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お子さんが咳き込んでいる姿を見るのは、親御さんにとっても辛いものです。特に夜中、静まり返った部屋に響く「コンコン」「ケンケン」という乾いた咳。背中をさすりながら、「代わってあげたい」と思ったことがある親御さんもも多いのではないでしょうか。
多くの咳は風邪(ウイルス感染)によるもので、1〜2週間もすれば自然に治まります。しかし、もし2週間、3週間と咳だけが続く場合、私たちは「咳喘息」の可能性を疑います。

Geminiで作成
「喘息(ぜんそく)」と聞くと、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と呼吸が苦しくなる状態(気管支喘息)をイメージする方が多いと思います。 しかし、咳喘息には「ゼーゼー」という音がありません。 これが最大の特徴であり、見逃されやすい原因でもあります。
気管支喘息
気道の粘膜が腫れ、痰が絡み、空気の通り道が狭くなるため、呼吸をするたびに「ゼーゼー、ヒューヒュー(喘鳴:ぜんめい)」という音がします。呼吸困難を伴うこともあります。
咳喘息
気管支喘息の一歩手前の状態とも言えます。気道に炎症が起きて過敏にはなっていますが、気道がそこまで狭くなっていないため、喘鳴は聞こえません。その代わり、少しの刺激(冷たく乾いた空気を吸う、食事中など)で激しい空咳(からせき)が出ます。
気道の粘膜が炎症を起こし非常に過敏になっているからです。そこへ、冷たい空気やホコリ、会話などの些細な刺激が加わると、咳のスイッチが入ってしまうのです。
お子さんの様子を思い出してみてください。以下の項目に当てはまるものはありますか?
▢ 風邪の症状(熱や鼻水)は治まったのに、咳だけが2週間以上続いている
▢ 日中よりも、夜寝る時、深夜、明け方に咳がひどくなる
▢ 運動した後や、大声で笑ったり泣いたりした後に咳き込む
▢ 冷たい空気を吸い込むと咳が出る
▢ 「コンコン」という乾いた咳が続く
▢ 風邪薬(咳止め)を飲んでもあまり効果がない
▢ 家族にアレルギー体質(花粉症、喘息、アトピー性皮膚炎など)の人がいる
これらに複数当てはまる場合、咳喘息の疑いが濃厚です。特に「夜間から明け方」の時間帯は、自律神経(副交感神経)の関係で気管支が狭くなりやすいため、咳喘息の症状が出やすい典型的なタイミングです。
「咳だけなら、そのうち治るのでは?」 そう思われるかもしれませんが、ここで重要なポイントをお伝えします。
咳喘息を放置すると、約30〜40%が本格的な「気管支喘息」へ移行すると言われています。
咳喘息は、気管支喘息への入り口に立っている状態です。ここでしっかりと適切な治療を行い、気道の炎症(火事)を消火してあげれば、喘息への移行を防ぐ可能性が高まります。逆に、炎症がくすぶったまま放置すると、気道の壁が厚く硬くなり(リモデリング)、治りにくい重症の喘息になってしまうリスクがあるのです。
だからこそ、「早期発見・早期治療開始」が、お子さんの将来の呼吸器の健康を守るために非常に重要なのです。
7歳以上で可能であれば大人と同じような呼吸機能検査(息を吐く力の測定)を行います。小さなお子さんの場合、呼吸機能検査は難しいことが多いです。そのため、問診(症状の経過)と聴診、そして「診断的治療」が重要になります。
診断的治療とは、「気管支を広げる薬を使ってみて、咳が改善するかどうか」を確認することです。もし薬で劇的に良くなるなら、それは咳喘息である可能性が高いという判断材料になります。
当院では、日本小児アレルギー学会のガイドラインに基づき、以下の薬を中心に治療を組み立てます。
気管支拡張薬(テープや飲み薬)
狭くなった気管支を広げて、空気の通りを良くします。「ホクナリンテープ®」などが有名です。これは「今の苦しさ」をとるための対症療法です。
抗炎症薬(吸入ステロイド薬やロイコトリエン受容体拮抗薬)
こちらが治療・予防の本丸です。気道の炎症(火事)を鎮めるお薬です。「オノン®」「キプレス®」「シングレア®」などの飲み薬や、吸入ステロイドを使用します。
「子供に吸入とはいえステロイドを使って大丈夫?」と心配される親御さんもいらっしゃるかもしれません。喘息治療で使う吸入ステロイドは、患部(気管支)に直接届くもので、飲み薬や点滴と違って全身への副作用は極めて少ないことが多くの研究で証明されています。子供の成長に影響することもまずありません。
ここが一番のポイントです。 「咳が止まった=治った」ではありません。
咳が止まっても、気道の奥ではまだ小さな火種(炎症)が残っています。ここで薬を止めてしまうと、次の風邪をきっかけにすぐに再発してしまいます。 一般的には、症状がなくなってからもしばらく(数ヶ月~年単位で)治療を継続し、気道の粘膜を完全にきれいな状態に戻すことが必要です。「もう大丈夫」と自己判断せず、医師と一緒に減薬のタイミングを決めていきましょう。
お薬による治療と並行して、生活環境を見直すことも大切です。
湿度管理
乾燥は敵です。加湿器などを使い、室内の湿度を50〜60%に保ちましょう。
タバコの煙
副流煙は気道を強く刺激し、炎症を悪化させます。ご家族の禁煙を強く推奨します。
アレルゲン対策
ダニやホコリが原因の場合もあります。こまめな掃除や布団干し、シーツの洗濯が効果的です。
冷気対策
冬場、外出時はマスクをして、冷たい空気が直接気道に入るのを防ぎましょう。冬の運動時は、急に冷たく乾いた空気が軌道に入ってこないように、準備運動をして徐々に体を温めてから本格的に運動すると良いです。
夜中に咳き込んで苦しそうなお子さんの背中をさすりながら、不安な気持ちになると思います。親御さんの睡眠不足は、お子さんの成長や日中の機嫌に影響するだけでなく、看病する親御さんの体力も奪ってしまいます。
もし、「いつもの風邪より長いな」「咳止めの効きが悪いな」と感じたら、ぜひ一度ご相談ください。 当院では、お子さん一人ひとりの体質や生活スタイルに合わせ、飲み薬が良いか、粉薬が良いか、吸入ができるかなど、無理のない治療方針を一緒に考えていきます。
咳喘息は、正しく診断し、根気強く治療・予防すれば、必ず良くなる病気です。 お子さんがぐっすり眠り、元気に走り回れる日常を、一緒に取り戻したいと思っています。
【SNSでも情報発信中!】
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Instagram: 武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科
当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)
© Morino Kodomo Clinic
