ブログ
Blog
Blog
夏のある日、お母さんがスーパーに立ち寄るため、車内に赤ちゃんを残して買い物へ行きました。エンジンを止めた車の中、外気温は30℃。ほんの10分のつもりが、会計で手間取って15分に。戻ってきた時、赤ちゃんの顔は真っ赤で、ぐったりしていた――。
これは決して珍しい話ではありません。
毎年、車内での熱中症による痛ましい事故が起きています。小児科医として強くお伝えしたいのは、「短時間だから大丈夫」と思わないこと。そして、赤ちゃんや小さなお子さんほど車内熱中症のリスクが高いという事実です。
赤ちゃんや小さなお子さんは、体温調節機能が未熟です。また、体に対する水分量の比率が高く、脱水になりやすいという特徴があります。
さらに、チャイルドシートに座っていると、自分で動いたり体温を逃がしたりすることができません。窓を少し開けていたとしても、直射日光や車内の気密性によって、温度はみるみる上昇します。
実際、気温30℃の環境では、わずか15分で車内温度が40℃を超えることが実験で確認されています。ダッシュボード付近やチャイルドシートの表面は、60℃以上になることもあります。
ChatGPTで作画
小児の熱中症は、大人と違い症状に気づきにくいことがあります。以下のようなサインに注意してください:
顔が赤く、汗をびっしょりかいている
呼吸が早く、ぐったりしている
泣き声に元気がない
嘔吐やけいれんがみられる
これらの症状があれば、すぐに日陰や涼しい場所に移動し、医療機関を受診してください。必要に応じて救急車を呼ぶ判断も重要です。
「ちょっとATMに…」「薬局で処方箋をもらうだけ」など、ほんの数分でも車内に置いていくことは絶対にやめてください。
「降ろす担当」を決めておくことで、置き去り防止につながります。とくに、親が疲れているときや、普段と違うルートの場合は注意が必要です。
車に乗る前に、チャイルドシートが熱くなっていないか触って確認を。遮光カバーや冷感シートを活用するのも効果的です。
車内熱中症の多くは、「うちの子に限って」「このぐらいなら大丈夫」という油断から起きています。ほんの数分の判断が、お子さんの命を左右することもあるのです。
私たち小児科医は、日々の診療を通して、こどもたちの健康と命を守ることの重みを痛感しています。この記事が、ひとりでも多くの親御さんの意識に届き、悲しい事故を防ぐ一助になれば幸いです。
参考URL
当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)