今日は、私たちの身近に潜む「怖い皮膚感染症」についてお話しします。
「なんだか足が赤く腫れてきたな…」
「虫刺されかと思ってたら、どんどん広がるし熱っぽい…」
そんな経験はありませんか?もしかしたら、それは「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」かもしれません。
蜂窩織炎は、お子さんから大人まで、誰にでも起こりうる皮膚の病気(感染症)です。 「蜂」という字が入っていますが、ハチに刺されてなる病気ではありません。 この記事では、この蜂窩織炎について、症状から治療、そして予防法まで、わかりやすくお伝えしていきます。

蜂窩織炎ってどんな病気?
蜂窩織炎は、皮膚の深い部分から皮下脂肪組織にかけて、細菌が感染して炎症を起こす病気です。 皮膚には、目に見えない小さな傷がたくさんあります。 この傷から細菌が侵入し、感染が広がってしまうことで発症します。
原因となる細菌は、黄色ブドウ球菌や溶血性レンサ球菌といった、普段から私たちの体の表面にいる常在菌がほとんどです。 これらの細菌は、健康な皮膚では悪さをしません。 しかし、ひとたび皮膚のバリア機能が壊れてしまうと、一気に皮膚の奥深くへと入り込んでしまうのです。
蜂窩織炎のサインを見逃さないで!
蜂窩織炎には、特徴的な症状がいくつかあります。
- 赤み(発赤):
皮膚が赤く、熱をもちます。最初は虫刺されや小さな傷の周りだけだったのが、次第に赤みが広がり、範囲がはっきりしてきます。
- 腫れ(腫脹):
赤くなった部分が腫れてきます。触ると硬く感じることもあります。
- 痛み(疼痛):
触れたり、少し動かしたりするだけで強い痛みを感じます。
- 熱感:
患部が熱っぽく感じます。
- 全身症状:
進行すると、発熱や悪寒、倦怠感といった全身の症状が出てくることもあります。
これらの症状は、急激に悪化することが多いため、「昨日までは何でもなかったのに、朝起きたら足がパンパンに腫れて熱を持っている!」なんてことも珍しくありません。
お子さんの場合だと、「足が痛い!」と訴えたり、腫れた部分を触られるのを嫌がったりする様子が見られます。 小さな傷や虫刺されの跡から急に悪化することもあるので、「ただの虫刺されかな?」と安易に考えて放置しないことが大切です。
どんな人がなりやすい?
誰にでも起こりうる病気ですが、特に以下のような方は注意が必要です。
- アトピー性皮膚炎の方
- 糖尿病や免疫力が低下している方
- 怪我や手術の傷がある方
アトピー性皮膚炎や水虫の方は、皮膚のバリア機能が低下しているため、細菌が侵入しやすくなっています。 また、糖尿病の方は、血行が悪くなったり、免疫力が低下したりしているため、感染が広がりやすい傾向があります。
蜂窩織炎の治療法
「もしかして蜂窩織炎かも…」と思ったら、自己判断せずに、すぐに病院を受診しましょう。 特に、赤みが急激に広がったり、高熱が出てきた場合は、ためらわずに受診してください。
治療の中心は、抗生物質です。 細菌を退治するため、飲み薬や点滴で抗生物質を投与します。
初期の軽症であれば、飲み薬で治療することがほとんどです。 しかし、症状が重い場合や、全身症状が出ている場合は、入院して点滴治療を行うこともあります。 早めに治療を開始すれば、比較的早く改善することが多いのですが、放置すると炎症が広がり、最悪の場合、命に関わるような重篤な状態(敗血症など)になることもあります。
また、痛みが強い場合は、痛み止めを、かゆみが強い場合は抗ヒスタミン薬も処方されます。 患部を冷やすことで、腫れや痛みが和らぐこともあります。
蜂窩織炎は予防できる!今日からできる対策
怖い病気ですが、予防することは可能です。
- 皮膚を清潔に保つ
日頃からシャワーや入浴で体を清潔に保ちましょう。特に、汗をかきやすい季節や、傷がある部分は丁寧に洗いましょう。
- 傷や虫刺されを放置しない
小さな傷でも、放置すると細菌の入り口になります。消毒をし、絆創膏などで保護しましょう。 虫に刺された場合は、掻きむしらず、かゆみ止めを塗って、清潔な状態を保つことが大切です。お子さんの場合は、特に無意識に掻いてしまうことがあるので、注意してあげてください。
- 水虫の治療
水虫は、皮膚のバリア機能を壊し、蜂窩織炎の原因になります。水虫がある方は、しっかりと治療しましょう
- 保湿ケア、アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎の方は、日頃から保湿をしっかり行うことで、皮膚のバリア機能を高め、乾燥による皮膚のひび割れを防ぎます。湿疹がある場合は、医師の指導の下で適切なステロイド軟こうや非ステロイド軟こうで治療しましょう。
- むくみ対策
足のむくみがある方は、マッサージや適度な運動で血行を良くしましょう。
おわりに
蜂窩織炎は、決して珍しい病気ではありません。 小さな傷や虫刺されから、あっという間に感染が広がり、強い痛みや熱を伴うことがあります。
「これって何だろう?」 「もしかして、蜂窩織炎かな?」
そう感じたときは、迷わず当院にご相談ください。
当院皮膚科は日時指定の予約制です。発熱患者さんとは別のクリーンな待合室と診察室で対応しています。
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川崎市中原区
アクセス:武蔵小杉、新丸子、元住吉、武蔵中原、日吉
武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
診療チーム