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今回は、「卵黄による食物蛋白誘発胃腸症(FPIES)」という、あまり知られていないけれど大切なアレルギーのお話をしたいと思います。
「卵白による食物アレルギー」はよく聞くけれど、「卵黄でもアレルギーが起こるの?」と驚かれる親御さんも多いのではないでしょうか。
実は最近、卵黄によって起こる消化管アレルギーが少しずつ報告されるようになってきました。とはいえ、まだまだ認知度が低く、診断までに時間がかかってしまうこともあります。
FPIES(Food Protein-Induced Enterocolitis Syndrome)=食物蛋白誘発胃腸症は、特定の食品を食べた後に少し時間を空けてから、嘔吐や下痢、ぐったりするといった症状を引き起こすアレルギーの一種です。消化管アレルギーといわれることもあります。
一般的な食物アレルギーのように皮膚が赤くなったり、呼吸が苦しくなったりすることは少なく、主に胃腸の症状が出るのが特徴です。
原因となる食べ物としては、
米
大豆
鶏肉
などが知られていましたが、最近では卵黄によるFPIESの報告も増えてきています。
「卵白はアレルギーが出やすいけれど、卵黄は大丈夫」と思われがちです。しかし実際には、卵黄にもアレルギーの原因(アレルゲン)が含まれているため、FPIESを引き起こすことがあります。
特に注意が必要なのは、生後6か月ごろの離乳食初期に卵黄を始めたあと、数回食べた時は大丈夫だったのに、その後、繰り返す嘔吐や下痢を起こす場合です。
卵黄によるFPIESの症状は、
食後2〜4時間後の突然の嘔吐
水のような下痢
顔色が悪くなる(青白くなる)
元気がなくなる・ぐったりする
などです。
食べてすぐではなく、数時間たってから症状が出るのがポイントで、普通の食物アレルギーと違って皮膚症状がないことも多いため、気づかれにくいのです。
診断には、以下のような流れが一般的です:
詳しい問診(食べたもの・時間・症状の経過)
血液検査(ただし、FPIESではアレルギーの数値が正常なこともあります)
経口負荷試験(必要に応じて行うことがあります)
自己判断で「卵黄を止めたらよくなったから大丈夫」と考えず、一度、小児科専門医に相談することをおすすめします。
もし卵黄によるFPIESが疑われる場合は、まず医師の指示に従って卵黄の摂取を中止します。
そのうえで、以下のポイントを意識してください:
自己判断で食材を制限しすぎないこと
医師の管理下で、適切なタイミングで再開を検討すること
卵白との混入に注意すること
最近では、症状が落ち着いてくる2歳以降に再チャレンジできるケースもあります。焦らず、しっかりと経過を見守ることが大切です。
卵黄による食物蛋白誘発胃腸症(FPIES)は、まだまだ認知度が低い病気ですが、早期発見・早期対応でお子さんの苦しさを軽減できます。
「離乳食を始めたら、数時間後に急に嘔吐した」
「下痢が続くけれど、検査では原因がわからない」
そんな時は、卵黄によるFPIESを疑うことも選択肢の一つとして、ぜひ覚えておいてください。
森のこどもクリニックでは、お子さんの食物アレルギーや消化管アレルギーについてのご相談も受け付けています。気になる症状がある方は、まずはお電話(044-739-0888)でご相談ください。
→ 一般的には卵白摂取後10-15分程度で蕁麻疹などの皮膚症状を起こす食物アレルギーの方が多いですが、FPIESのように卵黄で症状が出るケースもあります。
→ 医師の診断によって判断されます。自己判断での除去は栄養バランスに影響することもあるため、必ず小児科専門医に相談しましょう。
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日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)