ブログ
Blog
Blog
冬が近づくと、空気が乾燥してきます。 それと同時に、多くの方を悩ませるのが「手荒れ」です。
「またこの季節が来たか…」
「ハンドクリームを塗っても、すぐにカサカサになる」
「ひび割れができて、水がしみるのが本当につらい」
こんなお悩みを抱えていませんか? 特に、家事や育児、お仕事で水仕事や手洗いを頻繁に行う方にとって、手荒れは深刻な問題です。
「武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科」です。当院は「森のこどもクリニック」という名前ですが、皮膚科ではお子さんだけでなく、大人の患者さんも非常に多くご来院されます。
そして、大人の皮膚科のお悩みで非常に多いものの一つが、この「手荒れ」です。 しかし、皆さんが「手荒れ」と呼んでいるその症状、実は単なる乾燥や荒れではなく、「手湿疹(てしっしん)」という皮膚の病気(皮膚炎)かもしれません。
「たかが手荒れ」と我慢していると、かゆみや痛みが悪化し、日常生活にも支障をきたしてしまいます。
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医の視点から、このしつこい「手湿疹」の正体と原因、そして皮膚科で行う治療とご自宅でできる本気の予防法について、詳しく、そして分かりやすく解説していきます。
まず、言葉の整理から始めましょう。
「手荒れ」は、一般的に皮膚が乾燥してカサカサしたり、少し皮がむけたりする状態を指します。これは、皮膚のバリア機能が低下し始めた「初期サイン」です。
対して「手湿疹」は、その状態がさらに進行し、「炎症(えんしょう)」が起きてしまった状態を指します。いわば、皮膚が「火事」を起こしているようなものです。
【手湿疹の主な症状】
指先や指の間、手のひら、手の甲など、症状が出る場所は人によって様々です。 これらが当てはまる場合、あなたは「手湿疹」という治療が必要な状態にある可能性が高いです。
では、なぜ手湿疹は起きてしまうのでしょうか。 キーワードは「皮膚のバリア機能の破壊」です。
私たちの皮膚は、表面にある「皮脂膜(ひしまく)」と「角層(かくそう)」によって、外部の刺激から守られています。これが「バリア機能」です。しかし、このバリアが壊れると、刺激物が簡単に侵入し、炎症を引き起こします。
手湿疹の主な原因は、大きく分けて2つあります。
これが手湿疹の最も多い原因です。 特定の物質にアレルギーがあるわけではなく、水や洗剤、石鹸、アルコール消毒液、紙、摩擦などの「物理的・化学的な刺激」が、バリア機能を直接壊してしまうことで起こります。
これらの職業の方は、まさに「職業病」とも言えるほど手湿疹に悩まされています。
こちらは、特定の物質に対する「アレルギー反応」として起こるものです。 原因となる物質(アレルゲン)に触れることで、炎症とかゆみが引き起こされます。
刺激性とは異なり、ごく微量のアレルゲンに触れただけでも、強い症状が出ることがあります。多くの場合、①の「刺激性」がベースにあり、バリアが壊れたところに②の「アレルギー性」の要因が加わって、さらに悪化しているケースも少なくありません。
手湿疹が治りにくい最大の理由は、「悪循環(負のスパイラル)」に陥りやすいからです。
このループに入ると、市販のハンドクリームを塗るだけでは追いつかなくなります。 バリアが壊れた無防備な肌に、ハンドクリームの成分が逆にしみて痛む、ということさえ起こり得ます。
では、この悪循環を断ち切るために、皮膚科ではどのような治療を行うのでしょうか。 治療の柱は「①炎症を抑えること」と「②バリア機能を守り、再建すること」です。
まず、起きてしまっている「火事(炎症)」をしっかり消す必要があります。 そのために最も有効なのが「ステロイド外用薬(塗り薬)」です。
「ステロイドは怖い」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、ステロイドは炎症を抑える非常に強力で優れた薬です。皮膚科医の指導のもと、症状の強さや部位に合ったランクの薬を、適切な期間・量で使用すれば、決して怖い薬ではありません。
中途半端に弱い薬をだらだらと使い続けるよりも、「効く薬を短期間でしっかり使い、良い状態になったら徐々に減らしていく」のが、最も安全で効果的な治療です。
かゆみが強い場合は、抗ヒスタミン薬の飲み薬を併用することもあります。
火事を消すと同時に、壊れたバリアを保護し、皮膚が本来の力を取り戻す手助けをする必要があります。そこで使うのが「保湿剤」です。
皮膚科で処方される保湿剤には、主に以下のような種類があります。
症状や生活スタイル(「ベタつくのは仕事上困る」「しみるのが嫌」など)に合わせて、最適な保湿剤を選択します。
治療によって良い状態を取り戻しても、これまでと同じ生活を続ければ、手湿疹は簡単に再発します。 治療と同じくらい、いや、治療以上に大切なのが日々の予防とケアです。皮膚科医が本気でお勧めする「手の守り方」をご紹介します。

手湿疹・手荒れは、非常にありふれた皮膚トラブルですが、本人のQOL(生活の質)を著しく低下させる、つらい病気です。
「主婦だから仕方ない」
「仕事だからあきらめている」
そんなことはありません。 手湿疹は、「①炎症を抑える治療」と「②徹底した予防・保湿」の両輪で、良い状態にコントロールすることができます。
手が荒れていると、気持ちも滅入ってしまいます。逆に、手がすべすべだと、心も少し明るくなるものです。
市販のハンドクリームで改善しない、かゆみやひび割れが続く、という場合は、「たかが手荒れ」と我慢せず、ぜひお早めに皮膚科にご相談ください。
【SNSでも情報発信中!】
当院のSNSでは、小児科・皮膚科に関する役立つ情報や、季節ごとの病気の注意点などを発信しています。ぜひフォローしてください!
Instagram: 武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科
当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)