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日々の診察室で、親御さんから非常によく受けるご質問の一つに、ミルクの切り替えに関するものがあります。
「もうすぐ生後9か月になるんですが、フォローアップミルクに切り替えたほうがいいですか?」
「離乳食をあまり食べてくれないので、栄養不足が心配です。フォローアップミルクを飲ませるべきでしょうか?」
赤ちゃんが成長し、離乳食が中期から後期へと進むにつれて、多くの親御さんがミルクの選び方に悩むことと思います。ドラッグストアには様々な月齢向けのミルクが並んでおり、「9か月から」というパッケージ表記を見ると「そろそろ替えなきゃいけないのかな」と焦ってしまいますよね。
そこで今回は、アレルギーや小児の栄養状態、そして腎臓の診療にも携わる日本専門医機構認定小児科専門医の視点から、フォローアップミルクの必要性や、育児用ミルク(乳児用調製粉乳)との違いについて、厚生労働省などのガイドライン(医学的根拠)に基づきながら分かりやすく解説していきます。

まず、フォローアップミルクとはどのような目的で作られたものなのでしょうか。
日本の乳幼児栄養の基本指針である、厚生労働省の『授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)』には、以下のように明確に記載されています。
「フォローアップミルクは母乳代替食品ではなく、離乳が順調に進んでいる場合は、摂取する必要はありません。離乳が順調に進まず鉄欠乏のリスクが高い場合や、適当な体重増加がみられない場合には、医師に相談し、必要に応じてフォローアップミルクを活用します。」
(厚生労働省『授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)』第3章より引用)
つまり、フォローアップミルクは「育児用ミルクの次のステップとして、すべての赤ちゃんが必ず飲まなければならないもの」ではありません。あくまで、「離乳食からの栄養(特に鉄分など)が不足しがちな場合の補助食品」という位置づけなのです。
では、具体的に成分にはどのような違いがあるのでしょうか。分かりやすく3つを比較した表を作成しました。
【表1】ミルクと牛乳の成分の違い
| 比較項目 | 育児用ミルク(乳児用調製粉乳) | フォローアップミルク | 牛乳(普通牛乳) |
| 主な目的 | 母乳の代用品(赤ちゃんの発育に必要な栄養を網羅) | 離乳食期の栄養補給(特に鉄分・カルシウムの補完) |
飲料、食材
(※飲用は1歳以降を推奨) |
| 対象の目安 | 生後0か月から | 生後満9か月以降〜3歳頃まで | 1歳以降(飲用として) |
| たんぱく質・ミネラル | 赤ちゃんの未熟な腎臓に負担をかけないよう、母乳に近く調整 | 育児用ミルクよりも多い | 育児用ミルクよりもずっと多い |
| 鉄分 | 含まれている | 豊富に強化されている | 含まれていない(0.0 mg / 100g ※) |
| カルシウム | 含まれている | 育児用ミルクよりも多く強化 | 豊富に含まれている(110 mg / 100g ※) |
| 銅・亜鉛 | 成長に不可欠な微量元素として強化(添加)されている | 基本的に強化されていない | – |
| (※数値は文部科学省『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』の「普通牛乳」を参照) |
この表からわかる、医学的に重要なポイントが2つあります。
赤ちゃんが健やかに成長するためには、銅や亜鉛といった微量元素が必要です。育児用ミルクにはこれらが適切に添加されていますが、フォローアップミルクには通常、強化されていません。離乳が十分に進んでいない時期(主食がまだミルクの時期)に、育児用ミルクの代わりにフォローアップミルクだけを与え続けると、亜鉛不足などを引き起こし、成長に影響を与えるリスクがあります。
たんぱく質やナトリウムなどのミネラル分は、体内で処理される際に腎臓の働きを必要とします。育児用ミルクは腎臓への負担に配慮して作られていますが、フォローアップミルクや牛乳はこれらが多いため、月齢が低い時期に水やお茶代わりに飲ませすぎることには注意が必要です。
一方で、フォローアップミルクを利用する大きなメリットは「鉄分」にあります。
生後9か月頃からの離乳食後期になると、赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいた時に蓄えていた鉄分の貯金(貯蔵鉄)が底をつき、鉄欠乏性貧血になりやすくなります。鉄分は全身に酸素を運ぶだけでなく、脳の発達にも極めて重要な栄養素です。
赤身の肉や魚、レバーなどを使った離乳食でしっかり補えれば理想的ですが、それが難しい場合に、鉄分を強化したフォローアップミルクが非常に役立ちます。
ガイドラインを踏まえても「離乳食が順調であれば原則として不要」ですが、育児は決して教科書通りにはいきません。フォローアップミルクは「絶対に使ってはいけないもの」ではなく、状況に応じて賢く活用すべき「サポート役」です。
【表2】状況に合わせたミルクの使い分け例
| お子さんの状況 | 対応のヒント | 理由とポイント |
| 離乳食が順調(3回食)で、肉・魚・野菜もしっかり食べている |
水や麦茶へ徐々に移行。
フォローアップミルクは不要。 |
食事から十分な栄養が摂取できているため。1歳を過ぎたら牛乳の導入も検討できます。 |
| 生後9か月以降で、離乳食の進みが悪く、偏食や食べムラがある | フォローアップミルクの活用を検討。 | 鉄分等の不足を補うため。甘みで満腹になるのを防ぐため、1日1〜2回程度にとどめる工夫を。 |
| 母乳育児だが、離乳食からの鉄分摂取が不足気味で心配 |
母乳は継続。
離乳食の調理に活用する。 |
母乳はやめる必要はありません。シチューやパンケーキ等に混ぜて食材として活用すると効果的です。 |
| 1歳を過ぎて牛乳を飲ませたいが、味が嫌いで飲まない | フォローアップミルクで代用。 | 牛乳の代わりとしてカルシウムを補完しつつ、不足しがちな鉄分も強化できる有効な手段です。 |
「9か月になったから切り替える」のではなく、「目の前のお子さんの離乳食の進み具合や体重の増え方」を見て判断することが最も大切です。
離乳食の進み方や食べる量は、赤ちゃん一人ひとり全く異なります。
当院では、エビデンス(医学的根拠)やガイドラインを重要視しながらも、それをそのまま押し付けるのではなく、患者さんに応じたわかりやすい説明と優しく寄り添う診療を心がけています。ガイドラインはあくまで「目安」であり、目の前のお子さんの生活にどう活用するかを一緒に考えるのが、私たち小児科医の役割です。
「うちの子は鉄分が足りているのかな?」
「体重の増え方がゆっくりだけど、フォローアップミルクを使った方がいいのかな?」
もし少しでも迷われたり、ご不安を感じたりした時は、ぜひお気軽にご相談ください。成長曲線を確認し、普段のお食事の様子をお伺いしながら、ご家族と一緒にその子にとってベストな方法を見つけていきましょう。
「武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科」は、いつでもご家族と一緒にこども達の健やかな成長を見守っていきたいと考えています。どうぞお気軽にご来院ください。
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当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)
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