢を奥へ押し込んでしまったり、皮膚を傷つけたりするリスクがあるため使用を控えましょう。
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当院の診察室でも、このようなやり取りが日常茶飯事です。
お母さん
「先生、この子すぐ耳垢がたまるんですけど、みみかきの頻度ってどれくらいが正解なんでしょうか?」
くま先生
「実はお母さん、お家でのみみかきは基本的にやらなくていいんです。頻度で言えば『ゼロ』で大丈夫ですよ」
お母さん
「えっ!そうなんですか?でも、そのままにしておくと不潔になりませんか?ばい菌が繁殖しそうで心配です」
くま先生
「お気持ちはよくわかります。でも、人間の耳には私たちが思っている以上に優秀な『お掃除機能』と『バリア機能』が備わっているんです。かえって触らない方が、耳の健康は保たれるんですよ!!」
多くの方が「耳垢=ただの汚れやゴミ」だと考えていると思います。しかし、医学的に見ると、耳垢は外耳道(耳の入り口から鼓膜までの道)を守る大切なバリアとして働いていることがわかっています。
耳垢は弱酸性(pH約6.1)に保たれており、リゾチームという抗菌物質やコレステロールなどの脂質を含んでいます。つまり、デリケートな耳の中の皮膚が乾燥するのを防ぐ天然の「保湿クリーム」であり、ばい菌やカビの繁殖を抑える「殺菌軟膏」でもあるのです。2017年に米国耳鼻咽喉科頭頸部外科学会(AAO-HNSF)が発表した臨床診療ガイドラインでも「無症状の耳垢に対しては日常的に除去すべきではない」と明確に勧告されています。
では、なぜ放置していても耳は詰まらないのでしょうか?
それは、耳に「自浄作用(セルフクリーニング機能)」があるからです。
正常な耳の穴の皮膚は、鼓膜の中心から外側に向かって1日に平均約0.094ミリというスピードでゆっくりと移動しています。まるでベルトコンベアのように、古い皮膚や耳垢を自然に外へ外へと運び出してくれるのです。寝返りをうったり、ご飯を食べたりおしゃべりをしたりして「顎を動かす」ことも、この自然な排出プロセスを助けています。

診察室でお話しすると「なるほど!」と驚かれることの多い4つの疑問にお答えします。
綿棒で優しくお掃除するのもダメなのでしょうか?
おすすめしません。良かれと思って綿棒を入れることで、本来なら自然に外へ出てくるはずの耳垢を、かえって奥へ奥へと押し込んでしまうからです。「自分の肘より小さなものを耳に入れてはいけない」というアメリカのユーモアある医療格言があるほど、耳の中に物を入れる行為はリスクを伴います。
奥に押し込まれた耳垢はどうなってしまうの?
カチカチに固まって耳の穴を完全に塞いでしまう「耳垢塞栓(じこうそくせん)」という状態になることがあります。健康なこどもの10人に1人がこの状態になっているというデータもあり、難聴や耳の痛みの原因になるだけでなく、私たち小児科医が風邪の診察をする際に「中耳炎のチェックができない」という大きな壁になってしまいます。
子供が耳を痒がっている時はどうすればいいですか?
無理に綿棒などを入れるとデリケートな皮膚に細かい傷がつき、細菌感染を起こして強い痛みを伴う「外耳道炎」を引き起こす恐れがあります。もし入り口付近にカサカサした耳垢がポロッと出ている時だけ、指でつまんで取る程度にとどめてください。痒みが続く場合は、まずは当院にご相談ください。
定期的に耳掃除のためだけに耳鼻科を受診した方がいいの?
症状がない場合の定期的な受診は必須ではありません。
ただ、風邪や鼻水などで受診された患者さんに中耳炎の可能性が考えられた場合、私たちは全身診察の一環として耳の中(鼓膜)を確認します。その時に耳垢塞栓と判断すれば耳鼻咽喉科へ適切なタイミングでご紹介します。
「じゃあ、お風呂上がりのケアはどうしたらいいの?」と迷ってしまいますよね。今日からすぐに始められる具体的なアクションは以下の1つだけです。
お風呂上がりは、湿らせた清潔なガーゼやタオルで、耳の入り口と外側(耳介)を優しくサッと拭うだけにする。
綿棒を耳の穴の中に入れるのは、思い切ってお休みにしてみましょう。親御さんが、お子さんが泣いて痛がるのを押さえてまで行う必要は、医学的にもありません。
毎日の子育て、本当にやることが多くて大変だと思います。「みみかき」というタスクが一つ減ることで、お子さんとの笑顔の時間が少しでも増えれば嬉しいです。
耳に限らず、お子さんのことで不安なことがあれば、いつでも「武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科」へご相談ください。
<参照>
・American Academy of Otolaryngology–Head and Neck Surgery Foundation. ClinicalPractice Guideline. Clinical Practice Guideline (Update):Earwax (Cerumen Impaction). 2017
・ Epithelial Migration on the External Ear Canal Wall in Normal and Pathologic Ears. Otol Neurotol. 2011.
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当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)
© Morino Kodomo Clinic
