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2025年9月30日に気象庁から2026年春の花粉飛散予測(第1報)が発出されました。
「えっ、もう来年の春の話?」
そう思われるかもしれません。しかし、アレルギー診療の世界において、「準備」こそが最大の治療といっても過言ではありません。特に、先日発表された2026年春の花粉飛散予測を見ると、早めの対策がこどもたちの春のQOL(生活の質)を大きく左右することがわかります。
今回は、最新の飛散予測を紐解きながら、今から知っておくべき「花粉症・最新攻略法」をお伝えします。
当院のアレルギー専門外来では、こどもの花粉症も大人の花粉症も対応しています。ご予約はお電話(044-739-0888)で承っています。
日本気象協会の発表によりますと、この夏(2025年)の気象条件は、花芽の形成に大きく影響を与えました。一般的に、前年の夏が「高温・多照・少雨」であると、翌春の花粉飛散量は多くなる傾向にあります。
2026年の予測(第1報)を分析すると、地域差はあるものの、多くのエリアで「やや多い」飛散量が予想されています。特に注意が必要なのは、飛散開始時期です。暖冬傾向が続く近年、スギ花粉の飛び始めが早まるケースが増えています。
「去年は大丈夫だったから」と油断は禁物です。ある年突然、花粉症を発症することも珍しくありません。「飛んでから考える」のではなく「飛ぶ前に備える」。これが鉄則です。
赤の棒グラフが2026年予測値

杏林製薬株式会社作成資料より
花粉が本格的に飛び始める1-2週前からお薬を使い始めることをお勧めします。
花粉症の症状は、体の中の「マスト細胞」という細胞から、ヒスタミンというかゆみ原因物質が出ることで起こります。 一度ヒスタミンが大量に出て炎症が起きてしまうと、火事の勢いが強くなってから消火活動をするようなもので、なかなか症状が治まりません。
しかし、スギ花粉が飛散する約2週間前(目安:1月末から2月頭)からお薬を開始すると、以下のメリットがあります。
ピーク時の症状が軽くなる
症状が出る期間が短くなる
強い薬を使わなくて済む
まさに「先手必勝」。 「目が痒くて勉強に集中できない」「鼻が詰まって夜眠れない」と苦しむ姿を見る前に、1月のカレンダーに「クリニック受診」と書き込んでおいてください。
症状に合わせた「標準治療(スタンダードかつ効果的な治療)」をご紹介します。
鼻の症状は、集中力の低下や睡眠障害に直結します。基本となるのは以下の3つです。
第2世代抗ヒスタミン薬
眠くなりにくいタイプの内服薬です。シロップ、粉薬、錠剤など年齢や好みに合わせて処方します。
抗ロイコトリエン受容体拮抗薬(オノン®、キプレス®、シングレア®など)
特に「鼻づまり」がひどい方に効果を発揮します。鼻の粘膜の腫れを抑える働きがあり、喘息をお持ちのお子さんにも相性が良いお薬です。
点鼻ステロイド薬(アラミスト®、ナゾネックス®など)
「ステロイド」と聞いて怖がる必要はありません。局所(鼻の中だけ)に作用するため、全身への副作用は極めて少なく、非常に高い効果(エビデンス)が認められています。鼻づまりで口呼吸になっている方には、ぜひ使っていただきたい選択肢です。効果を実感できるまでに少し時間がかかるため、早めに開始するのが肝です。
<参考>
当院Bloh「スギ花粉症の症状を緩和する治療法と早期対策の重要性」
痒みを我慢できず、目を強くこすってしまいがちです。これは角膜を傷つける原因になってしまいます。
抗ヒスタミン薬点眼
これが基本です。かゆみを抑えます。
ステロイド点眼
かゆみが強烈な場合、結膜がむくんで腫れてしまった場合などはステロイドの目薬を使うことがありますが、これには注意が必要です。ステロイド点眼は眼圧を上げてしまうリスクがあります。 ステロイド点眼が必要な場合は、必ず眼科専門医での眼圧測定を併用しながら治療を行いましょう。当院では、眼科受診のタイミングもしっかりアドバイスさせていただきます。
上記の薬を使用して花粉飛散シーズンを乗り切った後は、ぜひスギ花粉症に対して舌下免疫療法を検討してください!花粉飛散時期が終わった6月から開始できます。
舌下免疫療法は上記の対症療法と異なり、スギ花粉に対して免疫を慣らしていく根本治療に近い治療法です。詳細は下記の当院Blogをご確認ください。
当院Blog「【6月〜12月に開始を!】スギ花粉症に負けない体をつくる「舌下免疫療法」とは?」
「毎年、薬を飲んでも全く効かない」「夜も眠れず、学校生活に支障が出ている」。 そんな重症・最重症のスギ花粉症の方には、「ゾレア®(オマリズマブ)」という注射による治療法があります。
これは、アレルギー反応の根本原因である「IgE抗体」そのものをブロックするお薬です。以前は気管支喘息などに使われていましたが、現在は重症の花粉症にも保険適用となっています。
この治療は「今日来て、今日打つ」ということができません。以下の準備が必要です。
既存の治療でも症状が治まらないことの確認(重症度の判定)
血液検査(総IgE値とスギ特異的IgE値の測定)
体重測定(投与量を決定するため)
これらを総合して、投与量と間隔を決定します。 本格飛散シーズン(2月中旬以降)に間に合わせるためには、1月の最終週頃までには一度受診していただき、準備を始める必要があります。 「毎年本当に辛い思いをしている」という12歳以上のこども(適応年齢等の詳細は診察時にご相談ください)やご家族は、ぜひ早めにご相談ください。
<参考>
当院Blog「重症スギ花粉症に対する抗IgE抗体薬「ゾレア®」治療できます」
花粉症は、単なる「季節の不快な症状」ではありません。 勉強、スポーツ、遊び、仕事、そして睡眠を奪う大敵です。
私たちは単にお薬を出すだけでなく、お子さん一人ひとりのライフスタイルや性格に合わせた治療プランを、ご家族と一緒に考えていきたいと思っています。
「まだ早いかな?」と思う今の時期だからこそ、ゆとりを持って相談できます。 まずはお気軽に、武蔵小杉の「森のこどもクリニック小児科・皮膚科」へ足をお運びください。
2026年の春が、皆様にとって清々しい季節となりますように。 スタッフ一同、温かくお迎えいたします。
【今月のTo Do】
お子さんの昨年までの花粉症の様子を思い出す。
1月下旬の受診スケジュールを確認する。
ご家族で「早めの対策」について話し合う。
【SNSでも情報発信中!】
当院のSNSでは、小児科・皮膚科に関する役立つ情報や、季節ごとの病気の注意点などを発信しています。ぜひフォローしてください!
Instagram: 武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科
当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)
© Morino Kodomo Clinic
