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【発達心理学から学ぶ子育てのヒント①】こどもの未来を変える正しいほめ方とは?1〜3歳向けの「プロセスほめ」|武蔵小杉 もりのこ子育て通信

こんにちは。
武蔵小杉の小児科・皮膚科「森のこどもクリニック(通称:もりのこ)」院長のくま先生(小児科専門医・医学博士)です。

実は先日の外来で、2歳のお子さんを連れたお母さんからこんな質問を受けました。

「先生、すぐ諦めない子に育ってほしいんですが、家でどんなふうにほめたらいいんでしょうか?」

子育てをしていると、「ほめて伸ばす」のが良いとよく耳にすると思います。でも、具体的に「どうほめるか」まで教わる機会はなかなかありません。日常の何気ない言葉がけが、数年後のこどもの性格やモチベーションに影響するとしたら、少し気になりませんか。

今回は、この疑問にぴったりな発達心理学の研究論文をご紹介します。シカゴ大学などの研究チームが発表した「1〜3歳児への親のほめ方が、5年後のこどものモチベーションの土台を予測する」という非常に興味深い研究です。

<忙しい方のためのまとめ>

  • 「才能や結果」より「プロセス(努力・工夫)」をほめるのがカギ
    「賢いね」「上手だね」だけでなく、「最後まで頑張ったね」「工夫して塗れたね」と過程をほめることで、数年後の諦めない心とやる気の土台が育ちます。

  • 特に女の子への声かけは「プロセス」を意識的に
    研究結果によると、日常会話の中で女の子に対するプロセスへのほめ言葉が少ない傾向があります。将来のモチベーション維持のためにも、意識的な声かけがおすすめです。

  • 完璧を目指さず、心に余裕がある時の実践でOK
    毎日の忙しい育児の中で、常に理想的な言葉がけをする必要はありません。医学的・心理学的な知識として持っておき、できるタイミングで日々のコミュニケーションに取り入れてみてください。

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「能力」をほめるか、「努力」をほめるか

私たちがこどもをほめるとき、その言葉は大きく分けていくつかの種類に分類できます。この論文では、過去の研究に基づき、親のほめ言葉を次の3つに分類しています。

  1. プロセスへのほめ言葉(Process praise)
    こどもの「努力」「やり方(戦略)」「行動」に注目したほめ方です
    。「一生懸命やってるね」「上手に描けたね」「ナイスキャッチ!」などがこれに当たります。

  2. 人へのほめ言葉(Person praise)
    こどもの「生まれつきの才能」や「固定された特徴」に注目したほめ方です
    。「いい子だね」「お兄ちゃんだね」「すごく頭がいいね」といった言葉です。

  3. その他のほめ言葉(Other praise)
    上記に当てはまらない、一般的なポジティブな反応です
    。「きれいな絵だね(結果への評価)」「すごい!」「いいね!」などが含まれます。

以前に行われた別の有名な実験で、小学5年生にパズルを解かせたあとの反応を調べたものがあります。その実験では、「頭がいいね(人へのほめ言葉)」と言われたこどもたちは、その後に難しい問題につまずくと、「自分は頭が悪いからだ」と解釈してしまい、努力をやめたり、成績が下がったりしてしまいました。
一方で、「よく頑張ったね(プロセスへのほめ言葉)」と言われたこどもたちは、難しい問題を出されても「もっと頑張れば解けるかもしれない」と粘り強く取り組み、楽しむ姿勢を見せたのです。

では、小学生よりもずっと幼い、言葉を話し始めたばかりの1〜3歳の時期でも、同じような影響があるのでしょうか。

1〜3歳の日常のやり取りが、7〜8歳の「やる気」につながる

この研究では、シカゴ周辺に住む53組の親子(男の子29人、女の子24人)にご協力をいただき、こどもが14か月、26か月、38か月のときの家庭での様子をビデオで撮影しました。遊んだり、ご飯を食べたり、着替えたりする普段の90分間の生活の中で、親がどんな言葉をかけているかを詳細に分析したのです。

そして5年後。こどもたちが7〜8歳(小学校2〜3年生)になったときに、知能や道徳的な性格についてのアンケートを実施しました。

驚くべき結果が出ました。1〜3歳の間に、親から「プロセスへのほめ言葉(努力や行動へのほめ)」を多く受けていたこどもほど、7〜8歳になったときに「能力は努力次第で伸ばせる」という前向きな考え方をしっかりと身につけていたのです。

この考え方を持っているこどもは、成功したときには「自分が頑張ったからだ」と考え、失敗したときには「どうすれば次はうまくいくか」という戦略を練ることができます。また、難しい課題にも積極的に挑戦する傾向があります。

一方で、「人へのほめ言葉(いい子だね、賢いねなど)」を多く受けていたからといって、5年後に「能力は生まれつき決まっている(実体的理論)」という固定的な考え方になりやすいという明らかな関連は、この研究では見られませんでした。これは少し安心する結果ですね。研究者たちは、幼児に対する「いい子だね」という言葉は、小学生に対する「頭がいいね」という評価とは少しニュアンスが違うからかもしれない、と推測しています。

実際のところ、親はどれくらい「努力」をほめている?

