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「赤ちゃんがベッドから落ちてしまった」
「少し目を離した隙に、ゴンッという音がして見に行ったら泣いていて頭にたんこぶができていた」
こうしたご相談、とても多く寄せられます。活発な年齢のこどもたちにとって、気をつけていても頭をぶつけることはありますよね。ですがその一方で、「脳に影響は?」「CT検査は必要?」と、不安になる親御さんも少なくありません。
今回は、「頭をぶつけた時に気をつけたいサイン」「受診の目安」「ご家庭での見守り方」など、実際の診療経験や医学的根拠(NICEガイドライン・PECARNルール)をもとに、わかりやすくお伝えします。
まずお伝えしたいのは、こどもの頭部外傷のほとんどは軽度で、命に関わることは少ないということ。
アメリカで行われたPECARN(ペカーン)スタディという大規模研究によると、軽度の頭部外傷(ぶつけた後、すぐに泣いて意識もある状態)のこどもが脳に重大な損傷を起こす確率はごくわずか。実際にCT検査が必要になるのは全体の数%程度とされています。
ただし、中にはすぐに対応が必要な「サイン」もあります。次の項目に当てはまるかを確認しましょう。
次のような症状が見られた場合は、すみやかに小児科や救急外来の受診をおすすめします。
もしくは、迷ったら受診をしてください。
けいれんを起こした
元気がなくぼーっとしている
繰り返し吐く(1回のみの嘔吐は経過観察でもOKなことも)
頭痛がどんどん強くなる
視線が合わない、目の焦点が定まらない
手足の動きがおかしい、左右差がある
耳や鼻から出血や透明な液が出ている
頭の一部がへこんでいる、腫れが急激に大きくなる
生後6か月未満の赤ちゃんでぶつけた
これらはNICE(英国国立医療技術評価機構)ガイドラインやPECARNスタディでも「CT検査の検討が必要」とされる症状です。
逆に、次のような場合は、経過をみながらご家庭で見守るという選択肢もあります。
ぶつけた直後にすぐ泣いた
意識はしっかりしていて、いつも通り遊んでいる
嘔吐は1回のみで、すぐに元気になった
眠っても起こせば反応がある
腫れやたんこぶがあるが、本人が落ち着いている
こうしたケースでは、ご家庭で24時間ほど見守ることが大切です。
以下の点を意識して、ぶつけた後24時間は注意深く見てあげましょう。
✅ いつもと比べて反応や様子がおかしくないか
✅ 繰り返し吐いたり、頭痛を訴えていないか
✅ 寝ているときに呼びかけて目を開けるか
✅ 動き方、歩き方がいつも通りか
「念のためCTを撮ってほしい」というご希望もありますが、CT検査には放射線被ばくのリスクもあります。とくに小さなお子さんは、将来の健康への影響を考慮して、本当に必要なときだけ検査することが大切です。
その判断に役立つのが、先ほどご紹介したPECARNルールやNICEガイドラインです。私たち医師は、これらの基準に加えて、お子さんの年齢や全身の状態、受傷の状況などを慎重に総合判断しています。
頭をぶつけたとき、「大丈夫かな」と不安になるのは、どの親御さんも同じです。
ポイントは、
「どんなふうに」「どのくらいの高さから」ぶつけたのか
「その後のお子さんの様子がどうか」
をよく観察し、迷ったら受診しましょう。自己判断で済ませず、まずはお気軽にご相談ください。
当院では、こどもの頭部外傷についても、ガイドラインに基づいた丁寧な診察と説明を行っています。不安なとき、迷ったときは受診してください!小さな「もしかして…」も、どうぞそのままにせずお話しください。
参考文献:
NICE guidelines: Head injury: assessment and early management (CG176)
PECARN Pediatric Head Injury/Trauma Algorithm
当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)