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「きのうまであんなに元気だったのに、急に吐いてしまった…」
「下痢が続いて、おしりがかぶれてかわいそう…」
お子さんの突然の嘔吐や下痢。どうしてあげたらいいのか、病院に連れて行くべきか、不安でいっぱいになることと思います。
今回はこどもの「胃腸炎(感染性胃腸炎)」について、ご家庭でできる具体的な看護(ホームケア)の方法から、受診のタイミングまで、日本小児科学会認定小児科専門医の視点から詳しく、そして分かりやすく解説していきます。
Geminiで作画
まず、胃腸炎についてお話ししましょう。 こどもが罹る胃腸炎のそのほとんどは、「ウイルス」が原因です。よく耳にするノロウイルスやロタウイルス、冬場に風邪症状と共に見られるアデノウイルスなどが代表的なものです。これらのウイルスが、口から体の中に入り、胃や腸の粘膜で増殖して炎症を起こすことで、嘔吐や下痢といった症状を引き起こします。
特に空気が乾燥する秋の終わりから冬にかけて大流行しますが、ウイルスは一年中存在するため、夏場でもかかることは珍しくありません。
細菌性の胃腸炎(O-157など)もありますが、頻度としてはウイルス性が圧倒的に多いのが特徴です。
胃腸炎の症状は突然やってきます。
腹痛を伴うことも多く、「おなかがいたい」と泣いたり、不機嫌になったりします。 この経過はあくまで典型例です。下痢だけのこともあれば、嘔吐だけのこともあり、お子さんによって症状の出方は様々です。
胃腸炎の診療で、私たちが最も警戒するのは「脱水症」です。 嘔吐や下痢によって、体の中から水分と、生きていくために不可欠な塩分やカリウムなどの「電解質(でんかいしつ)」が大量に失われてしまう状態です。
特に体の小さい赤ちゃんやこどもは、もともと体内の水分量が多く、あっという間に脱水が進んでしまうことがあります。
ご家庭で注意深く観察していただくために、脱水症のサインをリストアップしました。一つでも当てはまれば要注意、複数当てはまる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
【脱水症のサイン・チェックリスト】
「いつもと何か違う」「とにかく元気がない」。そんな親御さんの直感はとても大切です。
胃腸炎には特効薬がありません。ウイルスを自分の力でやっつけるしかないのです。だからこそ、お子さんの体がウイルスと戦うのを助けてあげる「ホームケア」が何よりも重要になります。
ポイントは3つです。
脱水を防ぐための水分補給が、ケアの最重要ポイントです。 しかし、焦ってゴクゴク飲ませてしまうと、胃がびっくりしてまた吐いてしまう原因になります。
この「少量頻回」が、胃を刺激せずに水分を吸収させるための最大のコツです。
食欲がない時に、無理に食べさせる必要は全くありません。こどもは数日食べなくても、水分さえ摂れていれば大丈夫です。
普段の食事に戻すのは、便の状態が少しずつ固形に近づいてきてから。焦らず、ゆっくり進めていきましょう。
「下痢がかわいそうだから、薬で止めてあげたい」と思うのが親心ですよね。 しかし、自己判断で市販の下痢止めを使うのは絶対にやめましょう。
下痢は、体の中のウイルスや毒素を外に排出しようとする体の防御反応です。薬で無理に止めてしまうと、ウイルスが腸内にとどまり、かえって回復を遅らせてしまうことがあるのです。 病院では、お腹の調子を整える「整腸剤」を処方することがほとんどです。
ほとんどの胃腸炎は、適切なホームケアで自然に回復していきます。しかし、中には緊急を要するケースや、別の病気が隠れている可能性もあります。以下のような症状が見られたら、夜間や休日であっても、すぐに医療機関を受診してください。
判断に迷った場合は、ためらわずに「#8000(こども医療でんわ相談)」に電話したり、かかりつけ医に相談したりしてください。
胃腸炎は感染力が非常に強いのが特徴です。看病しているご家族が倒れてしまっては元も子もありません。
登園・登校の目安は、「嘔吐と下痢の症状がなくなり、普段通りの食事がとれて、元気に過ごせるようになってから」です。 下痢が完全に止まるまでには時間がかかることもありますが、便の状態がある程度固形に戻っていれば、登園・登校を再開しても良いでしょう。ただし、園や学校によっては独自の基準がある場合もあるので、必ず確認してください。
こどもの胃腸炎は、お子さん本人も辛いですが、そばで見守る親御さんも本当に大変です。でも、こどもは強い回復力を持っています。
当院、「武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科」では、エビデンスを大切にしながらも、ご家族の不安に優しく寄り添う診療を心がけています。「これでいいのかな?」「こんな時どうしたら?」と少しでも不安に感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。
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当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)