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その咳、本当にツロブテロールテープは必要?小児科医が教える賢い使い方

季節の変わり目や、少し涼しくなってきた頃、お子さんの咳が気になって受診される親御さんが増えてきます。その際、「ツロブテロールテープ」や「ホクナリンテープ」というお薬をもらった経験がある方も多いのではないでしょうか。

このテープは、貼るだけで咳を和らげてくれる、魔法のようにお手軽なお薬に感じられるかもしれません。しかし、本当にどんな咳にも効果があるのでしょうか?

今回は、ツロブテロールテープの正しい使い方と、「この咳には基本的には必要ない」という見極め方について、小児科医の立場から分かりやすくお伝えしたいと思います。

 

ツロブテロールテープって、どんなお薬?

 

まずは、ツロブテロールテープがどんなお薬なのか、簡単に見ていきましょう。

このテープには「ツロブテロール」という成分が入っています。この成分は、気管支を広げる作用があります。気管支とは、肺に空気を取り込むための管のことで、この管が狭くなると、空気が通りにくくなり、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった呼吸音(喘鳴:ぜんめい)や、苦しそうな咳が出ます。

ツロブテロールテープは、この狭くなった気管支を広げることで、呼吸を楽にし、苦しい咳を和らげる効果があるのです。

 

風邪の咳と喘息の咳、何が違うの?

 

ここが、とても重要なポイントです。

風邪をひいたときも咳は出ますよね。一方で、喘息のお子さんも咳が出ます。この二つの咳は、原因が全く違うのです。

  • 風邪の咳:
    • 原因
      ウイルスが喉や気管支の粘膜に炎症を起こすため
    • 特徴
      ゴホゴホ、コンコンという乾いた咳や、痰が絡んだ湿った咳。鼻水や熱を伴うことが多い。
    • 気管支の状態
      粘膜の炎症はあっても、気管支そのものが収縮して狭くなっているわけではないことが多い。
  • 喘息の咳:
    • 原因
      アレルギーや感染症などがきっかけで、気管支が収縮して狭くなる(気管支の過敏性)ため。
    • 特徴
      「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴を伴う咳。夜間や早朝に悪化しやすい。呼吸が苦しそうになる。

このように、風邪と喘息では、咳の原因が根本的に異なります。ツロブテロールテープは、「気管支を広げる」お薬ですから、気管支が狭くなっている状態(喘息や喘息性気管支炎など)に効果を発揮します。一方、気管支が狭くなっていない普通の風邪の咳には、ほとんど効果がありません

例えるなら、風邪の咳が「喉のイガイガや炎症で出る咳」だとすると、喘息の咳は「息の通り道が狭くなって出る咳」です。ツロブテロールテープは、後者の通り道を広げる道具なのです。
ご自宅で厳密に区別することは難しいかもしれませんが、医師はこのような点に注意し聴診しています。

 

「うちの子の咳、テープは必要?」見極めるポイント

 

では、おうちで「この咳はテープが必要かな?」と判断する際のヒントをお伝えします。

【テープを貼ることを検討してほしい咳】

  • ゼーゼー、ヒューヒューと音が聞こえるとき
    一番の目安です。寝ているときや、遊んでいるときに耳を澄ませてみてください。呼吸に合わせてヒューヒューという高い音や、ゼーゼーという音が聞こえたら、気管支が狭くなっている可能性があります。
  • 呼吸が苦しそうなとき
    肩で息をしたり、肋骨の下のあたりがペコペコとへこむ(陥没呼吸)ようなときは、呼吸困難のサインです。
  • 咳が止まらず、眠れないとき
    夜中に咳き込んで、何度も起きてしまうような場合も、気管支が狭くなっているかもしれません。

【テープがほとんど必要ないと考えられる咳】

  • 鼻水が大量に出ているときの咳
    喉に垂れた鼻水が刺激となって出る咳です。
  • 痰が絡んでいるように聞こえる咳
    ゴロゴロと音がしたり、痰を吐き出すような咳は、気管支が狭くなっているわけではありません。
  • 日中、元気に遊べている咳
    時々コンコンと咳はするけれど、食欲もあって機嫌も良い場合は、緊急性は低いことが多いです。

もちろん、厳密に区別することは難しいと思います。咳喘息のように、ツロブテロールテープが効果的な疾患もあります。不安なときは、必ずかかりつけの小児科にご相談くださいね。

 

正しい使い方と注意点

 

ツロブテロールテープは、正しい使い方をすることで最大の効果を発揮します。

  1. 貼る場所
    胸、背中、上腕のいずれかに貼ってください。皮膚が荒れないように貼る場所は毎日変えるのがおすすめです。
  2. 貼るタイミング
    効果は24時間持続します。一般的には1日1回、朝に貼ることが多いです。夜間の咳がひどい場合は、夕方に貼ることで、夜間の効果を高めることができます。
  3. もし剥がれたら…
    貼付12時間後に約74%の薬物が皮膚へ移行していることが報告されているので、就寝前に貼付した場合に、起床後にはがれても有効性に大きな影響はないと考えられます。貼付後12時間を経てはがれた場合では再貼付する必要はないと思われます。
  4. 副作用
    動悸、手の震え、顔が赤くなる、機嫌が悪くなるなどの副作用が出ることがあります。多くの場合、軽度で一時的ですが、気になる症状があればすぐに医師にご相談ください。

 

最後に

 

ツロブテロールテープは、正しく使えばお子さんのつらい呼吸を助けてくれる、とても良いお薬です。しかし、すべての咳に万能なわけではありません。

今回のブログで、「ゼーゼー、ヒューヒューという音を聞いたら、テープの出番かもしれない」と覚えていただけたら嬉しいです。

 

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当院の外観写真

 

院長 大熊 喜彰 (おおくま よしあき)
記事監修
院長 大熊 喜彰
(おおくま よしあき)

日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務

医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)

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