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近年は夏が長くなっているのでしょうか。5月ごろから気温も湿度もぐんぐん上がり、セミの鳴き声が聞こえるなんてことも。水遊びや虫捕りと楽しいイベントが目白押しの夏ですが、この時期の小児科や小児皮膚科の外来には、お子さんの「肌トラブル」に関するご相談が急増します。
その中でもダントツで多いのが、「あせも(汗疹)」と「とびひ(伝染性膿痂疹)」です。「最初はちょっとした首の赤みだったのに、気づいたら全身にジュクジュクが広がってしまった…!」と慌てて来院される親御さんも少なくありません。実は、この二つの病気には密接な関係があり、初期段階での適切なケアが明暗を分けます。
本日は、小児皮膚科の視点から「あせも」と「とびひ」の違いを分かりやすく解説し、ご家庭でできる正しいスキンケアや、親御さんからよく頂く疑問(Q&A)について詳しくお話しします。

まずは、それぞれの疾患の正体と違いを知っておきましょう。
■ 子どもに「あせも」ができやすい理由
医学用語で「汗疹(かんしん)」と呼ばれるあせもは、大量に汗をかいた際、皮膚にある汗の出口(汗腺)が詰まってしまい、皮膚の内部に汗が溜まって炎症を起こす非感染性の病気です。 「うちの子は本当にあせもができやすくて…」と悩まれる方も多いですが、これには医学的な理由があります。実は、汗を出す「エクリン腺」の数は、大人も子どもも約200万〜300万個とほぼ同じです。つまり、小さな子どもの体は「汗腺がギュッと密集している状態」なのです。そのため、少し暑いだけでもあっという間に汗だくになり、汗の管が詰まりやすくなります。 赤いポツポツとした発疹と、チクチク・モゾモゾとする強いかゆみが特徴で、首回り、肘や膝の裏、おむつで蒸れるおしりなどが好発部位です。
■ 「とびひ」は細菌による感染症
一方の「とびひ」は、医学用語で「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」と呼びます。あせもが非感染性であるのに対し、とびひは「細菌感染」が原因です。 主な原因菌は、私たちの皮膚や鼻の中に普段から潜んでいる「黄色ブドウ球菌」や「溶血性連鎖球菌(溶連菌)」です。火事の火の粉が風に乗ってあっという間に燃え広がるように、体のあちこちに症状が「飛び火」することからこの名が付きました。水ぶくれ(水疱)ができ、それが破れてジュクジュクしたびらんや、かさぶたを作るのが特徴です。
あせもが非感染性であるのに対し、「とびひ(伝染性膿痂疹)」は「細菌感染」が原因です。火事の火の粉が風に乗ってあっという間に燃え広がるように、体のあちこちに症状が「飛び火」することからこの名が付きました。
実は、この「とびひ」には原因となる細菌や症状によって、大きく分けて2つの種類があるのをご存知でしょうか?
① 夏に多く、水ぶくれができる「水疱性膿痂疹(すいほうせいのうかしん)」
主な原因菌
黄色ブドウ球菌
特徴
夏場に乳幼児に多く見られる、いわゆる「夏のとびひ」の代表格です。虫刺されやあせもを掻き壊した傷口から菌が入り込みます。この菌が作り出す毒素によって皮膚の表面が剥がれ、水ぶくれ(水疱)ができます。この水ぶくれは非常に破れやすく、あっという間にジュクジュクとしたただれ(びらん)になり、全身へ広がっていくのが特徴です。
② 季節を問わず、厚いかさぶたができる「痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)」
主な原因菌
溶血性連鎖球菌(溶連菌)、または黄色ブドウ球菌との混合
特徴
アトピー性皮膚炎の湿疹や、ちょっとしたケガなどをきっかけに発症しやすく、年齢や季節を問わず見られます。こちらは大きな水ぶくれにはならず、赤く腫れて膿(うみ)を持った後に、厚くて黄色っぽい「かさぶた(痂皮)」ができるのが特徴です。発熱やのどの痛み、リンパ節の腫れといった全身症状を伴うこともあります。
とくに②の「痂皮性膿痂疹」の原因となる溶連菌は、まれに感染後に腎臓の炎症(急性糸球体腎炎)を引き起こすことがあるため、適切な期間、しっかりと抗菌薬(飲み薬)を飲んで治療することが非常に重要です。当院では小児の「腎臓」の専門外来も担当しておりますので、とびひの治療はもちろん、その後の体調変化についてもしっかりとフォローアップできる体制を整えています。
■ 要注意!「あせも」から「とびひ」への負のループ
夏場の外来で最も多いのが、あせもから「① 水疱性膿痂疹」へと移行してしまう負の連携プレーです。 始まりは、単なる「あせも」や虫刺されです。かゆみに耐えきれずお子さんが皮膚をガリガリと掻き壊してしまうと、皮膚のバリア機能が破壊されます。そこへ、爪の間などに潜んでいた黄色ブドウ球菌が入り込んで増殖し、あっという間に「とびひ」へと進行してしまうのです。 つまり、「いかに掻き壊しを防ぐか」が、夏の肌トラブル悪化を食い止める最大のカギとなります。
では、ご家庭ではどのような対策をすれば良いのでしょうか。当院でおすすめしている「3つの基本ケア」をご紹介します。
① とにかく「こまめに洗い流す」
汗をかいたら、放置せずにすぐ洗い流すことが一番の予防です。外遊びの後やお昼寝の後などは、サッとシャワーを浴びせてあげましょう。毎回石鹸を使う必要はありません。1日1回はよく泡立てた石鹸で優しく手洗いし、それ以外はお湯で汗を流すか、濡れタオルで「こすらずに優しく押さえるように」拭き取るだけで十分です。
② 夏でも必須!「保湿」でバリア機能を守る
「夏は汗で潤っているから保湿は不要ですよね?」という声をよく耳にしますが、これは大きな誤解です。エアコンの効いた室内は乾燥しやすく、また頻繁なシャワーは皮膚から水分を奪います。乾燥した肌はバリア機能が低下し、細菌が侵入しやすい無防備な状態です。夏場はベタつきの少ないローションタイプやフォームタイプの保湿剤を選び、お風呂上がりにはしっかり保湿してあげてください。
③ 爪のケアは最強の防衛策
子どもに「掻いちゃダメ!」と言っても、かゆみがあれば無意識に掻いてしまいます。だからこそ、物理的なダメージを減らすために「爪を短く切り、角を丸くヤスリで整えておく」ことが非常に重要です。こまめな爪のケアが、とびひへの進行を未然に防ぎます。
日々の診療で親御さんからよく頂戴するご質問をピックアップして、エビデンスに基づいてお答えします。
Q1. とびひになってしまったら、保育園やプールはお休みしなければいけませんか?
