ブログ
Blog
Blog
アレルギーを持つお子さんを育てるご家庭にとって、アナフィラキシーへの備えは何よりも大切です。
アレルゲンをうっかり口にしてしまったとき、命を守るための「最後の砦」となるのがアドレナリンの投与。
これまでのアドレナリンは「エピペン®」に代表される自己注射タイプが主流でしたが、
現在、鼻から噴霧するだけで使用できる新しいアドレナリン製剤の開発が進んでおり、注目が集まっています。
もしこの経鼻噴霧式が一般化すれば、保護者の不安や子どもの恐怖感を大きく軽減できるかもしれません。
本日は、話題の経鼻噴霧式アドレナリンについて詳しくご紹介します。
アナフィラキシーとは、アレルゲンが体内に入ったことで急激に起こる重篤なアレルギー反応です。
皮膚症状:じんましん、かゆみ、赤み
呼吸器症状:息苦しさ、咳、のどの腫れ
消化器症状:腹痛、嘔吐
循環器症状:血圧低下、意識障害
特に食物アレルギーによるアナフィラキシーは、小児期に多く見られ、
命を守るためには【 早期のアドレナリン投与 】が極めて重要です。
日本で承認されているアナフィラキシー時の治療薬は、自己注射型アドレナリン製剤「エピペン®」のみです。
しかし、実際の現場では次のような課題が見られます:
注射への恐怖感やためらい
保護者が使用方法に不安を感じる
誤使用のリスク
携帯・保管が煩雑の問題
こうした「使いにくさ」から、アドレナリンを打つべきタイミングを逃してしまうケースも少なくありません。
現在、日本国内でも、アドレナリンを鼻から吸入できる経鼻噴霧式製剤の開発が進んでいます。
2024年には国立病院機構相模原病院などで、臨床試験が開始されました。
この薬は、注射ではなく、鼻腔内にアドレナリンを噴霧することで吸収させる新しい投与法です。
米国でも、アドレナリン経鼻製剤の開発が複数進んでおり、将来的には注射に代わる“次世代のアナフィラキシー治療薬”になる可能性があります。
「打つのが怖い」「子どもが暴れてしまう」などの不安が解消されます。
鼻からの投与は直感的で、保護者や学校関係者でも使いやすくなります。
「キャップを外す → 鼻にあてて噴霧する」だけの簡単な操作。
パニックの中でも正確に使える設計が可能です。
注射器よりコンパクトな形状にすれば、携帯性も高まり、持ち忘れや破損のリスクも減少。
「ためらってしまって使えなかった」を防ぎ、命を守るための一手が打ちやすくなります。
たとえば、アレルギーを持つお子さんが、外食先で誤ってアレルゲンを摂取してしまったとき。
保護者がエピペンを使うことに躊躇した結果、症状が進行することも少なくありません。
経鼻噴霧式なら、注射針を出す必要もなく、パッと取り出してシュッと使える。
学校や保育施設でも職員が扱いやすくなり、現場での迅速な対応が現実的になります。
経鼻噴霧式アドレナリンは、まだ日本では承認されていません。
しかし現在、国内での臨床試験が進んでおり、将来的な実用化・保険適用が期待されています。
同時に、以下のような体制整備も重要になります:
保護者や教育機関への正しい使い方の周知
医療者による研修や啓発活動
法制度や学校での導入準備
経鼻噴霧式アドレナリンは、注射に代わる可能性を秘めた新しいアナフィラキシー治療薬。
使いやすさ・持ちやすさ・ためらいの少なさから、より多くの命を救う可能性があります。
今後の開発と承認に大きな期待が寄せられています。
当院でも、アレルギーを持つお子さんとそのご家族への支援と情報提供を行っております。
気になることがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。
アレルギー専門外来のご予約はお電話(044-739-0888)で承っております。
急なアレルギー反応で診察が必要な場合もお電話ください。
当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)