お子さんが突然吐いてしまうと、「いきなり急に?」「何か悪い病気なの?」と不安でいっぱいになるお気持ち、よくわかります。私も4児の父なので、特に夜に我が子が吐いた時の焦りは今でも鮮明に覚えています。
このブログでは、お子さんの嘔吐について、お家でできるケアや、病院を受診する目安、そして考えられる病気について、日本小児科学会認定小児科専門医の立場から分かりやすくお伝えします。
なぜ吐いちゃうの?こどもの嘔吐の原因
お子さんが吐く原因は様々ですが、代表的なものをご紹介します。
- 感染症(ウイルス性胃腸炎など): こどもの嘔吐で最も多い原因です。ノロウイルスやロタウイルスなどが原因で、お腹の風邪とも言われます。吐き気だけでなく、下痢や発熱を伴うことも多いです。
- 具体例: 「昨日まで元気だったのに、急に何度も吐き出して、その後水のような下痢も始まった」といった場合は、ウイルス性胃腸炎の可能性が高いです。
- 食べ過ぎ、飲み過ぎ: 特に小さなお子さんは、一度にたくさんの量を食べたり飲んだりすると、胃がびっくりして吐いてしまうことがあります。
- 具体例: 「お誕生日会でケーキをたくさん食べた後、興奮して走り回っていたら、急に吐いちゃった」というようなケースです。
- 食中毒: 傷んだ食べ物を食べたり、菌に汚染された食べ物を食べたりすると、嘔吐や下痢、発熱などの症状が出ます。
- 具体例: 「バーベキューで生焼けのお肉を食べた後、家族みんなで吐き気と下痢が始まった」というような場合は注意が必要です。
- 乗り物酔い: 車や電車、船などの揺れで気分が悪くなり、吐いてしまうことがあります。
- 具体例: 「長距離のドライブ中、シートに座ったまま顔色が悪くなり、途中で吐いてしまった」という場合です。
- その他(緊急性の高い疾患も!):
- 腸重積(ちょうじゅうせき): 腸の一部が別の部分にはまり込んでしまう病気で、激しい腹痛を伴い、イチゴジャムのような血便が出ることもあります。特に乳幼児に多く、緊急の手術が必要になることがあります。
- 急性虫垂炎(きゅうせいちゅうすいえん): いわゆる「盲腸」。最初はみぞおちのあたりが痛くなり、徐々に右下腹部に痛みが移動していきます。嘔吐や発熱を伴うことも多いです。
- 頭の病気: 脳炎や髄膜炎、頭部外傷など、頭の病気が原因で嘔吐が起きることもあります。特に、頭を強く打った後に吐いたり、意識がはっきりしない場合は緊急性が高いです。
- 代謝性疾患: 体の中で特定の物質をうまく処理できない病気で、嘔吐を繰り返すことがあります。
- 中毒: 誤って薬や洗剤などを口にしてしまった場合も、嘔吐を引き起こすことがあります。
お家でできるケアのポイント
お子さんが吐いてしまった時、まずは落ち着いて、特に夜などの病院がすぐに受診しずらい場合はお家でできるケアを試してみましょう。
- 吐いたものを片付ける: 吐いたものが喉に詰まらないよう、顔を横に向けてあげてください。汚れた服は着替えさせ、吐いたものはすぐに片付けましょう。
- 水分補給をしっかりと: 嘔吐で一番心配なのは「脱水」です。最後の嘔吐から1-2時間経過して吐き気が落ち着いてきたら、少しずつ水分を与えましょう。
- ポイント:
- OS-1などの経口補水液が一番おすすめです。薬局で購入できます。
- もし経口補水液がなければ、番茶や麦茶、薄めたリンゴジュースでも構いません。スポーツドリンクであれば、あまり冷えていないハイポトニック飲料(糖分を調整し体液より低い浸透圧に設定している飲料・例:アミノバリュー®(大塚製薬)、キリンラブズスポーツ®(キリン)、イオンウォーター®(大塚製薬)など)が良いでしょう。
- ごく少量(スプーン1杯程度)から始め、5分〜10分おきに様子を見ながら与えましょう。一気にたくさん与えると、また吐いてしまうことがあります。
- 飲ませた後、30分程度吐かなければ、少し量を増やしてみる、というのを繰り返します。
- 食事は無理せず: 吐き気が強い時は、無理に食事を与えないでください。水分がしっかり摂れていれば、1食〜2食抜いても大丈夫です。
- 吐き気が落ち着いてきたら: 消化の良いものから始めましょう。
- おかゆ、うどん、食パン、豆腐、柔らかく煮た野菜、すりおろしリンゴなどがおすすめです。
- 油っこいもの、乳製品、柑橘系のジュースは避けてください。
- 体を休ませる: 吐き気があると体力も消耗します。横になってゆっくり休ませてあげましょう。
- 吐き気止めは慎重に: 自己判断で市販の吐き気止めを使用するのは避けましょう。特に乳幼児は、大な疾患が隠れている場合があり、吐き気止めが症状を軽くすること病気の発見を遅らせることがあります。必ず医師の指示に従ってください。

こんな時はすぐに病院へ!受診の目安
お子さんの状態をよく観察し、以下のような場合はすぐに医療機関を受診しましょう。
- ぐったりして元気がない、呼びかけに反応しない
- 何度も吐き続け、水分が全く摂れない
- おしっこが半日以上出ていない、または量が極端に少ない
- 激しい腹痛があり、痛がって泣き続ける
- 血を吐いた(鮮やかな赤や茶色っぽいもの)
- イチゴジャムのような便が出た
- 頭を強く打った後に吐いた
- けいれんを起こした
- 顔色が真っ青、唇が紫色になっている
- 高熱が続き、水分もとれない
上記以外でも、「いつもと様子が違う」「なんとなく心配」と感じたら、迷わず医療機関を受診してください。夜間や休日で心配な場合は、地域の夜間・休日診療所や救急外来を利用しましょう。
まとめ
お子さんの嘔吐は、親御さんにとって非常に心配な症状です。しかし、多くはウイルス性の胃腸炎で、お家での適切なケアで乗り切ることができます。大切なのは、焦らずに落ち着いてお子さんの状態を観察し、適切な水分補給をすること、そして、緊急性の高いサインを見逃さないことです。
当クリニックでは、お子さんの嘔吐でお困りの際には、いつでもご相談に乗らせていただきます。心配なことがあれば、一人で抱え込まずに、お気軽にご連絡ください。お子さんとご家族が安心して過ごせるよう、私たちが全力でサポートいたします。

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川崎市中原区
アクセス:武蔵小杉、新丸子、元住吉、武蔵中原、日吉
武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科
院長 大熊 喜彰