インフルエンザワクチン接種時に1番質問されること!そう!それは「入浴してもいいですか?」 - 武蔵小杉駅の小児科 - 武蔵小杉森のこどもクリニック小児科・皮膚科のブログ

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インフルエンザワクチン接種時に1番質問されること!そう!それは「入浴してもいいですか?」 - 武蔵小杉駅の小児科 - 武蔵小杉森のこどもクリニック小児科・皮膚科のブログ

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インフルエンザワクチン接種時に1番質問されること!そう!それは「入浴してもいいですか?」

インフルエンザワクチンのシーズンです!

毎年、この時期になると、クリニックの診察室はワクチン接種に来てくれたお子さんたちの元気な(時には涙の…!)声でいっぱいになります。 そして、接種が無事に終わり、お母さんお父さんに「はい、お疲れ様でした。これで終了です」とお伝えした瞬間。

ほぼ100%の確率で、パッと手が挙がって聞かれる質問があります。

もうお分かりですね?

「先生! 今日、お風呂に入ってもいいですか?」

これ、本当に一番多い質問です!

無理もありません。 なぜなら、今のお父さんお母さんたちがご自身でこどもだった頃(昭和の終わり~平成の初め頃)は、「注射をした日は、お風呂に入ってはいけません!」と、それはもうキッパリと指導されていたはずですから。

「私が子供の頃はダメだったのに、今はいいの?」
「病院によって言うことが違ったりしない?」

そんな疑問と不安が渦巻く、この「ワクチン後のお風呂問題」。 今日は、日本専門医機構認定小児科専門医として、この長年の疑問に、歴史的背景をふまえてお答えします!


 

結論ファースト:インフルエンザワクチン接種当日、入浴は「OK」です!

 

はい、まず結論から申し上げます。

インフルエンザワクチンを接種した日でも、お風呂に入って全く問題ありません! 🙆‍♂️

「え、そうなの!?」と驚かれた方も多いかもしれません。なぜ、私たちの頭の中には「ワクチン=入浴禁止」という公式が、こんなにも強く刷り込まれているのでしょうか?

それには、ちゃんとした「歴史的な理由」があるのです。 少し昔の日本に戻ってみましょう。


 

なぜ?
昔は「お風呂ダメ!」が常識だった歴史的背景

 

お父さんお母さんがこどもだった頃、あるいは、おじいちゃんおばあちゃんが子育てをされていた頃。「注射のあとはお風呂に入らない」、これは絶対のルールでした。その時代、その時代の生活環境に基づいた、こどもたちを守るための「最善の指導」だったのです。

主な理由は、大きく分けて3つありました。

 

理由1:バイキンとの戦い!「衛生環境」の問題

 

これが最大の理由です。

ま昭和30年代、40年代、50年代…日本の「お風呂事情」はどうだったでしょうか? 今のように、すべての家庭に清潔なユニットバスがあり、毎日ボタン一つでピカピカのお湯が張られる…なんていう時代ではありませんでした。

  • 銭湯が主流だった時代
    「お風呂」といえば、ご近所のみんなと入る「銭湯」がまだまだ一般的でした。多くの方が同じお湯を使うわけですから、衛生状態は今とは比べ物になりません。
  • 家庭のお風呂も「追い焚き」文化
    翌日も同じお湯を使うことも珍しくありませんでした。

想像してみてください。 そのお湯の中には、残念ながら雑菌(ブドウ球菌など)が繁殖しやすい環境が整っていました。

もし、その不衛生なお湯が、注射という「小さな傷口」から体内に侵入したら…? そう、注射した場所が化膿(かのう)してしまう危険性があったのです。赤く腫れ上がり、膿(うみ)を持ってしまう状態です。

これを防ぐため、「注射当日は、傷口がしっかり塞がるまでお湯に浸かるのはやめましょう」という指導がなされました。これはインフルエンザワクチンに限らず、すべての注射に共通する「鉄則」だったのです。

 

理由2:どっちのせい?「副反応」との混同を避ける

 

次に、入浴による「体調の変化」と、ワクチンの「副反応」の見分けがつかなくなることを恐れた、という理由があります。

  • 入浴による体調変化
    熱いお風呂に長く浸かると、どうなりますか? こどもは特にのぼせやすく、体力を消耗してグッタリしたり、湯冷めして悪寒が走ったり、体調を崩すことがあります。
  • ワクチンによる副反応
    一方、インフルエンザワクチン接種後は、体の中で免疫が頑張って働こうとするため、人によっては「発熱」「倦怠感(だるさ)」「頭痛」といった副反応が出ることがあります。

さあ、ここで問題です。 もし、ワクチンを接種した日の夜に熱いお風呂に入り、そのあとお子さんがぐったりしてしまった…。 この「ぐったり」は、お風呂で疲れたせいなのか、それともワクチンの副反応なのか、見分けがつきますか?

…難しいですよね。 原因がハッキリしないと、「様子を見ていいのか」「すぐに病院に連れて行くべきか」というご家族の判断も、私たち医師の診断も難しくなってしまいます。

そのため、「ワクチンの影響かどうかを正確に把握するためにも、接種当日は体に余計な負担(=入浴)をかけるのはやめて、安静にしておきましょう」という指導が、非常に合理的だったのです。

 

理由3:腫れちゃうかも?「血行促進」への懸念

 

これは少し医学的な懸念ですが、当時はこうも考えられていました。

お風呂に入ると、体が温まり、全身の血の巡り(血行)が良くなります。 そうすると、注射した部位の血流も当然アップします。

その結果、

  • ワクチンの成分が急激に吸収されて、副反応が強く出てしまうのでは?
  • 血行が良くなることで、注射した場所の「赤み」「腫れ」「かゆみ」といった局所反応が、必要以上にひどくなってしまうのでは?

