「お腹が痛いー!」
突然、お子さんがお腹の痛みを訴えてきたら、お父さん、お母さんは心配になりますよね。
「風邪かな?」「食べすぎ?」
そう考えて様子を見ていたら、実は緊急性の高い病気だった、なんてことになったら大変です。でも、病院に連れていくべきか、それとも家で様子を見ても大丈夫なのか、その見極めは本当に難しいものです。
子どもの腹痛は、年齢や症状によってその原因が大きく異なります。今回は、日本小児科学会認定小児科専門医が、子どもの腹痛について、年齢別に考えられる病気や、受診の目安、そして当院での検査について、わかりやすくお話しします。

子どもの腹痛でよくある原因と見極めのポイント
子どもの腹痛で圧倒的に多いのは、便秘症と感染性胃腸炎です。これらの多くは、適切な対処で改善します。しかし、中には緊急で治療が必要な病気が隠れていることもあります。
一番大切なのは、お子さんの様子を注意深く観察することです。
- 痛みの強さ・場所
激しく泣き叫んでいるか? 痛がる場所はどこか?
- 痛みの変化
痛みがだんだん強くなっているか? 痛くなったり治まったりを繰り返しているか?
- その他の症状
発熱、嘔吐、下痢、血便はあるか?
- 元気・食欲
顔色はどうか? いつも通り遊べるか? 食欲はあるか?
これらをメモしておくと、お医者さんに状況を伝える際にとても役立ちます。
【年齢別】こどもの腹痛で考えられる病気
お子さんの年齢によって、お腹の痛みの原因は大きく変わります。成長段階ごとに見ていきましょう。
乳児(0歳〜1歳半頃)
まだ言葉で痛みを伝えられない乳児の場合、腹痛のサインは「激しい泣き方」や「不機嫌」として現れます。
- 腸重積(ちょうじゅうせき)
「腸の中に腸が入り込んでしまう」という、緊急性の高い病気です。生後6ヶ月から2歳頃に多く見られます。10〜20分おきに激しく泣いたり、機嫌がよくなったりを繰り返すのが特徴です。イチゴゼリーのような血の混じった便が出ることがあります。様子を見ずに、すぐに医療機関を受診してください。
- 便秘症
便が出にくかったり、硬い便を出すときに痛みを伴ったりします。お腹が張っているように見えたり、食欲が落ちたりすることもあります。
- 肥厚性幽門狭窄症(ひこうせいゆうもんきょうさくしょう)
生後2週間〜2ヶ月頃の赤ちゃんに見られる病気です。ミルクを飲むたびに噴水のように激しく嘔吐するのが特徴です。胃の出口の筋肉が厚くなり、ミルクが腸へ流れにくくなることが原因です。
- 胃軸捻転(いじくねんてん)
お腹の中で胃がねじれてしまう疾患です。嘔吐をしたり、治ったりを繰り返します。
- 精巣捻転(せいそうねんてん)
陰嚢内で精巣に繋がる精索がねじれてしまい、精巣に血液が行かなくなってしまう病気です。新生児期と思春期にみられます。男児がお腹が痛い場合は、ちんちんの確認も必要という事です。
幼児(1歳半〜学童前)
少しずつ言葉で「お腹が痛い」と伝えられるようになりますが、まだ正確に痛みの場所を言えないことも多い時期です。
- 感染性胃腸炎
ウイルスや細菌が原因で、腹痛だけでなく、嘔吐や下痢、発熱を伴います。この時期の腹痛で最も多い原因の一つです。水分をこまめに摂ることが大切です。
- 急性虫垂炎(きゅうせいちゅうすいえん)
いわゆる「もうちょう」です。幼児では珍しいですが、発症することがあります。典型的な症状は、へその周りから始まった痛みが、徐々に右下腹部へ移動することです。吐き気や発熱を伴うこともあります。幼児期では症状がはっきりしないことが多く、診断が遅れると腹膜炎に進行する危険性があるため、注意が必要です。
- 便秘症
この年齢でも、やはり便秘は多いです。排便時の痛みや、便秘による腹痛で元気がない、ということもよくあります。
- 水腎症
尿管など尿が流れる管のどこかに狭い部分があり、その上流が腫れてしまう病態です。腎臓の疾患でも腹痛を認めることがあります。
学童
自分の症状を詳しく説明できるため、腹痛の原因を特定しやすくなります。この時期は、便秘や胃腸炎に加え、精神的なストレスが原因となる腹痛も増えてきます。
- 便秘症
最も多い腹痛の原因です。便が溜まってくると、痛みを訴えるようになります。
