乳児期と思春期の“かくれ貧血”にご用心!鉄欠乏性貧血のお話。 - 中原区、武蔵小杉駅の小児科 - 武蔵小杉森のこどもクリニック小児科・皮膚科のブログ

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乳児期と思春期の“かくれ貧血”にご用心!鉄欠乏性貧血のお話。 - 中原区、武蔵小杉駅の小児科 - 武蔵小杉森のこどもクリニック小児科・皮膚科のブログ

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乳児期と思春期の“かくれ貧血”にご用心!鉄欠乏性貧血のお話。

はじめに

「最近、なんだか元気がない」「顔色がちょっと青白い気がする」
そんなふうに感じること、ありませんか?

それ、もしかしたら鉄欠乏性貧血かもしれません。

鉄欠乏性貧血は、成長の過程にある子どもによく見られる“栄養の偏り”によって起こる体のサインです。特に乳児期後期や思春期は、鉄不足に陥りやすい時期。

今回は、小児科専門医として、子どもに多い鉄欠乏性貧血の特徴と、見逃さないためのポイント、家庭でできる予防や対策について分かりやすくご紹介します。


鉄欠乏性貧血ってなに?

私たちの体には、酸素を運ぶための「赤血球」という細胞があります。その赤血球をつくるのに欠かせない材料が「鉄分」です。鉄が足りなくなると、赤血球がうまく作られず、体の隅々に酸素が届かなくなってしまいます。
これが鉄欠乏性貧血です。

子どもは体の成長スピードが速く、鉄の必要量も多くなります。ところが、食事が偏ったり、消化・吸収がうまくいかなかったりすると、すぐに鉄が不足してしまうのです。


鉄欠乏性貧血が起こりやすい2つの時期と注意点

■ ① 乳児期後期(生後9か月〜1歳半):離乳と牛乳に要注意

生まれた赤ちゃんは、胎内で蓄えた鉄分を持っていますが、それは生後6か月頃までで使い切ってしまいます。その後は、食事から鉄分を補う必要があります。

ところが、離乳食の進み方には個人差があり、食が細かったり、好き嫌いが出てきたりすると、鉄分が不足しがちになります。

さらに注意が必要なのが牛乳の飲みすぎです。牛乳はたんぱく質やカルシウムは豊富ですが、鉄分はほとんど含まれていません。
しかも、牛乳に含まれるカルシウムやカゼイン(たんぱく質)は、鉄の吸収を妨げる働きもあります。

🔸この時期のポイント
・鉄分の多い食材(赤身肉、魚、豆腐、緑黄色野菜(小松菜やホウレンソウ)など)を離乳食に
・牛乳は1歳を超えてから。
・牛乳を1歳以上で飲む場合も、1日400〜500ml以内を目安に
・母乳栄養の赤ちゃんは特に、離乳食の鉄分補給が大切

◆ 乳児期の貧血が引き起こす問題とは?

乳児期は、脳や神経の発達が著しい時期です。この時期に鉄分が不足すると、脳の発達に悪影響を与える可能性が指摘されています。

  • 言葉の発達が遅れる

  • 運動発達(ハイハイや歩行)が遅れる

  • 注意力や集中力が弱くなる

  • 感情が不安定になりやすい(泣きやすい、機嫌が悪い)

一度発達に遅れが出てしまうと、後から鉄分を補っても完全には追いつけないこともあります。だからこそ、この時期の鉄不足は「早期発見・早期対応」がとても重要です。


■ ② 思春期(小学校高学年〜中学生):急成長と月経の影響

思春期は、体も心も大きく変わる時期。骨や筋肉が急速に成長し、血液量も一気に増えます。
そのため、鉄の必要量もぐんと増えるのです。

特に女の子は、初潮を迎えて月経が始まることで、定期的に鉄を失うようになります。
一方、男の子も筋肉の発達が進み、鉄が多く必要になります。

さらに、この時期は食事の偏り(ダイエットや朝食抜きなど)が起こりやすく、貧血につながりやすい要因がそろっているのです。

🔸この時期のポイント
・バランスの取れた食事を意識(特に鉄・ビタミンC・たんぱく質)
・朝食をしっかり食べる
・スポーツをする子はさらに注意(汗や筋損傷で鉄が失われやすい)
・月経の重い女の子は定期的な貧血チェックを

◆ 思春期の貧血が引き起こす問題とは?

思春期の子どもにとって、鉄分不足は心身のパフォーマンスを低下させる大きな要因になります。

  • 学校での集中力が続かない、成績の低下

  • 朝起きづらくなり、遅刻や欠席が増える

  • 倦怠感からやる気が出ない、イライラする

  • スポーツ時に疲れやすく、持久力が落ちる

  • 女の子では月経過多が進行し、悪循環に

特に最近は「起立性調節障害」と合併するケースも多く、貧血によって朝が弱くなる・頭痛が続くなどの訴えが強くなることもあります。


子どもに見られる貧血のサインとは?

子どもの貧血は、大人のように「ふらふらする」「立ちくらみがする」とは限りません。
むしろ、次のような“ささいな変化”として現れることが多いのです。
また、乳児では症状が無い場合も多々あります。

✅ よく見られるサイン

  • 顔色が青白い、または黄色っぽい

  • 元気がない、疲れやすい

  • 食欲がない

  • 集中力が続かない

  • 爪が薄く、反り返ってくる

  • 氷やティッシュなどをなめたがる(異食)

もし複数当てはまる場合は、かくれ貧血が疑われます。小児科で血液検査を受けるとすぐにわかります。


家庭でできる予防と対策

● 鉄を多く含む食品

食材グループ 食材例
赤身の肉・魚 牛レバー、豚レバー、マグロ、カツオ、しらす
大豆製品 納豆、豆腐、高野豆腐、きなこ
緑の野菜 ほうれん草、小松菜、ブロッコリー
卵黄(ゆで卵や炒り卵で)

これらに加え、ビタミンC(いちご、みかん、ピーマンなど)を一緒にとると、鉄の吸収が良くなります。

● 飲み物にも注意!

食事中・食後に緑茶や紅茶を飲むと、タンニンという成分が鉄の吸収を妨げてしまいます。
代わりに麦茶や水が安心です。


病院での対応と治療

<乳児期>
生後10カ月前後で生理的に貧血になることが分かっているので、アメリカでは通常1歳頃に貧血のチェックのための採血を行っています。
ご不安な方は当院で採血を行います。
鉄欠乏性貧血があった場合は、離乳食指導および鉄剤(シロップ)の投与を3か月以上行います。

<思春期>
軽い貧血であれば、まずは食事の見直しだけで改善します。
しかし、鉄がかなり不足している場合は、鉄剤(錠剤)を数か月内服する治療を行うことがあります。

鉄剤を飲み始めると、便が黒くなったり、便秘になることがありますが、これは一時的なもの。医師の指導のもと、無理なく治療を続けていきましょう。


おわりに:子どもの「なんとなく元気がない」に目を向けて

鉄欠乏性貧血は、気づかれにくいけれど大切なサインです。
特に乳児期後期と思春期は、成長に伴う“鉄の需要”が高まり、知らないうちに鉄が不足しがちになります。

「うちの子、なんだか疲れやすい」「顔色が悪いけど、風邪じゃなさそう」
そんなときは、ぜひ“鉄”のことを思い出してみてください。

早めの気づきと適切な対応が、子どもの健康と未来を守ります。

武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科の外観写真の画像
当院の外観写真

 

院長 大熊 喜彰 (おおくま よしあき)
記事監修
院長 大熊 喜彰
(おおくま よしあき)

日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務

医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)

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