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お子さんの成長は、親にとっておおきな喜びですね。しかし、時に心配の種でもあります。特に「これって普通なのかな?」「うちの子、ちょっと早いような…」と感じるような体の変化があると、どうしたら良いか悩んでしまうこともあるでしょう。今回は、そんなお子さんの成長に関するご心配の一つ、「思春期早発症」について、日本小児科学会認定小児科専門医の立場から詳しくお話しさせていただきます。
まず、思春期とは一体いつから始まるものなのでしょうか?一般的に、思春期は性ホルモンの分泌が活発になり、体が大人の体へと変化していく時期を指します。
女の子の場合は、乳房の発育(胸の膨らみ)が最初のサインとして現れることが多く、平均的には9歳頃から始まります。その後、陰毛やわき毛が生え、最終的に月経が始まります。
男の子の場合は、睾丸(精巣)の増大が最初のサインで、平均的には10歳半頃から始まります。その後、陰毛、わき毛、陰茎の増大、声変わり、ひげが生えるなどの変化が見られます。
もちろん、お子さん一人ひとりの成長のスピードは異なります。多少の個人差はあって当然です。
では、「思春期早発症」とはどのような状態を指すのでしょうか?
思春期早発症とは、通常よりも早い年齢で思春期の体の変化が始まる病気のことです。
具体的には、
といった基準があります。
「うちの子、まだ小学校に入ったばかりなのに胸が膨らんできた」「周りの子よりずいぶん早く、陰毛が生えてきた気がする」など、もしこのようなサインに気づいたら、思春期早発症の可能性も考えてみる必要があります。
「思春期が早く来るだけなら、別にいいんじゃない?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、思春期早発症は、お子さんの成長と将来にいくつかの影響を与える可能性があります。
思春期早発症には、大きく分けて2つのタイプがあります。
これは、思春期をコントロールしている脳の司令塔である視床下部(ししょうかぶ)や下垂体(かすいたい)という部分が、何らかの原因で早くから活動を始めてしまうことで起こります。女の子に多く見られ、約9割が原因不明ですが、ごく稀に脳腫瘍などが原因で起こることもあります。男の子の場合は、脳腫瘍など、何らかの病気が隠れている可能性が女の子よりも高いと言われています。
こちらは、脳の司令塔とは関係なく、卵巣や精巣、副腎などの性腺や、一部の腫瘍などから性ホルモンが過剰に分泌されることで思春期のサインが現れるタイプです。この場合も、原因となる病気を特定し、治療することが重要です。
お子さんの体の変化に「あれ?」と感じたら、まずは当院にご相談ください。
当院では、お子さんの成長について気になることがあれば、いつでもご相談いただける体制を整えています。特に、思春期早発症が疑われる場合には、日本内分泌学会内分泌代謝科専門医(小児)が拝見することも可能です。専門的な知識と経験を持つ医師が、お子さん一人ひとりの状態を丁寧に診察し、適切なアドバイスや治療方針をご提案いたします。
診察では、以下のようなことを行います。
これらの検査結果をもとに、思春期早発症であるかどうか、そしてそのタイプや原因を診断します。
思春期早発症と診断された場合、治療の主な目的は、「患者本人の精神的な負担を軽くするためにはやすぎる思春期の進行を止めること」です。
中枢性思春期早発症の場合、GnRHアナログ製剤というお薬を使った治療が一般的です。このお薬は、脳の司令塔からの性ホルモン分泌を抑えることで、思春期の進行を一時的にストップさせます。月に1回の注射を、思春期が開始して良い年齢になるまで続けます。治療によって、性的な発達は止まり、骨年齢の進行も緩やかになりますが、最終到達身長には大きな影響がないことも言われています。
末梢性思春期早発症の場合は、その原因となっている病気を治療することが優先されます。
治療の開始時期や期間、お子さんへの影響などを総合的に判断し、ご家族と十分に話し合いながら、最適な治療方針を決めていきます。
親御さんからよくいただくご質問にお答えします。
A1: 思春期早発症は、必ずしも遺伝するものではありません。多くは原因不明で発症しますが、ご家族に思春期早発症の方がいる場合や、思春期が早かった方がいる場合は、お子さんも思春期が早めに始まる傾向があるかもしれません。しかし、遺伝するからといって必ず発症するわけではありませんし、そうでないお子さんでも発症することはあります。
A2: 主な治療薬であるGnRHアナログ製剤は注射薬ですので、注射の際にチクッとした痛みはあります。しかし、お子さんが怖がらないように、できるだけ優しく、スピーディーに行うよう心がけています。副作用については、治療開始初期に一時的に不正出血が見られたり、頭痛や吐き気が起こることが稀にありますが、多くは軽度で自然に治まります。長期的な副作用は少ないとされていますが、定期的な診察で経過を慎重に見ていきますのでご安心ください。
A3: 治療期間は、お子さんの状態や思春期の進行度合いなどによって異なります。一般的には、自然な思春期が始まる年齢(女の子で11歳前後、男の子で12歳前後)まで治療を継続することが多いです。医師と相談しながら、お子さんにとって最適な治療終了時期を決めていきます。
A4: 特定の食べ物や運動が思春期早発症を直接引き起こしたり、予防したりするという明確な科学的根拠は現在のところありません。しかし、バランスの取れた食事や適度な運動は、お子さんの健やかな成長にとって非常に大切です。規則正しい生活を送り、肥満にならないように心がけることは、性ホルモンの過剰な刺激を避ける意味でも重要だと言われています。
お子さんの成長は、本当にあっという間です。特に体の変化は、親御さんにとって戸惑いや不安を感じることも少なくないでしょう。もし、お子さんの思春期が周りの子よりも早く始まったように感じたら、「気のせいかな?」と一人で悩まず、どうぞお気軽にご相談ください。
「武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科」では、「家族とともに未来を担うこども達の健やかな成長と幸せを目指します」という理念のもと、お子さん一人ひとりの成長に寄り添い、最善の医療を提供できるよう努めています。日本内分泌学会内分泌代謝科専門医(小児)も在籍しており、専門的な知見から、お子さんとご家族にとって最適なサポートをさせていただきます。
<参考>
日本小児内分泌学会「思春期早発症」
当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)