ブログ
Blog
Blog
「ぜんそくです。」
そう言われた時、多くの親御さんは不安でいっぱいになることと思います。「この子はどうなってしまうんだろう」「日常生活で気を付けることは?」「治るの?」たくさんの疑問が頭をよぎるかもしれません。
でも、安心してください。ぜんそくは、お子さんの成長とともに上手に付き合っていくことができる病気です。適切な治療と日々のケアで、お子さんは元気いっぱいの毎日を送ることができます。
このブログでは、お子さんのぜんそくに直面している親御さんのために、ぜんそくの基本的なことから、日々のケア、そしてもしもの時の対処法まで、分かりやすく丁寧にお話ししていきます。
ぜんそくは、空気の通り道である気道が慢性的に炎症を起こし、過敏になっている状態です。例えるなら、健康な人の気道が広々としたトンネルだとすると、ぜんそくのお子さんの気道は、ちょっとした刺激でもすぐに狭くなってしまう、デリケートなトンネルのようなものです。ここで重要なのは、ヒューヒューした時だけではなく、日ごろから気道に炎症があるという事実です。これは、今後、コントロールのお薬(長期管理薬、コントローラーともいう)を毎日使用することに繋がってきます。
この炎症のため、様々な刺激(ハウスダスト、花粉、運動、風邪など)に反応して、気道がさらに狭くなり、呼吸が苦しくなったり、咳が出たり、ゼーゼー・ヒューヒューといった音(喘鳴)が聞こえたりする症状が現れます。
ぜんそくは、多くの場合、アレルギー体質が関わっています。ハウスダスト、ダニ、花粉、ペットのフケなどのアレルゲン(アレルギーの原因物質)が体の中に入ると、免疫システムが過剰に反応し、気道の炎症を引き起こしてしまうのです。また、気圧・天候の変化も影響することが知られています。
お子さんのぜんそくの多くは、アレルギーが原因で起こるアトピー型ぜんそくです。その他にも、風邪をひいた時だけ咳や喘鳴が出る非アトピー型ぜんそくや、大人になってから発症するぜんそくなど、いくつかのタイプがあります。
ぜんそくは、遺伝的な要因が関係することがあります。ご両親のどちらか、またはご両親ともにアレルギー体質やぜんそく、花粉症、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の既往がある場合、お子さんもぜんそくになりやすい傾向があります。しかし、必ずしも遺伝するわけではありませんし、遺伝的な要因だけで発症するわけでもありません。環境要因も大きく関わっています。
ぜんそくの症状は、お子さんによって様々です。典型的な症状は以下の通りです。
これらの症状は、風邪の時にも見られることがあり、ぜんそくと診断するのは難しい場合があります。特に乳幼児の場合、風邪をひくたびに喘鳴が聞こえることがありますが、これは「ぜんそく様気管支炎」と呼ばれることもあります。
気になる症状がある場合は、自己判断せずに小児科を受診し、正確な診断を受けることが大切です。
乳幼児は検査を行うことが出来ないため問診と身体診察が最も重要になります。必要に応じて、以下のような検査が行われることがあります。
ぜんそくの治療は、大きく分けて「コントローラー(長期管理薬)」と「リリーバー(発作時治療)」の2つの柱で行われます。
コントローラーは、ぜんそくの根本原因である気道の炎症を抑え、発作が起こりにくい状態を維持するための薬です。毎日、症状がなくても継続して使用することが重要です。これにより、気道の過敏性を改善し、発作の回数や重症度を減らすことができます。
主なコントローラーとしては、以下のものがあります。
リリーバーは、ぜんそく発作が起きた時に、症状を速やかに和らげるための薬です。気管支を広げ、呼吸を楽にする作用があります。発作が起きた時だけ使用し、予防的に毎日使うものではありません。
上記のコントローラーを継続しているにもかかわらず発作が起きた際に使用すると考えてください。
主なリリーバーとしては、以下のものがあります。
ぜんそく治療の目標は、お子さんが「発作を起こさずに、ぜんそくが無い子と同じように長期的に日常生活を送れること」です。具体的には、
を目指します。
