大切な命を守るために:乳幼児突然死症候群(SIDS)を正しく理解し、リスクを下げる3つの大事なポイント - 武蔵小杉駅の小児科 - 武蔵小杉森のこどもクリニック小児科・皮膚科のブログ

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大切な命を守るために:乳幼児突然死症候群(SIDS)を正しく理解し、リスクを下げる3つの大事なポイント

子育ては大変な時もありますが、喜びと発見に満ち溢れています。が、同時に「もしも」の不安がつきまとうのも事実です。特に、「乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)」という言葉を聞くと、胸が締め付けられる思いをされる親御さんも少なくないでしょう。当院は地域のこども達のかかりつけ医として、日本小児科学会認定小児科専門医の立場からSIDSについてお話しすることは非常に重要だと考えています。

SIDSは、それまで元気だった赤ちゃんが、何の予兆や病歴もないまま、主に睡眠中に突然亡くなってしまうという、大変に痛ましい病気です。現在の医学でも残念ながらその直接的な原因はまだ完全には解明されていません

しかし、原因不明だからといって、ただ手をこまねいているわけにはいきません。これまでの世界中の研究から、SIDSの発症リスクを低くするための具体的な「3つのポイント」が、科学的なエビデンスに基づいて明らかになっています。この3つの対策は、SIDSだけでなく、睡眠中の窒息事故を防ぐ上でも極めて有効です。私たち医療者は、このエビデンスをしっかりと親御さんにお伝えし、実践していただくことが、お子さんの命を守るための責務だと強く感じています。

子育て中のお父さん、お母さんが、過度に不安になったり、ご自分を責めたりすることがないよう、今日はその3つのポイントと、安全な睡眠環境の具体的な整備方法について、優しく、そして分かりやすくお伝えしたいと思います。


 

【SIDSリスクを低くする3つの重要ポイント】

 

SIDSを完全に予防する方法は確立されていませんが、以下の3点を心がけることで、発症率を大幅に下げられることが分かっています。この知識は、すべての親御さんが知っておくべき、子育ての「守りのエッセンス」です。

 

1. 1歳になるまでは、「あおむけ寝」を徹底しましょう

 

これは、SIDS予防の基本中の基本です。

  • エビデンス
    SIDSはうつぶせ寝、あおむけ寝のどちらでも起こりますが、うつぶせ寝で寝かせた場合のほうが、発症率が有意に高いという研究結果が出ています。
  • 具体的に
    医学上の理由(例えば、特定の呼吸器疾患などで医師からうつぶせ寝を勧められている場合)がない限り、赤ちゃんは必ず仰向けに寝かせましょう。これは、夜間だけでなく、お昼寝の時も同様です。
  • 安全の原則
    赤ちゃんの顔が常に確認できるあおむけ寝は、最も安全な寝かせ方です。これは、万が一の窒息や体調の変化にも、親御さんがすぐに気づくことができる状態を保つという意味でも、非常に大切です。

「え、でも赤ちゃんはうつぶせ寝のほうがよく眠るみたいだし…」「寝返りを始めたら、どうすればいいの?」そう心配されるお気持ちもよく分かります。

寝返りや寝返り返りを自分で自由にできるようになった赤ちゃん(あおむけからうつぶせ、うつぶせからあおむけ、両方向に自分で動ける子)は、そのままの姿勢で大丈夫とされています。しかし、寝返りがまだ不確かな時期や、寝かせるときは、必ずあおむけにしてください。

 

2. できるだけ母乳で育てましょう

 

母乳育児には、赤ちゃんにとって数多くのメリットがあることは、もうご存知の通りです。

  • エビデンス
    母乳で育てられている赤ちゃんの方が、人工乳(粉ミルク)で育てられている赤ちゃんよりも、SIDSの発症率が低いというデータが示されています。
  • 具体的に
    可能であれば、できるだけ母乳育児にトライしてみましょう。ただし、お母さんの体調や、様々なご事情で母乳育児が難しい場合もあります。無理をする必要は全くありません。人工乳がSIDSの直接の原因ではありませんので、ご自身のペースで、できる範囲で取り組んでください。

育児は十人十色。大切なのは、完璧を目指すことではなく、「赤ちゃんにとって何が一番良いか」を考え、ご家族と相談しながら無理のない範囲で進めることです。私達もサポートします。

 

3. たばこ(受動喫煙も含めて)は徹底して避けましょう

 

