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「花粉症」をお持ちのお子さんは多いと思います。花粉症がある場合、いつからか「ある食べ物を食べたときに口の中がかゆくなる」という子が増えることをご存じでしょうか?
それ、「花粉-食物アレルギー症候群(PFAS:Pollen-Food Allergy Syndrome)」と呼ばれる症状かもしれません。口の中のかゆみなど口腔内の症状のみのことが多いので「口腔アレルギー症候群(OAS: Oral Allergy Syndrome)」と呼ばれることもあります。
当院のアレルギー専門外来でも、「フルーツを食べたら口がイガイガする」「喉がムズムズして咳が出た」といった相談はおおいです。今回は、親御さんが知っておきたい花粉と食べ物の不思議な関係について、分かりやすくご紹介します。
花粉症の原因となる花粉に含まれる「たんぱく質」と、果物や野菜に含まれる「たんぱく質」がとてもよく似ている場合があります。
体が花粉にアレルギーをもっていると、「似た構造の食べ物」にまで反応してしまうことがあり、それが花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)です。
とくに、シラカバ・ハンノキ・スギ・ヨモギ・ブタクサなどの花粉症を持つ方に見られやすく、花粉が飛ぶ時期になると症状が悪化しやすいのが特徴です。
PFASの症状は、食べてすぐ(多くは数分以内)に起こるのが特徴です。
口の中や唇、喉のイガイガ・かゆみ
舌や口唇の腫れ
喉の違和感や軽い咳
まれに、じんましんや腹痛・吐き気・呼吸苦など全身症状も
特にこどもは自分の症状をうまく言葉にできないこともあるので、「この食べ物を食べたあと、なんだかモゾモゾしてる」「口をもぞもぞさせている」など、ちょっとした仕草にも注意が必要です。
以下の表に、花粉と関連する食べ物をまとめました。お子さんがどの花粉にアレルギーを持っているかによって、注意すべき食べ物が違います。
花粉の種類 | 関連する食べ物例 |
---|---|
シラカバ・ハンノキ | りんご、なし、もも、さくらんぼ、いちご、キウイ、にんじん、セロリ、じゃがいも |
スギ・ヒノキ | トマト、ナス科の野菜 |
ヨモギ | セロリ、にんじん、マンゴー、ピーマン |
ブタクサ | メロン、スイカ、バナナ、ズッキーニ |
イネ科花粉 | トマト、メロン、スイカ、じゃがいも |
実は、加熱をするとアレルゲン性が弱まることが多く、加熱された果物や野菜なら症状が出にくいことがあります。
たとえば、
生のりんごで口がかゆくなるけど、アップルパイは大丈夫
生のトマトはダメだけど、トマトソースのパスタは平気
というケースがよく見られます。ジュースやピューレも、加熱処理されていれば症状が出ないことも多いです。
花粉症がある
生の特定の果物や野菜を食べたあとに症状が出る
加熱すれば食べられることが多い
こういった特徴が当てはまるようであれば、花粉-食物アレルギー症候群の可能性があります。
特に症状が強い場合や、食物アレルギーが他にもある場合は、相談してください。血液検査や皮膚テスト、食物負荷試験で原因の特定をすすめることもできます。
花粉症の治療をしっかり行う(抗ヒスタミン薬など)
花粉の多い季節には、関連する食べ物を避ける
食べ物の症状を記録しておく
エピペンの携帯(必要と判断された場合)
花粉症と果物アレルギー、一見まったく関係ないように見えますが、実は深くつながっているんですね。
「好きだったフルーツで、突然かゆくなった」と戸惑うお子さんも多いですが、原因がわかれば安心して対処できます。大切なのは、「どうしてそうなるのか?」を親御さんが知っておくこと。
「くちがかゆい」「なんか変」とお子さんが言ったら、それは体からの大事なサインかもしれません。
気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)