ぜんそくの治療薬を使うだけでなく、日々の生活環境を整えることも非常に重要です。アレルゲンからお子さんを守り、発作を予防するための工夫をしましょう。
ダニやハウスダストは、ぜんそくの主要なアレルゲンです。
カビもぜんそくの原因となることがあります。
ペットの毛やフケは、強力なアレルゲンとなることがあります。
ぜんそく発作が起きてしまった時のために、事前に医師と相談して発作時の対応を考えておくことが非常に重要です。
A1. お子さんのぜんそくは、成長とともに気道が発達し、過敏性が改善することで症状が出なくなる、いわゆる「寛解(かんかい)」の状態になることが多いです。特に、乳幼児期に発症したぜんそくの約半数は、小学校入学までに症状が出なくなる傾向にあります。しかし、思春期以降に再発するケースもあるため、自己判断で治療を中断せず、医師と相談しながら経過を見ていくことが大切です。
A2. ぜんそく治療の中心となる吸入ステロイド薬は、気道に直接作用するため、全身への影響は非常に少ないとされています。内服薬のステロイドとは異なり、長期的に使用しても身長の伸びに影響したり、骨が弱くなったりするなどの重い副作用はほとんど心配ありません。
大切なのは、発作を繰り返すことによる気道へのダメージを防ぐことです。適切な薬を継続して使うことで、気道の炎症を抑え、気道の形が変わってしまう(リモデリング)ことを防ぎ、将来的にぜんそくをより良くコントロールできる状態を目指します。副作用の心配よりも、薬を使わないことで発作が悪化し、お子さんに辛い思いをさせてしまうリスクの方が大きいとご理解ください。気になる点があれば、いつでも医師にご相談ください。
A3. はい、むしろ適度な運動はぜんそくのお子さんにとっても非常に大切です。ぜんそくを恐れて運動を制限しすぎると、体力低下や肥満につながり、かえってぜんそくのコントロールが悪くなることがあります。
ただし、運動誘発ぜんそくといって、運動中に発作が誘発されるお子さんもいます。そのような場合は、運動前にリリーバーを吸入する、ウォーミングアップをしっかり行う、急に激しい運動をしないなどの対策で予防できます。どのような運動なら大丈夫か、どのくらいの負荷なら許容範囲か、ぜひ主治医と相談して、お子さんに合った運動を見つけてあげてください。
A4. はい、関係があります。ぜんそくを持つお子さんは、食物アレルギーや花粉症、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎・結膜炎など、他のアレルギー疾患を合併していることが少なくありません。これらをまとめて「アレルギーマーチ」と呼びます。
乳幼児期にアトピー性皮膚炎や食物アレルギーを発症し、成長とともにぜんそくやアレルギー性鼻炎を発症していくことがよく見られます。一つのアレルギー疾患の治療がおろそかになると、他のアレルギー疾患も悪化しやすくなることがあります。当院では、食物アレルギーについても専門外来を設けておりますので、お気軽にご相談ください。
A5. そのお気持ち、とてもよく分かります。しかし、ぜんそくは適切な治療と管理で、普通の生活を送ることができる病気です。過度に制限することで、お子さんの成長や社会性を妨げてしまうこともあります。
旅行や遠出をする際は、事前にかかりつけ医に相談し、必要な薬を持参する、現地の医療機関の情報を調べておくなど、準備をしておけば大丈夫です。当院では、お子さんのぜんそくを乗り越え、ご家族が安心して楽しい毎日を送れるよう、全力でサポートさせていただきます。
ぜんそくは、お子さんだけの病気ではありません。ご家族みんなで病気について理解し、日々のケアをサポートしていくことが、お子さんの健やかな成長にとって何よりも大切です。
当クリニックでは、お子さん一人ひとりの状態に合わせた丁寧な説明と、ご家族に寄り添った診療を心がけています。心配なこと、不安なことがあれば、どんな小さなことでも構いませんので、お気軽にご相談ください。お子さんとご家族が、笑顔で毎日を過ごせるよう、一緒にぜんそくを乗り越えていきましょう。
当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)