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小さなお子さんをお持ちのご家族の方なら、誰もが一度はわが子の顔色が悪くなってヒヤリとしたことがあるのではないでしょうか?
お子さんが大泣きした時に、急に「息を吸うのを止めてしまう」状態…。「もしかして、呼吸が止まっちゃった!?」と、慌ててしまう方もいらっしゃるかもしれませんね。
今回は、そんな驚くような現象、「憤怒けいれん(ふんぬけいれん)」「泣き入りひきつけ」について、詳しくお話ししたいと思います。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、決して珍しい病気ではありません。
憤怒けいれんは、英語で「breath-holding spell (BHS)」と言います。日本語の「憤怒」という言葉は、少し大げさに聞こえますが、要するに泣いたり、怒ったり、驚いたりした時に、お子さんの体が一時的に反応して、呼吸が止まってしまう発作のことです。
「けいれん」という言葉もついていますが、一般的にイメージされるてんかんの発作とは全く異なるものです。てんかんは脳の異常な電気信号によって起こりますが、憤怒けいれんはそうではありません。
生後6ヶ月から3歳頃の小さなお子さんによく見られ、ピークは1~2歳頃です。およそ5%の子どもに起こると言われています。
憤怒けいれんが起こるメカニズムは、主に自律神経の働きが関係していると考えられています。自律神経は、心臓の動きや呼吸、体温などを無意識のうちにコントロールしてくれる神経です。
大泣きしたり、激しく怒ったりすると、自律神経のバランスが一時的に乱れてしまいます。すると、迷走神経という神経が過剰に刺激され、その影響で心拍数がゆっくりになったり、呼吸を一時的に止めてしまったりするのです。
簡単に言うと…
このような一連の流れが、わずか数十秒から1分程度の間に起こります。
憤怒けいれんには、主に「チアノーゼ型」と「失神型(蒼白型)」の2つのタイプがあります。
このタイプは、お子さんが激しく泣いたり、怒ったりした時に起こります。
このタイプが、憤怒けいれんの中では最も一般的です。青紫色になるのは、息を止めてしまうことで一時的に体の中の酸素が少なくなるためです。
こちらは、お子さんが転倒したり、ぶつけたり、驚いたりした時に起こることが多いタイプです。
「えっ、心臓が止まる?!」と驚かれるかもしれませんが、これは迷走神経の過剰な反応によるもので、多くの場合すぐにまた動き出しますので、ご安心ください。
どちらのタイプも、発作は通常数分以内におさまります。
「うちの子が息を止めて倒れたら、どうしたらいいの?」と心配になりますよね。適切な対応を知っておくことで、いざという時にも慌てずに対処できます。
発作がおさまったら、お子さんはとても疲れて眠ってしまうことが多いです。
「大丈夫だよ、怖かったね」と優しく声をかけてあげてください。
憤怒けいれんは、ほとんどの場合、成長とともに自然におさまっていきます。小学校に入学する頃には、ほとんど見られなくなるでしょう。
お子さんへの接し方として、以下のようなことを意識してみてください。
また、当院では、憤怒けいれんの発症に鉄欠乏性貧血が関連しているというエビデンスに基づき、血液検査で貧血が見られる場合には鉄剤の投与を積極的に行っています。鉄剤を服用することで、発作の回数が減るケースが多く報告されています。
ご希望に応じて、万が一、心停止に陥った場合に備えて、一次救命処置(BLS)の指導も行っています。心臓マッサージやAEDの使用方法など、大切な家族を守るための知識を身につけることができます。
以下のような場合は、一度ご相談ください。
このようなケースでは、てんかんなどの他の病気の可能性がないかを、日本小児科学会認定小児科専門医が慎重に判断する必要があります。
特に、てんかんとの鑑別が重要になります。てんかんの場合は、発作の後に意識が回復するまでに時間がかかったり、発作中に体がピクピクと繰り返し震えるなどの特徴があります。
「憤怒けいれん」は、お子さんの成長の過程で起こる一時的な生理現象です。
発作中は誰でも驚いてしまいますが、まずはお子さんの安全を確保し、落ち着いて見守ってあげてください。
ご心配な点があれば、いつでもお気軽にご相談ください。私たち「武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科」は、お子さんの健やかな成長を、ご家族と一緒に見守っていきたいと考えています。
当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)