A. プールはお休みですが、保育園は患部を覆えば登園可能なケースが多いです。 日本小児皮膚科学会の見解に基づくと、とびひの症状がある間は、プールの水を介して、あるいはタオルやビート板の共有によって他のお子さんにうつしてしまう可能性があるため、プールに入ることはできません。ジュクジュクが完全に乾燥し、かさぶたになって治りきるまではプールはお休みしましょう。 一方、保育園や学校については、病変部をガーゼなどでしっかりと覆い、滲出液(ジュクジュクとした汁)が外に漏れ出ないように処置ができており、発熱などの全身症状がなければ、基本的には登園・登校が可能です。
Q2. 夏に保湿剤を塗ると、ベタベタして逆にあせもが悪化しそうで心配です。
A. 塗りすぎには注意が必要ですが、適度な保湿は肌を守るために不可欠です。 確かに、軟膏などの油分が多い保湿剤をたっぷり塗りすぎると、汗腺を塞いでしまい、あせもの原因になることがあります。しかし、保湿を全くしないと肌のバリア機能が低下してしまいます。夏場はサラッとした使い心地の「ローション」や「泡(フォーム)タイプ」の保湿剤に変更するのがおすすめです。また、汗をかいたままの肌に塗るのではなく、シャワーなどで清潔にした後の肌に薄く伸ばすように塗るのがポイントです。
Q3. 病院へ行くタイミングの見極め方を教えてください。市販薬で様子を見ても良いですか?
A. 「ジュクジュク」や「水ぶくれ」が見られたら、すぐに受診してください。 軽いあせもであれば、シャワーや保湿といったホームケアで数日以内に改善することも多いです。しかし、「水ぶくれができている」「皮膚がジュクジュクして汁が出ている」「かゆみが強くて夜もぐっすり眠れない」といった症状がある場合は、すでにとびひに進行している可能性が高いです。 とびひは市販のあせも薬や保湿剤では治りません。原因菌をやっつけるための適切な抗菌薬(塗り薬や飲み薬)による治療が不可欠ですので、決して様子見をせず、早めに小児科や皮膚科を受診してください。
Q4. とびひになった後、保育園に登園許可書(医師の意見書)の提出は必要ですか?
A. 国のガイドラインでは「医師の許可書」は必須ではありませんが、園によってルールが異なるため事前の確認が必要です。
厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン」において、とびひ(伝染性膿痂疹)は、インフルエンザなどのように一律の出席停止期間が定められている疾患ではありません。そのため、基本的には医師が記入する「登園許可書(意見書)」の提出は必須ではありません。
※登園の際は、「ジュクジュクした病変部がガーゼ等でしっかりと覆われており、汁が漏れ出ないこと」が条件となります。
ただし、自治体や保育園によっては、集団感染を未然に防ぐために「念のためかかりつけ医による登園許可書をもらってきてください」という独自のルールを設けている場合もあります。そのため、まずは通われている保育園に「とびひになったが、登園にあたってどのような書類が必要か」を直接ご確認いただくのが最も確実です。
「武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科」では、小児科においても皮膚科・小児皮膚科においても、お子さんの皮膚の症状を見極め、ガイドラインに沿った的確な治療を行っています。
とびひの場合は適切な抗菌薬を処方し、かゆみが強くて掻き壊しのリスクが高い場合は、症状に応じて強さや塗る量を慎重に調整した上で、ステロイドの塗り薬を併用することもあります。「ステロイドのお薬は怖い」というイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、専門医の指導のもとで期間を区切って正しく使用すれば、長引くかゆみをスパッと断ち切り、皮膚をきれいに治すための非常に有効なお薬です。
私たちはお薬をお渡しするだけでなく、「なぜこのお薬が必要なのか」「おうちではどのように塗って、どうケアすればいいのか」を、分かりやすい言葉で丁寧にご説明いたします。ご家族の不安を取り除き、納得して治療に進んでいただけるよう、優しく寄り添う診療を大切にしています。
夏の肌トラブルは、対応が早いほどお子さんの負担も少なく、きれいに治ります。「これはあせも?それともとびひ?」と迷われたり、ご不安なことがあれば、いつでもお気軽に当院へご相談ください。
お子さんたちが、かゆみや痛みに悩まされることなく、笑顔いっぱいで楽しい夏を過ごせるよう、スタッフ一同、サポートいたします!
当院では小児科でも皮膚科・小児皮膚科でも「あせも」や「とびひ」のご相談をしていただけます。
まずは現在のお肌の状態を拝見し、最適な治療計画をご提案します。
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当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)
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