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ヒトパピローマウイルス(HPV)は、多くの男性・女性が感染する一般的なウイルスです。
子宮頸がんの原因ウイルスであるとの認識が強いため、女性のみがかかると思っている方もいますが男性も感染します。感染しても大部分が無症状で自覚症状はなく、1年以内に70%が、2年以内に約90%が自然消失するといわれています。しかし、一部がそのままとどまり長い間排除されずに感染したままでいると、下記のような癌が発生すると考えられています。
女性 | 子宮頸がん、肛門がん、膣がん、(癌以外では)尖圭コンジローマ | 男性 | 中咽頭がん、肛門がん、陰茎がん、(癌以外では)尖圭コンジローマ |
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HPVは性的な行為でうつし合うこと、ワクチンではすでに感染しているHPVを排除できないこと、すでに進行しているHPV関連の病変を抑制する効果はないことから、日本での適応を守って、初めての性行為の前に接種することが効果的と考えられます。
そうすることにより、女性においても男性においても、上記の癌はワクチンで高い確率で予防できると考えられます。
すでにワクチン接種を導入している欧米諸国では、前がん病変(がんと診断される前の病気の状態)の発症率が抑えられています。2020年にはスウェーデンから、HPVワクチンが子宮頸がんの発症率そのものを減少させたとの報告もありました。
日本でも、2013年に定期接種ワクチンとして始まったのですが、接種後の副反応の報告(痛み、しびれ、動かしにくさなど)が続いたため、現在、積極的におすすめすることを一時中断とされています。しかし、この副反応とHPVワクチンとの因果関係は、いまだ示されておらず、世界保健機関(WHO)も「安全上の問題は見つかっていない」として接種を推奨しています。
日本において、令和5年4月より、9価ワクチン「シルガード9」も公費で接種できるようになりました。これまでガーダシルを接種した方でも異なるHPVワクチンを接種する交互接種が行えます。更には、キャッチアップ接種と呼びますが、1997年4月2日から2007年4月1日生まれまでの女性への助成も開始されています(2023年4月現在)。
この記事により、男性も女性もHPVとHPVワクチンに対する理解が深くなり、ひいては上記のような癌のリスクが低下・排除されることを願っております。
当院では、HPVワクチン接種の際に痛みに配慮し、接種前に鎮痛作用のあるテープを貼る対応も行っています。お問合せや接種のご希望がありましたら、当院までお電話(044-739-0888)ください。
ガーダシル® | シルガード9® | |
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接種対象者 | 9歳以上の女性 9歳以上の男性 |
9歳以上の女性のみ |
公費の適応 | ◎小学校6年生相当~高校1年生相当の女子 ◎平成9年度から平成18年度生まれの女性で過去にHPVワクチンを3回接種していない方 ◎上記以外の年齢の女性は自費接種 ◎自費接種を希望する男性 |
◎小学校6年生相当~高校1年生相当の女子 ◎平成9年度から平成18年度生まれの女性で過去にHPVワクチンを3回接種していない方 ◎上記以外の年齢の女性は自費接種 |
接種方法 | 筋肉内注射 | 筋肉内注射 |
接種回数 | 3回 | 15歳未満:2回 ※1回目もしくは2回目をガーダシルで接種されている方は全3回接種 15歳以上:3回 |
対応するHPV型 | 6、11、16、18型 | 6、11、16、18、31、33、45、52、58型 |
費用 | (公費)無料 (自費)20,400円/回 |
(公費)無料 (自費)38,500円/回 |
起こりうる副反応 | 10%以上 注射部位の疼痛、腫脹、発赤など 1~10% 発熱、掻痒感など 1%未満 硬結、出血、下痢、四肢痛など 頻度不明 関節痛、筋肉痛、疲労感など |
10%以上 疼痛、腫脹、発赤など 1~10% 発熱、掻痒感、出血など 1%未満 腹痛、下痢など 頻度不明 倦怠感、疲労、失神など |