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2025年6月、北海道・倶知安町で20代男性が「ダニ媒介性脳炎(TBE)」に感染し、重い症状に陥ったというニュースが報じられました(HTBニュース:北海道内で2例目の感染確認)。この病気、実は名前こそあまり知られていませんが、命に関わる可能性もある感染症です。
特に、お子さんが自然の中で遊ぶ機会が多くなるこれからの季節。親御さんにとっても「知らなかった」では済まされない重要な話題となっています。
ダニ媒介性脳炎(TBE)は、主に野山に生息するマダニが媒介するウイルス感染症です。感染すると、発熱や頭痛から始まり、重い場合は意識障害やけいれんなどの脳炎症状を引き起こします。
日本ではまだ発症例は8例と少ないものの、実はすべて北海道で報告されています。ヨーロッパやロシアなど海外ではもっと多くの症例が報告されており、「森林の多い地域では警戒すべき病気」とされています。
子どもは外遊びが大好き。森林公園やキャンプ場、川辺など、自然の中での体験は成長にとってかけがえのない時間です。でも一方で、草むらや森の中にはマダニが潜んでいることが多いのです。
例えば──
「キャンプに行って帰ってきたら足に黒い虫がくっついていた」
「草むらに入った後、赤く腫れたところがあった」
そんなとき、それがマダニだったら注意が必要です。マダニは皮膚にしっかり噛みついて長時間吸血し、場合によってはTBEウイルスを体内に送り込むことがあります。
TBEの予防には、まずダニに咬まれないことが最も大切です。以下のような対策をぜひ意識してください。
肌の露出を減らす(長袖・長ズボン)
足元をカバーする靴と靴下
明るい色の服でダニの発見をしやすく
衣服を脱いで全身をくまなくチェック
お風呂でよく洗い流す
マダニがついていたら無理に引き抜かず、医療機関へ
実は、2024年3月26日、日本でもTBE予防のワクチン「タイコバック®」が承認されました。これまで日本にはTBEに対するワクチンがなかったため、海外渡航者が現地で接種するしかない状況でしたが、現在はは国内でも接種が可能となっています。1歳以上の小児および成人で接種していただけます。もちろん当院で接種していただけます。
現在のところ任意接種となりますが、北海道や登山・アウトドアを楽しむ家族にとっては、有力な予防手段として注目されています。
マダニの生息地域に近づくときは服装に注意!
外遊びのあとは体をよく確認!
気になる症状があればすぐ受診!
今後、ワクチン接種を選択肢に!
子どもたちが安全に、そして自由に自然を楽しむために。
親として、そして医師として、「正しく知って、しっかり備える」ことの大切さを、あらためて感じています。
当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)