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元気いっぱいのお子さんは、遊んでいる最中や転んだときに、すり傷や切り傷をよく作ってしまいますよね。
「血が出てるけど、消毒したほうがいいの?」「絆創膏を貼れば大丈夫?」
こんな疑問をお持ちの親御さんはとても多いです。
この記事では、小児科専門医の立場から こどものケガへの正しい対処法 と、 「湿潤療法(うるおい療法)」 について、わかりやすく解説します。
傷ができると、皮膚は次のようなステップで自然に治ろうとします。
止血:傷口がふさがるように血が固まる
炎症:ばい菌と戦うために赤く腫れることも
再生:皮膚の細胞が新しくつくられる
修復:元の皮膚の状態に近づいていく
この自然な治癒の流れを助けるためには、「乾かさない」ことがとても大切なんです。
昔は「傷は消毒して乾かす」が一般的でした。でも最近の医療では、これは 逆効果 とされることが多くなっています。
消毒液は、ばい菌を殺すだけでなく、皮膚の再生に必要な細胞も傷つけてしまうことがあります。また、乾かすことでかさぶたができ、治るのに時間がかかりやすく、傷跡が残りやすいとも言われています。
最近では「湿潤療法(モイストヒーリング)」という考え方が注目されています。
簡単に言うと、「傷を乾かさずに、うるおった環境で治す」方法です。
これにより、
痛みが少ない
傷が早くきれいに治る
傷跡が残りにくい
といったメリットがあります。
では、こどもがすり傷や切り傷をしたとき、どうすればいいのでしょうか。具体的なステップをご紹介します。
とても重要です!
痛みがあると思いますが、傷についた砂や泥を水道水でしっかり洗い流しましょう。
石けんは傷口にはつけず、まわりの皮膚を洗う程度でOKです。
出血が多い場合は、5分ほど圧迫して止めます。
基本的に、家庭での軽い傷には消毒は不要です。
逆に傷の回復を遅らせる可能性があります。
市販の「キズパワーパッド®」「ハイキュアパッド®」「ハイドロコロイドパッド®」などの湿潤環境を維持する ハイドロコロイド製品 を貼りましょう。
普通の絆創膏ではなく、適度なうるおいを保てるタイプがおすすめです。
パッドの中で治癒が進むので、2〜3日は貼りっぱなしで大丈夫。
自然にはがれてきたら交換します。
交換の時に、感染の兆候(膿んでいないか・くさい臭いがしないか・赤みが広がってないかなど)を確認しましょう。
傷がある程度ふさがってくると、「もう大丈夫かな」と思ってしまいがちですが、実は傷跡が目立ちやすくなる時期でもあります。
特に注意したいのが、紫外線(UV)です。
傷が治りかけのピンク色の皮膚はとてもデリケートで、紫外線の影響を受けやすい状態です。日焼けしてしまうと、色素沈着(茶色く跡が残る)や炎症後色素沈着といったトラブルの原因になります。
傷が治ったあとも、1〜3ヶ月程度は紫外線を避けるのが理想です。
外に出るときは、UVカットのテープや肌に優しい日焼け止めを使用しましょう。
特に夏場や日差しの強い季節は、長袖・帽子などで物理的に遮るのも有効です。
お子さんの場合、知らず知らずのうちに日差しをたっぷり浴びてしまうこともあります。「もう治ったかな?」と思ってからも、傷の跡が消えるまでの間はUVケアを意識してあげると、きれいな肌を保ちやすくなります。
以下のような場合は、すぐに小児科や外科を受診しましょう。
傷が深くて血が止まらない(10分以上)
傷口が大きく開いている(縫合が必要かも)
動物に咬まれた
サビた釘で刺さった(破傷風の心配)
発熱や傷の赤み・腫れ・膿が強い(感染の可能性)
「うるおった環境だと、ばい菌が繁殖しそうで心配…」という声も聞かれます。
実は、きちんと洗浄されて清潔に保たれた傷であれば、湿潤環境の方がむしろ感染リスクは少ないとも言われています。ただし、適切なケアができない場合はリスクもあるため、心配なときは医師に相談してください。
昔ながらの「消毒&乾かすケア」は、今では見直されつつあります。
湿潤療法を正しく理解して使うことで、こどもの傷はより早く、きれいに治すことができます。
日常のちょっとしたケガでも、適切な対応が大切です。
迷ったときや心配な症状がある場合は、どうぞお気軽に当院へご相談ください。
当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)