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毎日のお子さんの食事作り、お疲れ様です。
「武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科」院長の「くま先生」です。
日々の診察のついでや健診の場で、親御さんから本当に多く寄せられるのが、「子どもがご飯を食べてくれない」「特定の野菜ばかり避ける」という偏食や少食に関するお悩みです。
親としては、子どもの成長を願うからこそ「栄養のあるものをしっかり食べてほしい」と焦ってしまいますし、私もそうです。その結果、ついつい「ほら、お皿に残っているの、全部食べてしまいなさい」「あと一口だけ頑張ろう」と声をかけてしまうのは、痛いほどよくわかります。
しかし、このような「食べるようにプレッシャーをかけること」は、本当に子どもの食事量を増やすことにつながるのでしょうか。
今回は、経験則ではなく医学的なデータに基づいた「食事の無理強いが与える影響」について一緒に考えていきたいと思います。
<忙しい方のためのまとめ>
「全部食べて」というプレッシャーは逆効果であり、研究データでも、無理強いをしない環境のほうが子どもは自発的に多く食べることが示されています。
食事を強制されると子どもは反発心や食べ物への嫌悪感を抱きやすく、結果的に小食や体重増加の停滞を招く悪循環に陥るリスクがあります。
親御さんの役割は「食事を用意する」までと割り切り、食べる量はお子さんに任せつつ、まずはご自身が楽しく美味しそうに食べる姿を見せることが改善への第一歩です。
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学術誌『Appetite』に掲載されたAmy T. Galloway氏らの論文(2006年)をご紹介します。この研究では、3〜5歳の子どもたち27人を対象に、食事へのプレッシャーがどのような影響を与えるかを実験しました。
子どもたちに2種類のスープを提供し、以下の2つのグループを作って比較しました。
プレッシャーをかけるグループ
大人が1分ごとに「スープを全部飲んでね」と声をかける(計4回)
プレッシャーをかけないグループ
スープを出した後は、食べるように促す声かけを一切しない
「しっかり声をかけたのだから、少しは多く飲んだはずだ」と思いたいところですが、結果は全くの逆でした。
「食べなさい」とプレッシャーをかけないほうが、スープの摂取量が有意に増加したのです。子どもはプレッシャーのない環境のほうが、結果的により多くの量を自発的に食べていたことがデータとして示されました。
さらに注目したいのは、食べている最中の子どもたちの「言葉」です。
「スープを全部飲んでね」と声をかけられた子どもたちは、圧倒的に多くの否定的な発言をしていました。記録されたネガティブなコメントは、プレッシャーのないグループでは30回だったのに対し、プレッシャーをかけられた条件では157回にものぼりました。
「飲みたくない」「嫌い」「ヤダ、美味しくない」といった言葉だけでなく、中には「いつもそうやって言うけど、いらないってば。すごくイライラする」と、明確に不快感を口にした子どもまでいました。
大人が良かれと思ってかけているプレッシャーが、子どもに食べ物に対する強い反発や嫌悪感を抱かせてしまっている。これは親として、少しハッとさせられる内容です。
この研究では、家庭での日常的な食事風景との関連も調べています。
家庭で日常的に「食べなさい」と強いプレッシャーをかけられている子どもは、今回の実験でプレッシャーを受けても受けなくても、食べる量にほとんど差が出ないことがわかりました。これは、子どもが日々の強いプレッシャーに対して「慣れ」てしまい、大人の要求を無視したり、反発したりする術を身につけてしまっている可能性を示唆しています。
また、家庭でよく食事のプレッシャーをかけられている子どもは、そうでない子どもに比べて「やせ気味(BMIのパーセンタイルが低い)」であるというデータも明らかになりました。
子どもが細身であったり、小食であったりするからこそ、心配して「もっと食べなさい」と強く促してしまう。しかし、そのプレッシャーが子どもを食事から遠ざけ、結果的に摂取量を減らしてしまうという悪循環が起きてしまっている可能性が示されました。
幼児期は自我が芽生え、「自分でコントロールしたい」という欲求が強くなる時期です。しかし、子どもの生活の大部分は大人が決めたルールで動いています。その中で「食べるか、食べないか」は、子どもが自分の意志でコントロールできる数少ない領域です。そこを無理やりコントロールされそうになると、子どもは自分を守るために無意識に反発してしまいます。
また、子どもには「ネオフォビア(新奇なものへの恐怖)」という、見慣れない食べ物を本能的に避ける防衛反応があります。「これを食べたら遊んでいいよ」と条件付きで無理に食べさせようとすると、その食べ物に対する嫌悪感がさらに強まり、生涯にわたって嫌いなまま固定化してしまうリスクすらあることが、過去の研究でもわかっています。

これらのデータを踏まえ、今日から実践できる具体的なアプローチをご提案します。
「食べるかどうか」は子どもに任せる
親の役割は「栄養バランスの取れた食事を食卓に用意すること」までと割り切ってみてください。用意されたものをどれくらい食べるか、あるいは全く食べないかを決めるのは子どもの役割です。一口も手をつけなくても、怒ったり焦ったりせず、淡々と食事の時間を終わりにしましょう。
単純な接触を繰り返す
全く食べない食材でも、諦めずに食卓に出し続けてみてください。無理強いせず、ただ並べておくだけです。何度も目にするうちに警戒心が少しずつ和らぎ、ある日突然、自分から手を伸ばすことがあります。
大人が美味しそうに食べる姿を見せる
「これを食べなさい」と指示する代わりに、親御さん自身が「このお野菜、シャキシャキして美味しいね」と楽しそうに食べてみてください。子どもは周囲の大人の真似をしながら学びます。大人が心から食事を楽しむ環境こそが、最高の食育です。
当院では、お子さんの体重に関するお悩みやも日々お受けしています。もし成長曲線が横ばいになっている場合や、極端な偏食で貧血などの症状が疑われる場合は、生活環境だけで解決しようとせず、医学的なサポートが必要になることもあります。
私たち小児科専門医は、病気を治すだけでなく、ご家族の育児のサポーターでもあります。インターネット上には様々な情報が溢れ、何が正しいのか判断に迷うこともあるかと思います。私たちは常に医学的根拠に基づき、正確な情報で皆さまをサポートできるよう努めています。気になることがあれば、乳幼児健診などの機会に遠慮なくご相談ください。
子どもの食事は毎日のことですから、思い通りにいかないのは当然です。「食べなさい」と言わなくてもいい、むしろ言わないほうが食べてくれるかもしれない。この事実が、毎日頑張る親御さんの肩の荷を少しでも軽くできれば嬉しく思います。
明日からの食卓が、ご家族にとって少しでも穏やかな時間になりますように。
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当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)
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