- 感染性胃腸炎
ウイルスや細菌による胃腸炎は、年齢を問わずよく見られます。
- 機能性腹痛(しんいんせいふくつう)
「心因性腹痛」とも呼ばれ、ストレスや不安が原因で腹痛が繰り返し起こるものです。特に、朝の登校前や、運動会などのイベント前にお腹が痛くなる、といった特徴があります。ただし、安易に「心因性」と決めつけず、まずは他の病気がないかをきちんと調べる必要があります。
- 急性虫垂炎
小学生に多く見られる病気です。初期はみぞおちやへその周りが痛むことが多いのですが、時間とともに右下腹部の痛みが強くなります。
- 胃炎・胃潰瘍
ストレスや食生活の乱れから、胃に炎症が起こることがあります。みぞおちの痛みを訴えることが多いです。
- 精巣捻転(せいそうねんてん)
陰嚢内で精巣に繋がる精索がねじれてしまい、精巣に血液が行かなくなってしまう病気です。新生児期と思春期にみられます。
- 起立性調節障害
起立性調節障害でも臍周りの挿し込むような痛みを認めることがあります。
- 片頭痛
片頭痛の随伴症状として腹痛を認めることがあります。
当院の「腹部超音波(エコー)検査」が、子どものお腹に優しい理由
お子さんが腹痛を訴えて来院された際、当院では院長が腹部超音波(エコー)検査を積極的に行っています。これは、当院の強みでもあり、お子さんを第一に考えた診療スタイルの一つです。
腹部超音波検査は、超音波の跳ね返りを画像化する検査です。レントゲン検査のように放射線被ばくの心配が全くないため、成長期のお子さんにも安心して受けていただけます。
この検査は、単なる「お腹の状態を見る」だけではありません。
- 便秘の診断
お腹にどれくらいの便が溜まっているかを直接目で見て確認できます。無駄な浣腸を避け、適切な治療につなげることができます。
- 腸重積の確定診断
腸が入り込んでいる様子をリアルタイムで画像化でき、腸重積の確定診断に非常に有効です。
- 急性虫垂炎の評価
虫垂が腫れているかどうか、周囲に炎症が広がっていないかなどを確認できます。
- 腎臓や膀胱のチェック
腹痛の原因が、尿路感染症や水腎症といったお腹の臓器以外にある場合も、この検査で詳しく調べることができます。
当院の院長は、この腹部超音波検査の専門知識と豊富な経験を持っており、最新の超音波機器を用いてお子さんの体をじっくりと診察します。お子さんに「ちょっと冷たいゼリーを塗るだけだよ」「テレビみたいに映るから見てみようね」と声をかけながら、怖がらないように優しく検査を進めます。Youtubeなどの動画を見ながら検査することも可能です。
もしもの時に備えて、頼れるかかりつけ医を
子どもの腹痛は、比較的軽症のものから、夜でもすぐに病院へ行くべきものまで様々です。
「いつもと違う」と感じたら、まずはかかりつけの小児科に相談してください。お腹の痛みの様子、嘔吐や下痢の回数、顔色、食欲など、日頃のお子さんの様子を知っているお父さんお母さんの「気づき」が、早期発見・早期治療につながる重要な手がかりになります。
当院では、「家族とともに未来を担うこども達の健やかな成長と幸せを目指します」という理念のもと、エビデンスに基づいた確かな診療と、優しく寄り添った姿勢で、お子さんとご家族をサポートします。
何か心配なことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。
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Instagram: 武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科

当院の外観写真
川崎市中原区
アクセス:武蔵小杉、新丸子、元住吉、武蔵中原、日吉
武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科
院長 大熊 喜彰
※心臓外来・アレルギー外来・便秘外来・夜尿外来・低身長外来・頭痛外来・起立性調節障害外来・トラベルワクチン外来など、「じっくり専門外来」も開設しています。お気軽にご相談ください。