ブログ
Blog
Blog
今回は、赤ちゃんの健康を守るうえでとても大切な「粉ミルクの調乳方法」についてお話しします。タイトルにもあるように、実は粉ミルクって無菌じゃないんです。この事実、ご存じでしたか?
粉ミルクの原料は製造過程で高温処理されていますが、その後の乾燥や包装の過程で、「サカザキ菌(Cronobacter sakazakii)」という菌が混入することがあります。
このサカザキ菌、ふつうは健康な大人にとって問題にはなりません。でも、まだ免疫の弱い新生児や低出生体重児にとっては、重い感染症を引き起こす可能性があるんです。脳炎や敗血症、髄膜炎など、命に関わることもあるため、決して軽視できません。
厚生労働省やWHO(世界保健機関)も、サカザキ菌のリスクを減らすために、「粉ミルクは70℃以上のお湯で溶かす」よう推奨しています。
「70℃ってどうやって測るの?」と思われるかもしれませんね。
実は、いったん沸騰させたお湯(100℃)を、5~6分置いて少し冷ましたタイミングがちょうど70℃くらいになります。これを目安にすると、特別な温度計がなくても対応できます。
たしかに、多くの場合はサカザキ菌に感染することはありません。でも、まれに起きるからこそ怖いのです。
実際、日本国内でも乳児のサカザキ菌感染による死亡例が報告されています。感染はとてもまれではあるものの、「ゼロではない」ことをぜひ知っておいてください。
最近は、常温保存ができてすぐに飲ませられる「液体ミルク」も販売されていますよね。
この液体ミルクは、製造段階で完全に無菌処理(殺菌)されており、サカザキ菌が混入するリスクはありません。そのため、調乳の手間もなく、安全性が高いというメリットがあります。
災害時や外出先、夜中の授乳などでも重宝しますし、ミルク育児の選択肢としてぜひ知っておいていただきたい存在です。
粉ミルクはとても便利で栄養バランスも優れていますが、調乳方法を間違えると、思わぬリスクを招く可能性もあります。
ポイントは3つ:
👉 「粉ミルクは、70℃以上のお湯で溶かす」
👉「調乳後2時間以内に使用しなかったミルクは廃棄する」
👉「哺乳瓶・乳首などの器具は十分に消毒する」
この習慣が、赤ちゃんをサカザキ菌から守る大きな一歩になります。
もちろん、液体ミルクを使うのも安心な方法です。大切なのは、赤ちゃんにとって最も安全な方法を知り、正しく選ぶこと。
赤ちゃんの未来を守るために、今日からぜひ意識してみてくださいね。
当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)