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猛威を振るったインフルエンザA型の波が少し落ち着いたかと思えば、おそらく年明けから4月くらいまでに「インフルエンザB型」が流行すると予想しています。
「先生、A型にかかったばかりなのに、またインフルエンザですか?」
「B型ってお腹に来るって本当ですか?」
そんな疑問があるかもしれません。 そこで今回は、知っておきたい「インフルエンザB型」について、日本専門医機構認定小児科専門医の視点から、エビデンスに基づき解説していきます。

Geminiで作画
1. インフルエンザ「B型」って、A型と何が違うの?
まず、敵を知ることから始めましょう。 インフルエンザには大きく分けてA型・B型・C型がありますが、季節性として流行するのはA型とB型です。
A型
変異(ウイルスが姿を変えること)が激しく、世界的な大流行(パンデミック)を起こしやすいタイプ。高熱がドカン!と出ることが多いです。
B型
A型に比べると変異のスピードはゆっくり。人間以外には感染しにくいため、世界的な大流行にはなりにくいですが、数年ごとに流行を繰り返します。
昔は「B型はA型より症状が軽い」なんて言われることもありましたが、現場で診察していると「決してそんなことはない」と痛感します。高熱もしっかり出ますし、全身のだるさも強い。子どもたちにとっては、A型同様に辛い病気であることに変わりはありません。
B型には、A型とは少し違った特徴的な傾向があります。これを知っておくと、「あれ?ただの風邪じゃないかも」と気づくきっかけになります。
「熱が出る前にお腹が痛くなった」「嘔吐や下痢が続いている」 B型では、腹痛・嘔吐・下痢といった消化器系の症状を訴えるお子さんが比較的多いです。胃腸炎かな?と思っていたら、あとから熱が出て検査したらインフルエンザB型だった、というケースは珍しくありません。
これが親御さんを一番不安にさせる特徴かもしれません。 「二峰性発熱(にほうせいはつねつ)」といって、ラクダのコブのように熱のピークが2回くることがあります。
高熱が出る(1〜2日)
一旦、熱が微熱や平熱近くまで下がる(1日程度)
再び高熱が出る
「やっと治ったと思ったのに、また熱が出た!悪化したのでしょうか!?」と駆け込んで来られる親御さんが多いのですが、これはB型の特徴的な経過の一つ。もちろん、肺炎など合併症の可能性も否定はできませんが、B型の場合は「こういう熱の出方もあるんだ」と頭の片隅に置いておくだけで、心の準備ができますよね。
診断はA型と同じく、鼻の奥をこする迅速検査で行います。 発熱してから時間が経っていない(12時間未満など)と、ウイルス量が足りずに「陰性」と出てしまうことがあるのはA型と同じです。
治療薬(抗インフルエンザ薬)も基本的にはA型と同じものを使いますが、お子さんの年齢や「飲める・吸える」に合わせて選びます。
タミフル®(ドライシロップ)
1日2回、5日間飲みます。粉薬なので小さいお子さんでも飲みやすいですが、苦味を感じる子もいます(チョコアイスなどに混ぜると飲みやすいですよ!)。
イナビル®・リレンザ®(吸入薬)
容器から直接粉を吸い込みます。1回(または数回)で治療が完了するのがメリットですが、**「思いっきり吸い込む」**という動作が必要なので、小学生以上でないと難しいことがあります。
ゾフルーザ®(錠剤・散剤)
1回飲むだけで治療が完結します。体重制限や粒の大きさの問題はありますが、条件が合えば非常に便利です。
「どれが一番効きますか?」とよく聞かれますが、効果に大きな差はありません。「確実にお子さんが使用できる薬」を選ぶことが、一番の治療の近道です。
基本は「水分補給」と「安静」です。 B型はお腹の症状が出やすいので、冷たい飲み物よりも常温のOS-1(経口補水液)や、刺激の少ない麦茶、スープなどを少しずつ頻回にあげてください。
インフルエンザ脳症などの重い合併症は、A型だけでなくB型でも起こり得ます。以下のようなサインがあったら、迷わず救急やクリニックに連絡してください。
呼びかけても反応が鈍い、視線が合わない
意味不明なことを言う(幻覚・異常言動)
けいれん(ひきつけ)を起こした
水分が全く取れず、半日以上おしっこが出ていない
呼吸が苦しそう、顔色が悪い
出席停止期間の基準は、学校保健安全法で決まっています。 ここが少しややこしいので整理します。
【出席停止期間のルール】
「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」
この「かつ」がポイントです。両方の条件を満たす必要があります。
発症日(発熱した日)を0日目とカウントします。
つまり、発症日を含めて最短でも6日間はお休みが必要です。
解熱日(熱が下がった日)を0日目とカウントします。
小学生以上
熱が下がった日の翌日から2日間様子を見て、問題なければ3日目から登校可。
幼稚園・保育園児(幼児)
熱が下がった日の翌日から3日間様子を見て、問題なければ4日目から登園可。
B型は熱が長引きやすく、また二峰性発熱で熱がぶり返すこともあるため、A型よりもお休みが長引く傾向があります。「まだ行けないの?」と焦る気持ち、痛いほど分かります。でも、無理をして登園してぶり返したり、お友達にうつしてしまったりしては大変です。ここは「充電期間」と捉えて、しっかり治しましょう。
インフルエンザB型は、春先までダラダラと流行することがあります。
「もう3月だから大丈夫」と油断せず、手洗い・うがい、そして十分な睡眠と栄養を心がけてください。
私たち「武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科」は、ご家族の不安に寄り添うことを大切にしています。お子さんの様子で気になることがあれば、いつでも頼ってください。
【SNSでも情報発信中!】
当院のSNSでは、小児科・皮膚科に関する役立つ情報や、季節ごとの病気の注意点などを発信しています。ぜひフォローしてください!
Instagram: 武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科
当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)
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