研究のデータを見ると、親がこどもに話しかける言葉全体のうち、ほめ言葉が占める割合は平均してわずか3.0%でした。さらに、そのほめ言葉の中身を分類すると、「プロセス(努力)」をほめたのが18.0%、「人(才能や特徴)」をほめたのが16.0%、残りの66.0%は「すごい!」「いいね!」といったその他のほめ言葉でした。

ここで、一つとても興味深いデータがあります。こどもの性別による違いです。 親がこどもをほめる回数や割合自体は、男の子でも女の子でも変わりませんでした。しかし、「プロセスへのほめ言葉」を受けた割合を見ると、男の子は全ほめ言葉の24.4%だったのに対し、女の子はわずか10.3%しかなかったのです。

なぜ男の子の方が努力や行動を具体的にほめられることが多いのか、はっきりとした理由はわかっていません。男の子が好む遊びの性質が関係しているのかもしれません。しかしこれまでの心理学の研究では、女の子の方が「失敗したのは自分に能力がないからだ」と諦めてしまう傾向が強いことが指摘されており、とくに算数や理科の分野でその傾向が顕著だとされています。 もしかすると、幼少期に「プロセスをほめられる経験」が女の子の方が少ないことが、将来の諦めやすさに影響している可能性も考えられます。女の子を育てている親御さんは、少し意識して「頑張ったね」「工夫したね」という言葉を増やしてみても良いかもしれません。

このイラストは、「武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科」が発行する「武蔵小杉森のこ子育て通信」の、1-3歳向けの「プロセスほめ」をテーマにしたアイキャッチ画像です。 画面上部には、木目調の看板が描かれ、やわらかい手書き風のフォントで、上段に「武蔵小杉森のこ子育て通信」、下段に「1-3歳向けの『プロセスほめ』とは」のタイトルが配置されています。 中央には、温かみのあるプレイルームで、保育士のようなエプロン姿の女性と、幼児の男の子が一緒に虹色の円形パズルを完成させようとしている様子が描かれています。男の子は集中した表情でパズルを見ており、女性は優しく見守りながら手を添えています。 幼児の頭上には吹き出しがあり、汗をかいて困ったような表情の男の子の顔、完成したジグソーパズルのピース、赤いハートが描かれており、努力、達成感、そして愛情のプロセスを表現しています。 背景の棚には、クマ、タヌキ、ウサギ、ネコなどの、当院のロゴにも通じる森の動物たちのぬいぐるみが並び、壁にも動物たちの飾りが施されています。床のカラフルなマットの上には、ブロック、クレヨン、開いた絵本、お絵かき帳、パレットと絵の具、バラのパズルピースなどが置かれ、幼児の豊かな遊びと学びの環境が表現されています。窓からは、木々の景色が見え、自然の優しさを感じさせます。 左下には、緑の木を背景にした動物たちのイラスト、そして日本語で「武蔵小杉 森のこどもクリニック 小児科・皮膚科」と書かれたロゴマークが配置されています。 全体として、安心して子育てができる環境と、子供の成長を優しくサポートするクリニックの姿勢を、温かく親しみやすいイラストで伝えています。

明日からの子育てにどう活かすか

では、具体的に明日からどうやってこどもに声をかければよいのでしょうか。

ポイントは「才能や結果だけ」ではなく、「過程(プロセス)を言葉にしてあげること」です。

×「天才だね!」「賢いね!」(生まれつきの才能をほめる)
○「最後まで諦めずに考えたね!」(努力や姿勢をほめる)

×「上手な絵だね!」(結果だけをほめる)
○「いろんな色を使って、丁寧に塗れたね!」(工夫や戦略をほめる)

×「いい子だね!」(性格を固定する)
○「おもちゃを上手にお片付けできたね!」(具体的な行動をほめる)

もちろん、「すごいね!」「いい子だね!」と言ってはいけないわけではありません。愛情を伝える大切なコミュニケーションです。ただ、それにプラスして、「どんなふうに頑張ったのか」「どんな行動が良かったのか」を具体的に言葉にしてあげることで、こどもは「頑張ることって素晴らしいんだ」と学び、成長の土台を築いていきます。

子育て中、毎日の忙しさの中で常に完璧な言葉がけをするのは不可能です。私自身も、診察室では偉そうなことを言いつつ、家に帰れば「すごいねー」と適当に相槌を打ってしまうこともあります。大事なのは、こうした医学的・心理学的な根拠を「知識」として持っておき、少し心と時間に余裕があるときに実践してみることです。

当院では、風邪や湿疹などの治療だけでなく、こどもの心と身体の健やかな成長を、確かなデータと共に見守っていきたいと考えています。毎日のちょっとした会話のヒントになれば幸いです。もし気になることがあれば、健診や診察の際にでも気軽にお尋ねください。

<参考>
Elizabeth A. Gunderson, et al. Parent Praise to 1-3 Year-Olds Predicts Children’s Motivational Frameworks 5 Years Later. Child Dev. 2013 September ; 84(5): 1526–1541.

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院長 大熊 喜彰 (おおくま よしあき)
記事監修
院長 大熊 喜彰
(おおくま よしあき)

日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務

医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)

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