という懸念がありました。 (ちなみに、この点については、後の研究で「入浴が副反応を明確に悪化させることはない」と分かってくるのですが、当時は「念のため」避ける理由とされていました。)


 

時代は変わった! 今はなぜ「入浴OK」になったのか?

 

昔の「入浴禁止」には、ちゃんとした理由があったことがお分かりいただけたと思います。

では、なぜ今、私たち小児科医は「入浴OKですよ!」と笑顔でお伝えできるようになったのでしょうか? それは、「昔ダメだった理由」が、現代の日本ではほぼすべて解消されたからです。

 

理由1:お風呂が圧倒的に「安全」になった!

 

これが一番の変化です。 皆さんのご家庭のお風呂を想像してください。 ほとんどが清潔な「内風呂」ですよね。シャワーで先に体を洗い、毎日入れ替えるキレイな「一番風呂」に浸かるのが当たり前になりました。

銭湯も衛生管理が徹底されていますし、そもそも日常的に利用する方は減りました。

つまり、注射痕から細菌が侵入して化膿するリスクは、現代の日本の入浴環境において「ほぼゼロ」になったのです。

 

理由2:エビデンス(医学的根拠)

 

医療は日々進歩しています。「昔の常識」は、新しい研究によって「今の非常識」になることが多々あります。 「入浴」問題もその一つ。

「入浴したからといって、発熱や倦怠感(だるさ)などの副反応が増えた」という医学的根拠(エビデンス)はありませんでした。

また、「理由3」で挙げた「血行が良くなると副反応が悪化するかも」という懸念も、「問題なし」と判断されました。

 

理由3:むしろ「清潔」のほうが大事!

 

エビデンスが確立した結果、むしろ「入浴しないデメリット」のほうが注目されるようになりました。

こどもは新陳代謝が活発で、汗っかきです。 ワクチン接種で病院に来るだけでも、緊張や移動で汗をびっしょりかいていることもあります。 その汗や皮脂汚れを流さずに一晩寝かせてしまうと、どうなるでしょう?

  • 不潔な状態で、かえって注射痕の周りをかきむしってしまう。
  • あせもや湿疹など、別の皮膚トラブルの原因になる。
  • 体がベタベタして気持ち悪く、よく眠れない(=体力の回復が遅れる)。

これでは本末転倒ですよね。 「むしろ清潔にするメリットのほうが大きい」と判断されたため、「接種当日の入浴は差し支えない」という見解に至ったのです。


 

ただし入浴OKでも守ってね!「3つの優しいルール」

 

「入浴OK」とはなりましたが、それは「何をしてもOK」という意味ではありません。 接種当日は、体がワクチンに反応して、いつもより少しデリケートになっている状態です。

予防接種後の「3つの優しいお約束」をご紹介します。

 

お約束1:激しい運動と「長湯」はNGです! 🏊‍♂️

 

接種当日は、激しい運動はお休みしてください。これは今も昔も変わりません。 そして、それと同じ理由で、熱いお湯での「長湯」もやめてください。

なぜなら、激しい運動も長湯も、体力をひどく消耗させるからです。

ワクチン接種後の体は、体内で免疫という「防衛軍」を一生懸命作っている最中です。いわば「静かなる戦い」の真っ最中。 そんな時に、長湯や運動で体力を奪われてしまうと、体が疲れ切ってしまい、だるさや発熱といった副反応が出やすくなってしまう可能性があります。

 

お約束2:注射した場所は「ゴシゴシ」厳禁! 🧼

 

接種した腕、気になりますよね。赤くなっていたり、少しだけ腫れていたり。 「バイキンが入ったら大変!」と、お風呂でそこを一生懸命、タオルやスポンジでゴシゴシこするのは、絶対にやめてください!

理由は「衛生面」ではありません。「刺激」がダメなのです。 注射の痕を強くこすると、その物理的な刺激によって、かえって赤みや腫れ、痛みがひどくなってしまいます

お風呂に入ったら、石鹸やボディソープをよーく泡立てて、その泡で「優しくなでる」ように洗ってあげれば十分。シャワーで洗い流す時も、水圧を強く当てないように気をつけてくださいね。

 

お約束3:「熱がある」「ぐったり」の時は、もちろん中止! 🛌

 

これはもう、ワクチン接種に関わらずです。

接種から数時間経って、

  • 高熱がでた
  • いつもの元気がない
  • 顔色が悪く、ぐったりしている

こんな「いつもと違う」様子が見られたら、入浴は体力を奪うだけです。 迷わず入浴は中止し、体を温かく拭いてあげるなどして、とにかく安静に、ゆっくり休ませてあげてください。 もちろん、状態が心配な時は、すぐにクリニックにご相談ください。


 

まとめ

 

「インフルエンザワクチン接種後の入浴問題」、いかがでしたでしょうか。長年のモヤモヤは晴れましたか?

<本日のまとめ>

  1. 昔は「入浴NG」だった。
    理由➡衛生環境が悪く「化膿」が怖かったため。また、「副反応」と見分けがつかなくなるため。
  2. 現在は「入浴OK」が常識。
    理由➡衛生環境が劇的に改善し、入浴で副反応が悪化することはない。
  3. ただし、「3つの優しいルール」を守ろう!
    (1) 長湯・熱いお湯はNG(体力消耗を防ぐ)
    (2) 注射部位はゴシゴシしない(刺激を与えない)
    (3) 高熱や元気がない時は中止(安静第一)

しっかりワクチンで予防して、お風呂でサッパリして、この冬も元気に乗り越えましょう!

 

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院長 大熊 喜彰 (おおくま よしあき)
記事監修
院長 大熊 喜彰
(おおくま よしあき)

日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務

医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)

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