お子さんが「のどが痛い!」にはよく遭遇します。
食事が進まなかったり、機嫌が悪くなったりするので親御さんは心配かと思います。どうしてのどが痛くなるのでしょうか?そして、どんな病気が隠れているのでしょうか?
今回は、子どもののどの痛み、すなわち咽頭痛(いんとうつう)について、年齢別の特徴や考えられる病気、そしてご家庭でのケアのポイントまで、小児科医の視点から詳しくお話しします。

そもそも、子どもの「のどの痛み」ってどんな時に疑うの?
子どもは大人と違って、言葉でうまく「のどが痛い」と伝えられないことがあります。特に小さなお子さんの場合、次のような様子が見られたら、のどの痛みを疑ってみてください。
- 飲み込みたがらない、よだれが多い
食べ物や飲み物を口にしても、飲み込まずに吐き出したり、よだれが急に増えたりします。
- 食欲がない、機嫌が悪い
痛みで食事が進まず、ぐずったり、不機嫌になったりします。
- 熱がある、咳が出る
発熱や咳など、他の風邪症状と一緒に出ることが多いです。
- 首のリンパ節が腫れている
あごの下や首の側面を触ってみると、グリグリとしたしこりのように腫れていることがあります。
【年齢別】考えられる原因と病気
子どもののどの痛みは、年齢によって原因となる病気が少しずつ違います。それぞれの年齢でよく見られる病気について見ていきましょう。
1. 新生児・乳児(0歳〜1歳)
この時期の子どもは、自分で症状を訴えることができません。熱や食欲不振、いつもと違う泣き方など、全身の症状から判断する必要があります。
考えられる病気
- ウイルス性咽頭炎(いわゆる風邪)
特徴
発熱や鼻水、咳など、風邪の症状として軽い咽頭痛を伴うことがあります。
ポイント
多くの場合、発熱やのどの痛みは数日で自然に回復します。水分補給をしっかり行い、様子を見ましょう。咳や鼻水は2-3週間続くこともざらです。
- ヘルペス性歯肉口内炎(しにくこうないえん)
特徴
口の中や舌、歯ぐきにたくさんの水ぶくれや口内炎ができます。激しい痛みを伴うため、よだれがダラダラと増え、全く食事や水分を摂れなくなることもあります。発熱も伴います。
ポイント
脱水にならないよう、こまめな水分補給が重要です。冷たい飲み物やゼリー、アイスクリームなど、刺激の少ないものを少しずつ与えましょう。
2. 幼児(1歳〜5歳)
言葉を少しずつ話せるようになり、体の不調を訴え始める時期です。
考えられる病気
- 手足口病(てあしくちびょう)
特徴
手、足、口の中に小さな水ぶくれや発疹ができます。口の中の痛みで食事が摂れなくなりがちです。
ポイント
接触や飛沫で感染が広がりやすいので、手洗いを徹底しましょう。食事は刺激の少ないものを。
- ヘルパンギーナ
特徴
38℃以上の高熱が急に出ます。のどの奥(軟口蓋やのどちんこの周り)に小さな水ぶくれや赤いブツブツができます。のどの痛みが強く、熱が下がっても食欲不振が続くことがあります。
ポイント
手足口病と同様に、のどが痛くて水分が摂りにくくなります。脱水に注意し、経口補水液などを利用するのも良いでしょう。
- ウイルス性咽頭炎(いわゆる風邪)
特徴
鼻水や咳、発熱などの症状に加えて、のどが赤く腫れて痛みを伴います。
ポイント
多くは数日で自然に治ります。熱や痛みに対しては解熱鎮痛剤を使うこともあります。
- 溶連菌感染症(ようれんきんかんせんしょう)
特徴
突然の高熱、のどの強い痛み、舌がイチゴのようにブツブツと赤くなる(イチゴ舌)、全身の発疹(特に首の周りや脇の下)などが特徴です。のどが真っ赤になり、白い膿のようなものがつくこともあります。
ポイント
溶連菌は細菌なので、抗生剤での治療が必要です。合併症(リウマチ熱や急性腎炎)を防ぐためにも、医師の指示通りに最後まで薬を飲み切ることが非常に大切です。
- 伝染性単核球症(でんせんせいたんかくきゅうしょう)
特徴
EBウイルスというウイルスが原因で、高熱が1週間以上続く、扁桃腺がひどく腫れる、首や全身のリンパ節が腫れる、などの症状が出ます。特に幼児では症状が軽かったり、風邪と見分けがつかないこともあります。
ポイント
診断には血液検査が必要です。ひどく腫れた扁桃腺のために呼吸が苦しくなることもあり、注意が必要です。
