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2026年9月27日リライト
「最近、なんだか元気がない」「顔色がちょっと青白い気がする」
そんなふうに感じること、ありませんか?
それ、もしかしたら鉄欠乏性貧血かもしれません。
鉄欠乏性貧血は、成長の過程にある子どもによく見られる“栄養の偏り”によって起こる体のサインです。特に乳児期後期や思春期は、鉄不足に陥りやすい時期。
今回は、小児科専門医として、子どもに多い鉄欠乏性貧血の特徴と、見逃さないためのポイント、家庭でできる予防や対策について分かりやすくご紹介します。
<忙しい方のためのまとめ>
乳児期後期(生後9ヶ月〜1歳半)と思春期は「鉄欠乏性貧血」の2大好発期
成長に伴う鉄分の需要増大や、離乳食の進み具合、思春期の初潮などが要因となり、気づかないうちに「かくれ貧血」に陥るリスクが高まります。
「牛乳の飲み過ぎ」は鉄不足を招く大きな原因に
1日500mL以上の過剰な牛乳摂取は鉄の吸収を妨げる要因になるため、離乳食からの鉄分補給(赤身肉や青菜など)を優先し、牛乳は1歳を過ぎてから適量を与えることが重要です。
顔色での判断は困難。疲れやすさや集中力低下など「ささいな変化」がサイン
氷を食べたがるなどの異食行動のほか、乳児期には脳や運動の発達の遅れに、思春期には学力や身体パフォーマンスの低下に直結する恐れがあります。
ビタミンCと合わせた鉄分摂取を。不安な場合は当院での血液検査・治療が可能
家庭での食事改善(鉄分+ビタミンC)を基本としつつ、不調のサインが見られる場合は当院で検査を行い、必要に応じて鉄剤(シロップや錠剤)を処方し改善をサポートします。
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私たちの体には、酸素を運ぶための「赤血球」という細胞があります。その赤血球をつくるのに欠かせない材料が「鉄分」です。鉄が足りなくなると、赤血球がうまく作られず、体の隅々に酸素が届かなくなってしまいます。
これが鉄欠乏性貧血です。
子どもは体の成長スピードが速く、鉄の必要量も多くなります。ところが、食事が偏ったり、消化・吸収がうまくいかなかったりすると、すぐに鉄が不足してしまうのです。
生まれた赤ちゃんは、胎内で蓄えた鉄分を持っていますが、それは生後6か月頃までで使い切ってしまいます。その後は、食事から鉄分を補う必要があります。
ところが、離乳食の進み方には個人差があり、食が細かったり、好き嫌いが出てきたりすると、鉄分が不足しがちになります。
さらに注意が必要なのが牛乳の飲みすぎです。牛乳はたんぱく質やカルシウムは豊富ですが、鉄分はほとんど含まれていません。
しかも、牛乳に含まれるカルシウムやカゼイン(たんぱく質)は、鉄の吸収を妨げる働きもあります。
カナダで行われた地域の調査データによると、1〜3歳の子どものうち、1.5%以上が「鉄欠乏性貧血」であったと報告されています。 さらに注意すべきなのは、貧血には至っていないものの体内の鉄分が枯渇している「非貧血性鉄欠乏(かくれ貧血)」の割合が12%以上にも上ったという数字です。 つまり、10人に1人以上の子どもが鉄分不足のリスクを抱えている計算になります。
■ 鉄不足になりやすい「生活習慣」のサイン
医学論文のデータをもとに、鉄不足に陥りやすい危険な要因(リスク因子)をいくつか挙げます。
・牛乳の飲み過ぎ(1日500mL以上の摂取)
・1歳(12ヶ月)になる前に牛乳を与え始めた
・1歳〜1歳3ヶ月(12〜15ヶ月)を過ぎても哺乳瓶を使っている
・生後6ヶ月を超えて、完全母乳のみ
・お肉など、鉄分を多く含む離乳食の進みが悪い
・早産や低出生体重で生まれた
・お母さん自身が妊娠中に鉄欠乏だった
この中で特に気をつけていただきたいのが「牛乳と哺乳瓶」の組み合わせです。 牛乳自体は体に良い飲み物ですが、鉄分はほとんど含まれていません。哺乳瓶で牛乳を飲みすぎてお腹がいっぱいになると、本来食べるべきお肉や野菜が食べられなくなってしまいます。 1日500mL以上の過剰な牛乳摂取は、鉄欠乏の大きな原因として指摘されているため注意が必要です。
🔸この時期のポイント
・鉄分の多い食材(赤身肉、魚、豆腐、緑黄色野菜(小松菜やホウレンソウ)など)を離乳食に
・牛乳は1歳を超えてから。
・牛乳を1歳以上で飲む場合も、1日400〜500ml以内を目安に
・母乳栄養の赤ちゃんは特に、離乳食の鉄分補給が大切

乳児期は、脳や神経の発達が著しい時期です。この時期に鉄分が不足すると、脳の発達に悪影響を与える可能性が指摘されています。
