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子育てをしている中で、赤ちゃんが泣き止まないとき、「抱っこ」を求めているのを感じる瞬間は、誰しも経験することだとおもいます。
この「抱っこ」という行為について、私たち小児科医のもとには、今でも様々な質問や不安の声が寄せられます。特に、「抱き癖がつくのが心配」というお声は、年代を問わず、多く聞かれます。
結論からお伝えします。安心して、迷わず抱っこしてあげてください!
この記事では、抱っこに関する昔の考え方と、現在の常識を徹底解説します。お子さんの自己肯定感や信頼感といった「生きる力」を育む抱っこの極意を、日本小児科学会認定小児科専門医の視点から深く掘り下げていきましょう。
まず、私たちが抱っこに対して漠然とした不安を感じてしまう背景には、過去の育児観が少なからず影響していると考えられます。
かつて、育児書や祖父母世代からのアドバイスとして、「抱き癖がつくから、泣いてもすぐに抱っこするのは控えた方がよい」という考え方が強くありました。
さらに、「しっかり泣かせることで肺が鍛えられ、強くなる」といった、現在では驚かれるような説もまことしやかに語られていたのです。
しかし、これらの考えは、現在の発達心理学や小児科学の視点からは、科学的な根拠に乏しいものとされています。
現代の小児科医療、そして多くの育児専門家が推奨するのは、「泣いている赤ちゃんには、積極的に抱っこして応答してあげること」です。
赤ちゃんが泣くのは、お腹が空いた、オムツが汚れた、眠い、不安だ、といった様々な「不快」を伝える唯一の手段です。言葉を持たない赤ちゃんにとって、「泣き」は精一杯のコミュニケーション。親御さんがそのサインをキャッチし、温かい抱っこで応えてあげることは、単に泣き止ませる行為以上の大きな意味を持つのです。
「泣いたらママやパパが必ず助けてくれる」という体験を通じて、赤ちゃんの心の中には、世界に対する根本的な信頼感が築き上げられます。この「自分が大切にされている」という感覚こそが、将来にわたる高い自己肯定感の土台となり、精神的な安定につながっていくのです。
つまり、抱き癖を恐れて抱っこを控える必要は全くありません。赤ちゃんの脳と心は、抱っこによって安心という最高の栄養を受け取っているのです。
「抱き癖を気にしなくていい」と分かっても、どんな抱っこをしたらいいのか、迷うこともあるでしょう。ここでは、抱っこの「質」を高め、お子さんの健やかな発達を促すための具体的なコツをお伝えします。
前述の通り、赤ちゃんは泣くことで「助け」を求めています。生後数ヶ月の赤ちゃんは、「甘え」で泣いているわけではなく、生命維持に関わる不快や不安を訴えているのです。
<ポイント>
泣き始めたら、まずは声かけや接触を試み、できる限り早く抱き上げてあげましょう。この素早い応答が、「自分の要求は通じる」「世界は安全だ」という強いメッセージとして赤ちゃんに伝わります。
抱っこは、単に体を持ち上げることではありません。肌と肌の温かさが触れ合う「スキンシップ」であることを意識しましょう。
<具体的な方法>
抱っこしている時間は、赤ちゃんとの一対一の濃密なコミュニケーションの時間です。
<具体的な方法>
常に抱っこし続けるのは、親御さんの身体的な負担も大きくなります。
<活用術>
「いつまで抱っこしてあげればいいのだろう?」という疑問もよく聞かれます。
「抱っこ卒業」に明確な時期や期限はありません。
抱っこは赤ちゃんの要求に応えることから始まりますが、成長するにつれて、それは「心の栄養」へと変化していきます。多くのお子さんは、1歳半から2歳頃にかけて、自分で歩くことや遊ぶことへの興味が増し、自然と抱っこを求める頻度が減ってきます。これが、お子さん自身が示してくれる「心の準備ができた」というサインです。
抱っこは、時に重労働です。特に睡眠不足の中で、泣き続ける赤ちゃんを抱っこし続けるのは、心身ともに大変なことです。
親御さんがつらいと感じたときは、遠慮なく頼ってください。
抱っこは、お子さんとの最高の対話であり、無条件の愛を伝える行為です。「抱き癖」を恐れる時代は終わりました。
この記事が、親御さんの「抱っこ」に対する不安を解消し、より自信を持って子育てに向き合う一助となれば幸いです。
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当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)