ブログ
Blog
Blog
急な発熱。
「お熱が出ちゃったね、早く良くなるといいね」
と看病していた矢先、突然お子さんの意識がなくなり、白目をむいて、ガクガクと震えだす……。
こんな光景を目の当たりにしたら、冷静でいられる親御さんなんていません。「このまま死んでしまうんじゃないか」「脳に障害が残るんじゃないか」と、心底怖い思いをされることでしょう。
ここで、一番最初にお伝えしたい医学的な事実があります。
「熱性けいれんの多くは数分でおさまり、後遺症を残すことは極めてまれです。命に関わることもほとんどありません。」
この言葉を、まずは心の片隅に置いてください。
熱性けいれんは、主に生後6ヶ月から5歳くらいまでのお子さんが、急な発熱(多くは38度以上)に伴って起こすけいれん発作のことです。 日本人を含むアジア人は遺伝的に熱性けいれんを起こしやすいと言われており、およそ10人に1人、つまりクラスに2〜3人は経験するほど、実は「よくある」病気なのです。
こどもの脳はまだ未熟です。そのため、熱という急激な変化に対して脳の神経細胞が興奮しすぎてしまい、ショートしたような状態になる。これが熱性けいれんのイメージです。
いざけいれんが起きた時、何をしてあげればいいのか。 インターネットで検索する余裕なんてないはずです。だからこそ、今ここで、この「3つの約束」だけは覚えて帰ってください。
昔のドラマや言い伝えで、「舌を噛まないように割り箸やタオルを噛ませる」という話を聞いたことがありませんか?
これは絶対にダメです。
現在の医学的エビデンスにおいて、けいれん中に舌を噛み切って命を落とすことはまずありません。 むしろ、口に物を押し込むことで、歯が折れて喉に詰めたり、吐いたものが気管に詰まって窒息したり、口の中を怪我させてしまうリスクの方が圧倒的に高いです。
けいれん中は、泡を吹いたり、食べたものを吐いてしまったりすることがあります。 仰向けのままだと、その吐物が喉に詰まり、窒息や誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を引き起こす可能性があります。
洋服のボタンを外して体を楽にし、体ごと、あるいは顔だけでも横向きにしてあげてください。これだけで、気道が確保され、安全性がぐっと高まります。
「そんな余裕あるわけない!」とお叱りを受けるかもしれません。 もちろん、①と②が最優先です。
ですが、もし可能なら、スマートフォンのカメラでけいれんの様子を動画に撮ってください。 私たち医師にとって、「実際にどのようなけいれんだったか」という情報は、診断の際の宝の山です。
目はどこを向いているか(右?左?上?)
手足の震えは左右対称か?
何分続いたか?
これらを言葉で説明するのは難しいものですが、動画があれば一目瞭然です。正確な診断と適切な治療方針の決定に、動画は本当に大きな力を発揮します。
「けいれんは数分で止まる」「後遺症はまれ」とお話ししましたが、もちろん「急いで病院へ行かなければならないケース」もあります。 ご自宅で様子を見ていいのか、救急車を呼ぶべきなのか。その判断基準は以下の4点です。
初めてけいれんを起こした場合、それが本当に「単純な熱性けいれん」なのか、それとも「髄膜炎(ずいまくえん)」や「脳症」など、他の重篤な病気が隠れているのかを医師が判断する必要があります。 初めての場合は、迷わず医療機関を受診してください。緊急性が判断できない場合は救急車でも構いません。
多くの熱性けいれんは5分以内、もっと言えば2〜3分で自然に止まります。 もし5分以上続く場合は、「けいれん重積(じゅうせき)」という状態になりかけている可能性があり、お薬を使ってけいれんを止める必要があります。 時計を見るのは怖いかもしれませんが、時間の経過はとても重要です。5分を超えたら迷わず119番してください。
「さっき止まったのに、またけいれんし始めた」。 このように、短時間(例えば24時間以内)に2回以上けいれんを繰り返す場合は、より詳しい検査が必要になることがあります。
けいれんが終わった後、お子さんは疲れて眠ってしまうことがよくあります。これは通常の反応ですので、過度に心配する必要はありません。 しかし、「揺すっても全く反応がない」「視線が合わない」「手足の動きがおかしい(麻痺しているように見える)」といった状態が続く場合は、脳に何らかの影響が出ている可能性があります。これも緊急事態です。
「またあんな怖い思いをするのは嫌です。予防する方法はないのですか?」
診察室で、そんな切実な声をよく耳にします。
実は、熱性けいれんを繰り返しやすいお子さんや、以前に長く続くけいれんを起こしたことがあるお子さんには、「ダイアップ(一般名:ジアゼパム)」というけいれん予防のための坐薬を処方することがあります。
これは、いわば「脳の興奮を鎮めるお薬」です。 ただ、すべてのお子さんに必要なわけではありませんし、使い方には少しコツがいります。ここでしっかり確認しておきましょう。
基本的に、熱性けいれんを一度起こしただけでは使用しません。 日本小児神経学会のガイドラインに基づき、以下のような場合に医師の判断で使用を検討します。
15分以上続く長いけいれんを起こしたことがある
24時間以内に2回以上繰り返したことがある
これまでに2回〜3回以上、けいれん発作を繰り返している
「うちの子は必要なのかな?」と迷ったら、ぜひご相談ください。
ダイアップは「熱の上がりはじめ」に使うのが最も効果的です。処方された際は、以下のステップでお使いください。
【1回目】37.5℃を超えたらすぐに
「あ、熱っぽいな」と思って測り、37.5℃(医師によっては38.0℃の指示の場合もあります)を超えていたら、まず1個入れます。このタイミングが遅れないことが重要です。
【2回目】8時間後にまだ熱があれば
1回目を入れてから8時間後に熱を測り、まだ38.0℃以上の熱がある場合は、もう1個入れます。
※なぜ8時間?:お薬の血中濃度(体の中の薬の量)が下がってくるタイミングで追加し、有効な濃度をキープするためです。
原則は「1回の発熱エピソードにつき2個まで」
通常、2回使えば24時間ほど効果が持続します。熱性けいれんは発熱から24時間以内に起きることがほとんどなので、3個目を入れることは稀です。
ダイアップを使うと、お子さんが「とろんとして眠くなる」「歩くとふらつく」ことがあります。 ふらついて転んで頭をぶつけたりしないよう、階段の上り下りやトイレの際は目を離さないようにしてあげてくださいね。
意識がおかしいと思ったら「脳症」などの可能性もあるので、病院を受診してください。
ダイアップはあくまでけいれんの予防薬ですので、熱が下がるわけでも咳や鼻水が止まるわけでもありません。そもそもの発熱に対する診察や、必要であれば検査・処方が必要になりますので、ダイアップを使用したらかかりつけを受診しましょう。その際に、ダイアップを使用したことは必ず医師に伝えて下さい。
熱性けいれんには、「単純型」と「複雑型」があり、それぞれで対応や再発予防(ダイアップ座薬の使用など)の方針が異なります。 また、てんかんとの鑑別が必要になることもあります。
ご自宅でパパ・ママができることは、「慌てず、横に向け、何も噛ませず、時間を計る」。これだけです。

もし発作が起きてしまったら、後日でも構いませんので、「武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科」へいらしてください。 わかりやすく説明いたします。
【SNSでも情報発信中!】
当院のSNSでは、小児科・皮膚科に関する役立つ情報や、季節ごとの病気の注意点などを発信しています。ぜひフォローしてください!
Instagram: 武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科
当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)
© Morino Kodomo Clinic
