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先日、Yahoo!ニュースで報じられた幼児の腸管出血性大腸菌(EHEC)感染による重症化――胸が痛いニュースです。
Yahooニュース「3歳の女の子が腸管出血性大腸菌O157に感染 溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症し入院・治療中 福岡市」
このような食中毒は決して遠い自分の身の回りで起きないような話ではなく、私たちの日常に潜んでいます。このブログでは、「腸管出血性大腸菌」とその合併症である「溶血性尿毒症症候群(HUS)」を、わかりやすく丁寧に解説します。
大腸菌の中には、ごく普通に腸にいる 無害なタイプも多いのですが、中には志賀毒素(ベロ毒素)を生みだす悪い菌があります、それが腸管出血性大腸菌です。
代表的な型は O157 のほか、O26、O111、O145などがあります。これらは、少ない菌量でも感染しやすく、特に小さい子や高齢者では重症化リスクが高いです
潜伏期間は3日~8日程度
無症状〜軽い下痢から…
突然の激しい腹痛と水様便
血便になることも
発熱は軽度(37℃台)が多く、血便が出たらすぐに受診を。
EHECの怖さはここから。溶血性尿毒症症候群(HUS)は以下の3大症状からなる急性疾患です。
溶血性貧血:顔色が悪くなる
血小板低下:出血しやすく
急性腎障害:尿が出にくくなる
血便など症状が出てから4〜10日後に現れることがあり、小児の致死率は1〜5%にもおよびます 。
厚生労働省のQ&Aによると、食材・調理器具・井戸水・動物接触などさまざまな感染経路が報告されています。バーベキューの際は特に注意しましょう。
牛レバー、生肉、生野菜、サラダ、貝割れ大根
加工牛肉(ハンバーグ、結着肉なども)
井戸水や動物からの二次感染も注意
厚生労働省が勧める HACCPを家庭版で、以下の6点を習慣にしましょう!
食品の購入:消費期限を確認、肉汁はもれないよう包装
保存:冷蔵庫は10℃以下、冷凍は−15℃以下、詰め込みすぎず
下ごしらえ:まな板・包丁は肉・野菜で使い分け、流水と石けんでしっかり手洗い
調理:中心部を 75℃で1分以上 加熱
食事中:生肉用と取り分け用は道具を別に
残り物:できるだけ早く食べ、保管容器も清潔に
下痢が急に頻繁になり、血便が出たら即受診
発熱がある、腹痛が強い
尿の量が少ない・顔色が悪い → これはHUSの前兆かも!
受診後は診察を行い、必要であれば輸液治療(点滴)を行います。HUSが疑われる場合、連携している高次医療機関に早めに紹介いたします。入院管理が命を救うカギになります。 早期の治療が、後遺症や重症化を大きく防ぎます。
項目 | 大切なポイント |
---|---|
症状の見逃し防止 | 血便・尿減少・顔色不良は、迷わず受診 |
予防習慣 | 手洗い・加熱・器具の使い分け・保存温度 |
正しい理解 | EHEC→HUSにつながる経路と危険性を知る |
環境にも配慮 | 井戸水や動物との接触も想定する |
この夏も、お子さまとご家族を守る笑顔の時間を守るために、衛生習慣を「ちょっとだけ丁寧に」!
「腸管出血性大腸菌」「EHEC」「HUS」「溶血性尿毒症症候群」「小児」「血便」「食中毒予防」「75℃1分以上」
<参考>
厚生労働省HP「腸管出血性大腸菌Q&A」
当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)