言葉の発達が遅れる
運動発達(ハイハイや歩行)が遅れる
注意力や集中力が弱くなる
感情が不安定になりやすい(泣きやすい、機嫌が悪い)
一度発達に遅れが出てしまうと、後から鉄分を補っても完全には追いつけないこともあります。だからこそ、この時期の鉄不足は「早期発見・早期対応」がとても重要です。
思春期は、体も心も大きく変わる時期。骨や筋肉が急速に成長し、血液量も一気に増えます。
そのため、鉄の必要量もぐんと増えるのです。
特に女の子は、初潮を迎えて月経が始まることで、定期的に鉄を失うようになります。
一方、男の子も筋肉の発達が進み、鉄が多く必要になります。
さらに、この時期は食事の偏り(ダイエットや朝食抜きなど)が起こりやすく、貧血につながりやすい要因がそろっているのです。
🔸この時期のポイント
・バランスの取れた食事を意識(特に鉄・ビタミンC・たんぱく質)
・朝食をしっかり食べる
・スポーツをする子はさらに注意(汗や筋損傷で鉄が失われやすい)
・月経の重い女の子は定期的な貧血チェックを
思春期の子どもにとって、鉄分不足は心身のパフォーマンスを低下させる大きな要因になります。
学校での集中力が続かない、成績の低下
朝起きづらくなり、遅刻や欠席が増える
倦怠感からやる気が出ない、イライラする
スポーツ時に疲れやすく、持久力が落ちる
女の子では月経過多が進行し、悪循環に
特に最近は「起立性調節障害」と合併するケースも多く、貧血によって朝が弱くなる・頭痛が続くなどの訴えが強くなることもあります。
「うちの子は顔色もいいし、毎日元気だから大丈夫」と思われるかもしれませんが、まぶたの裏や顔色を見るだけで貧血を見抜くのは専門医でも困難です。
複数の研究を集めたメタアナリシスによれば、極端な重症貧血にならない限り、顔色などの見た目から貧血を正確に診断することはできないと示されています。
子どもの貧血は、大人のように「ふらふらする」「立ちくらみがする」とは限りません。むしろ、次のような“ささいな変化”として現れることが多いのです。また、乳児では症状が無い場合も多々あります。
顔色が青白い、または黄色っぽい
元気がない、疲れやすい
食欲がない
集中力が続かない
爪が薄く、反り返ってくる
氷やティッシュなどをなめたがる(異食)
もし複数当てはまる場合は、かくれ貧血が疑われます。小児科で血液検査を受けるとすぐにわかります。
| 食材グループ | 食材例 |
|---|---|
| 赤身の肉・魚 | 牛レバー、豚レバー、マグロ、カツオ、しらす |
| 大豆製品 | 納豆、豆腐、高野豆腐、きなこ |
| 緑の野菜 | ほうれん草、小松菜、ブロッコリー |
| 卵 | 卵黄(ゆで卵や炒り卵で) |
これらに加え、ビタミンC(いちご、みかん、ピーマンなど)を一緒にとると、鉄の吸収が良くなります。
食事中・食後に緑茶や紅茶を飲むと、タンニンという成分が鉄の吸収を妨げてしまいます。
代わりに麦茶や水が安心です。
<乳児期>
生後10カ月前後で生理的に貧血になることが分かっているので、アメリカでは通常1歳頃に貧血のチェックのための採血を行っています。
ご不安な方は当院で採血を行います。
鉄欠乏性貧血があった場合は、離乳食指導および鉄剤(シロップ)の投与を3か月以上行います。
<思春期>
軽い貧血であれば、まずは食事の見直しだけで改善します。
しかし、鉄がかなり不足している場合は、鉄剤(錠剤)を数か月内服する治療を行うことがあります。
鉄剤を飲み始めると、便が黒くなったり、便秘になることがありますが、これは一時的なもの。医師の指導のもと、無理なく治療を続けていきましょう。
鉄欠乏性貧血は、気づかれにくいけれど大切なサインです。
特に乳児期後期と思春期は、成長に伴う“鉄の需要”が高まり、知らないうちに鉄が不足しがちになります。
「うちの子、なんだか疲れやすい」「顔色が悪いけど、風邪じゃなさそう」
そんなときは、ぜひ“鉄”のことを思い出してみてください。
早めの気づきと適切な対応が、子どもの健康と未来を守ります。
<参考>
Patricia C Parkin, Jonathon L Maguire. Iron deficiency in early childhood. CMAJ 2013 Oct 1;185(14):1237–1238.
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日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)
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