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本日は、小児のアレルギー外来で非常に多くご相談いただく「食物アレルギーの検査と食事制限」についてお話しします。

毎日のお子さんの食事作り。「アレルギーがあるかもしれない」と不安を抱えながら、特定の食材を避けて献立を考えるのは、本当に大変だと思います。まずは、当院を受診されたある患者様のエピソードをご紹介します。
※プライバシーに配慮し、よくあるケースとして構成しています。
ある日、7歳の男の子がお母様に連れられて当院を受診されました。診察室でお話を伺うと、お母様は涙をにじませてこうお話しされました。
「2歳の時に『30種類以上のアレルギーが一度にわかる』という血液検査を受けたところ、卵・小麦・牛乳・エビ・カニ・キウイが陽性でした。それ以来、今日までこれらをすべて除去して食事を作ってきました。でも、7歳になって、このままずっと制限を続けてよいのか、どうしてよいのかわからなくなってしまって……」
食べ盛りの男の子に対し、これだけ多くの食材を完全に除去することが、どれほど大変なことであったか。お母さんのご苦労を思うと、胸が締め付けられる思いでした。
実は、このような「過去の血液検査結果だけを理由に、不要な食事制限を指示され、長期間続けてしまっている」というケースは、小児科の臨床現場において頻繁に直面する大きな課題なのです。
⏱ 忙しい方のためのまとめ(3つのポイント)
ここで、親御さんに必ず知っておいていただきたいことがあります。 それは、「血液検査でIgE抗体の数値が高くても、必ずしも食物アレルギーとは診断できない」ということです。
日本小児アレルギー学会発行の『食物アレルギー診療ガイドライン2021』では、以下のように示されています。
感作(かんさ)
アレルギーの原因物質に対する抗体を体内に持っている状態(=血液検査が陽性になる状態)
発症
実際にその食物を食べて、じんましんや喘鳴、アナフィラキシーなどのアレルギー症状が出ること
血液検査が陽性(感作)であっても、実際に食べて症状が出る(発症する)とは限りません。ガイドラインでも、乳児期に食物へ感作している割合に対し、実際に食物アレルギーを発症する割合は約10%程度と、大きな開きがあることが分かっています。
体内にあるアレルギー反応を抑制する抗体(IgG抗体など)の働きにより、「検査数値は高いけれど、食べても全く症状が出ない」ことは多々あるのです。だからこそ、症状がない方に対して、むやみにアレルギー検査を行うことは推奨されていません。

近年、一度の採血で数十種類を同時に調べられる便利なアレルギー検査セットが普及しています。成人の花粉症などでは有用な場面もありますが、小児の食物アレルギー診断においては、少し注意が必要です。
食物アレルギーを疑った際、専門医は本来「食べて症状が出るもの」と、「重症度を予測するための特定の成分(コンポーネント)」を、意図を持って一つひとつ選んで検査します。
しかし、数十種類の網羅的なセット検査には、以下のような落とし穴があります。
偽陽性(ぎようせい)が出やすい
本当はアレルギーではないのに、数値だけが高く出てしまうことがあります。カビやダニ、雑草など、その時には全く必要のない項目まで結果が出てしまい、不安を煽る原因になります。
本当に必要な「コンポーネント」が含まれていないことがある
食物アレルギーの診断には、特定のタンパク質成分(コンポーネント)の確認が不可欠です。
卵
加熱すれば食べられるかを予測する「オボムコイド」
ピーナッツ
重篤なアナフィラキシーリスクの指標となる「Ara h 2」
小麦
「ω5-グリアジン」など
セット検査ではこれらの必須項目が不足しがちで、結果として不適切な食事制限につながるケースを多く見かけます。
では、どのような手順を踏むのが適切なのでしょうか。当院では以下のステップで慎重に診断を行っています。
症状の確認
実際に食べて症状が出たかを確認する。
詳細な問診(★最も重要)
何を、どのくらいの量、どのような調理法で摂取し、食後何分でどんな症状が出たか。ここから原因食物を推測します。
血液検査
あくまで「推測を裏付けるための参考所見」として活用します。
確定診断の検査
必要に応じて、以下の検査を行います。
食物経口負荷試験
医療機関内で原因食物を実際に少しずつ食べ、症状を確認する検査。
※ガイドラインが定める最も確実な診断法・ゴールドスタンダードです
プリックテスト
アレルギー原因物質の液体を皮膚に垂らし、専用の針で軽く触れて反応を見る検査。
当院では、安全管理を徹底した上で、この「食物経口負荷試験」や「プリックテスト」にしっかりと対応しております。

最後に、冒頭でご紹介した7歳の男の子のその後の経過をご報告します。
詳細な経緯をお伺いしたのち、当院で安全管理のもと食物負荷試験を実施しました。その結果、なんと卵・小麦・エビ・カニは問題なく食べられることが証明されたのです。
長年、厳しい食事制限を頑張ってきた男の子ですが、現在は憧れだった「オムライス」を美味しそうに頬張れるようになり、大変喜んでくれています。お母様からも「日々の食事作りが本当に楽になり、肩の荷が下りました」と安堵の笑顔を見せていただきました。
誤った解釈による不要な食事制限は、お子さんの成長・発達に必要な栄養を損なうだけでなく、ご家族の生活の質(QOL)を大きく低下させてしまいます。
もし現在、お子さんのアレルギー検査の結果や食事制限について疑問や不安をお持ちの方は、自己判断で制限を続ける前に、ぜひ一度「武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科」までご相談ください。
ご家族の毎日の生活に寄り添いながら、お子様にとって最適なサポートを一緒に見つけていきましょう。
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当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)
© Morino Kodomo Clinic
