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季節の変わり目や、少し涼しくなってきた頃、お子さんの咳が気になって受診される親御さんが増えてきます。その際、「ツロブテロールテープ」や「ホクナリンテープ」というお薬をもらった経験がある方も多いのではないでしょうか。
このテープは、貼るだけで咳を和らげてくれる、魔法のようにお手軽なお薬に感じられるかもしれません。しかし、本当にどんな咳にも効果があるのでしょうか?
今回は、ツロブテロールテープの正しい使い方と、「この咳には基本的には必要ない」という見極め方について、小児科医の立場から分かりやすくお伝えしたいと思います。
まずは、ツロブテロールテープがどんなお薬なのか、簡単に見ていきましょう。
このテープには「ツロブテロール」という成分が入っています。この成分は、気管支を広げる作用があります。気管支とは、肺に空気を取り込むための管のことで、この管が狭くなると、空気が通りにくくなり、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった呼吸音(喘鳴:ぜんめい)や、苦しそうな咳が出ます。
ツロブテロールテープは、この狭くなった気管支を広げることで、呼吸を楽にし、苦しい咳を和らげる効果があるのです。
ここが、とても重要なポイントです。
風邪をひいたときも咳は出ますよね。一方で、喘息のお子さんも咳が出ます。この二つの咳は、原因が全く違うのです。
このように、風邪と喘息では、咳の原因が根本的に異なります。ツロブテロールテープは、「気管支を広げる」お薬ですから、気管支が狭くなっている状態(喘息や喘息性気管支炎など)に効果を発揮します。一方、気管支が狭くなっていない普通の風邪の咳には、ほとんど効果がありません。
例えるなら、風邪の咳が「喉のイガイガや炎症で出る咳」だとすると、喘息の咳は「息の通り道が狭くなって出る咳」です。ツロブテロールテープは、後者の通り道を広げる道具なのです。
ご自宅で厳密に区別することは難しいかもしれませんが、医師はこのような点に注意し聴診しています。
では、おうちで「この咳はテープが必要かな?」と判断する際のヒントをお伝えします。
【テープを貼ることを検討してほしい咳】
【テープがほとんど必要ないと考えられる咳】
もちろん、厳密に区別することは難しいと思います。咳喘息のように、ツロブテロールテープが効果的な疾患もあります。不安なときは、必ずかかりつけの小児科にご相談くださいね。
ツロブテロールテープは、正しい使い方をすることで最大の効果を発揮します。
ツロブテロールテープは、正しく使えばお子さんのつらい呼吸を助けてくれる、とても良いお薬です。しかし、すべての咳に万能なわけではありません。
今回のブログで、「ゼーゼー、ヒューヒューという音を聞いたら、テープの出番かもしれない」と覚えていただけたら嬉しいです。
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当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)