たばこは、SIDSの大きな、そして明確な危険因子の一つです。

  • エビデンス
    妊婦さん自身の喫煙はもちろんのこと、ご家族や周りの人が吸ったたばこの煙(受動喫煙)を赤ちゃんが吸い込むと、SIDSの発症率が格段に高くなることが、数多くの研究で強く示唆されています。
  • 具体的に
    妊娠中のお母さんの喫煙はもちろんですがやめましょう。それ以上に、ご家族も含め、妊婦さんや赤ちゃんのそばでの喫煙も、絶対にやめてください。換気扇の下やベランダでの喫煙も、衣服や髪の毛に付着した有害物質(三次喫煙)が影響を及ぼす可能性があります。赤ちゃんのいるご家庭では、家族全員が禁煙することが、赤ちゃんを守るための最良の選択です。

これは、周りのご家族、おじいちゃん、おばあちゃん、そして来客の方々も含めて、こどもに関わるすべての大人の理解と協力が不可欠な取り組みです。「ちょっとくらいなら」という甘えは、大切な赤ちゃんの命を危険に晒すことになりかねません。


 

【SIDSと窒息事故の予防:安全な睡眠環境の徹底】

 

SIDSと窒息事故は原因が異なりますが、睡眠環境を整えることは、両方のリスクを下げるための「二重のガード」となります。特に、日本の研究でも、寝具が関与した窒息事故が多く報告されており、以下の点に細心の注意が必要です。

 

窒息を防ぐための寝具・環境のルール

 

1. マットレスや敷布団は「固め」を選びましょう

ふかふかした柔らかい寝具は、万が一赤ちゃんがうつぶせになった場合、顔が沈み込んでしまい、鼻や口を塞いでしまう危険性があります。

  • 対策
    必ず赤ちゃん用の固めのマットレスや敷布団を使用してください。大人が寝ても沈み込まない程度の硬さが目安です。

2. 枕、ぬいぐるみ、クッションなどは使いません

赤ちゃんは寝ている間も活発に動き回ります。頭の周りに柔らかいものや、顔を覆ってしまう可能性のあるものを置くのは非常に危険です。

  • 対策
    赤ちゃんの寝る場所には、枕、ぬいぐるみ、おもちゃ、クッション、タオル、バスタオルなどは一切置かないようにしましょう。首に巻き付く可能性のあるひも状のものも危険です。

3. 掛け布団は使わないか、軽く、顔を覆わない工夫を

重い掛け布団や毛布は、赤ちゃんが自力で払いのけることが難しく、顔にかかって窒息するリスクがあります。

  • 対策
    掛け布団は極力使わないようにし、服装で温度調節をするのが最も安全です。もし使用する場合は、顔にかからないように注意しましょう。

4. 添い寝・添い乳は細心の注意を

できれば、赤ちゃんを大人とは別のベビーベッドに寝かせましょう。保護者の方と同じ部屋で寝る(ルームシェアリング)ことは推奨されていますが、大人用ベッドでの添い寝は、大人用の寝具で顔が覆われたり、体で圧迫してしまったりする窒息のリスクが高まります。

  • 対策
    授乳後に親御さんが寝落ちしてしまうこともあるでしょう。その場合でも、目が覚めたらすぐに赤ちゃんを安全なベビーベッドに戻すよう心がけてください。

5. 赤ちゃんを温めすぎない

厚着や、部屋の温度が高すぎると、SIDSのリスクが高まると言われています。

  • 対策
    大人が快適と感じる室温を目安にし、赤ちゃんの様子(汗をかいていないか、熱がないか)をこまめにチェックして、服装で調節してあげましょう。

 

最後に:エビデンスに基づいた優しい子育てを

 

SIDSは、ご家族にとって想像を絶する悲しみをもたらす病気です。だからこそ、私たち医療者は、科学的な根拠(エビデンス)に基づいた正しい情報をお伝えし、親御さんの不安を少しでも和らげたいと願っています。

「あおむけ寝」「母乳育児」「禁煙」の3つのポイント。そして「安全な寝床環境」。これらは、親御さんが日々の育児の中で、赤ちゃんのためにできる「安全対策」です。

しかし、子育ては「こうしなければならない」というルールに縛られて、疲れてしまうものではありません。不安なこと、疑問に思うことがあれば、私たち小児科医にご相談ください。「武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科」は、「家族とともに未来を担うこども達の健やかな成長と幸せを目指します」という理念のもと、エビデンスを重視しながらも、優しく寄り添った診療姿勢を大切にしています。

皆さんが、穏やかな気持ちで、目の前の小さな命と向き合えるよう、心から応援しています。

<参考>
乳幼児突然死症候群(SIDS)について – こども家庭庁

 

 

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武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科の外観写真の画像
当院の外観写真

 

院長 大熊 喜彰 (おおくま よしあき)
記事監修
院長 大熊 喜彰
(おおくま よしあき)

日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務

医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)

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