3. 学童(小学生〜)
自分の症状を詳しく伝えられるようになります。
考えられる病気
- 溶連菌感染症
特徴
幼児期と同様に、高熱とのどの痛みが代表的な症状です。
ポイント
幼稚園や小学校で集団感染しやすい病気です。症状が落ち着いても、医師の指示通りに服薬を続けることが大切です。
- PFAPA症候群
特徴
周期性発熱、口内炎、咽頭炎、リンパ節炎(Period Fever, Aphthous stomatitis, Pharyngitis, Adenitis)という4つの症状を繰り返す、原因不明の病気です。通常、3〜6週間ごとに急な高熱とのどの痛みが現れ、数日で自然に解熱します。
ポイント
特定の治療法はなく、発熱時に炎症を抑える薬を使うことがあります。
- 伝染性単核球症
特徴
幼児期よりも典型的な症状が出やすい傾向にあります。高熱、扁桃腺の強い腫れ、全身のだるさなどが特徴です。
ポイント
肝臓や脾臓が腫れることがあるため、安静が重要です。特に脾臓が破裂する危険があるため、激しい運動は避ける必要があります。
- 菊池病(きくちびょう)
特徴
正式には「組織球性壊死性リンパ節炎」といい、首のリンパ節が複数、グリグリと触れるほどに腫れる病気です。発熱やのどの痛みを伴い、比較的若年女性に多いとされていますが、小児にも見られます。
ポイント
多くの場合は数週間から数ヶ月で自然に治ることが多いです。しかし、他の病気と区別するために、リンパ節の生検(一部を採取して調べること)が必要になることもあります。
- 咽後膿瘍(いんごのうよう)
特徴
のどの奥に細菌が感染し、膿がたまる病気です。激しいのどの痛みと高熱、そして首を後ろに反らすと痛む、首を動かせない、などの症状が出ます。呼吸が苦しくなったり、声が変わったりすることもあります。
ポイント
重篤な病気で、すぐに病院での治療が必要です。この症状が見られた場合は、迷わず救急外来を受診しましょう。
病院を受診するタイミングは?
- 水分が全く摂れない・・・脱水症の危険があるため、すぐに受診してください。
- 呼吸が苦しそう・・・呼吸が速い、肩で呼吸している、ゼーゼーと音がする、などの場合は緊急性の高い状態です。すぐに医療機関を受診してください。
- ぐったりしている、意識がはっきりしない
- 激しいのどの痛みに加えて、高熱が続いている
- 首のリンパ節がひどく腫れている
「ちょっとおかしいな」と感じたら、いつでもご相談ください。
ご家庭でのケアと予防のポイント
1. 水分補給が何より大切
のどが痛くて飲みにくいときは、冷たい飲み物、ゼリー、アイスクリームなど、飲み込みやすいものを少しずつあげましょう。経口補水液もおすすめです。
2. 刺激物を避ける
熱すぎるもの、辛いもの、しょっぱいものなど、のどに刺激を与える食事は避け、やわらかく、なめらかな食事を心がけましょう。
3. うがい・手洗い
風邪や溶連菌、ヘルパンギーナなど、多くの病原体は飛沫や接触によって感染します。日頃から手洗いやうがいの習慣を身につけることが重要です。
4. 部屋の湿度を保つ
空気が乾燥しているとのどの粘膜が荒れ、痛みが強くなることがあります。加湿器などを使い、適切な湿度を保ちましょう。
まとめ
子どもののどの痛みは、単なる風邪の症状であることも多いですが、中には注意が必要な病気が隠れていることもあります。
大切なのは、お子さんの様子をよく観察すること。普段と違うな、少しおかしいな、と感じたら、ぜひお気軽に小児科を受診してください。
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川崎市中原区
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武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科
院長 大熊 喜彰
※心臓外来・アレルギー外来・便秘外来・夜尿外来・低身長外来・頭痛外来・起立性調節障害外来・トラベルワクチン外来など、「じっくり専門外来」も開設しています。お気軽にご相談ください。