今回は、お子さまの多汗症、特に原発性手掌多汗症(手のひらの多汗)と原発性腋窩多汗症(わきの下の多汗)についてお話しします。お子さまの手のひらやわきの下の汗が多く、日常生活で困っている親御さんもいらっしゃるかと思います。ここでは、多汗症の症状、診断方法、そして当クリニックで提供している治療法について、わかりやすくご紹介します。
多汗症とは?
多汗症とは、必要以上に汗をかいてしまう状態を指します。特に、手のひらやわきの下など特定の部位に過剰な発汗が見られる場合を局所多汗症と呼びます。お子さまの場合、学校での勉強や友達との交流など、日常生活に支障をきたすこともあります。
多汗症チェックリスト
以下の項目に当てはまる場合、お子さまが多汗症である可能性があります。6カ月以上、明らかな原因なく過剰な発汗があり、以下の6つのうち2項目以上該当する場合、原発性局所多汗症と診断されることがあります。
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最初に症状が出たのが25歳以下である
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対称性に発汗が見られる(両手、両わきなど)
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睡眠中は発汗が止まっている
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週に1回以上、多汗のエピソードがある
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家族に同じ症状の人がいる
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日常生活に支障をきたしている
お子さまがこれらの項目に該当する場合、一度医療機関での診断をおすすめします。
原発性手掌多汗症と原発性腋窩多汗症の治療法
当クリニックでは、お子さまの多汗症に対して以下の治療法を提供しています。各治療法の特徴と、お子さまが使用できる年齢についてご説明します。
1. 塩化アルミニウム外用療法
概要: 塩化アルミニウムを含むローションを患部に塗布し、汗腺を塞ぐことで発汗を抑える方法です。特に手のひらやわきの下の多汗に効果的とされています。
使用可能年齢: 明確な年齢制限はありませんが、皮膚への刺激が強いため、低年齢のお子さまには慎重に使用する必要があります。使用開始前に医師と相談し、適切な濃度や使用方法を決定します。
注意点: 自費での診療となります。皮膚刺激やかぶれが生じることがあります。使用中に異常を感じた場合は、すぐに使用を中止し、医師に相談してください。
2. エクロック®ゲル5%
概要: 日本初の保険適用となる原発性腋窩多汗症治療用の外用薬です。エクリン汗腺の受容体に作用し、発汗を抑制します。
使用可能年齢: 12歳以上が対象となっています。
注意点: 使用開始から効果を実感するまでに2週間程度かかることがあります。また、皮膚のかぶれやかゆみなどの副作用が報告されています。使用中に異常を感じた場合は、医師に相談してください。
3. ラピフォートワイプ®
概要: 2022年に発売されたシート型の外用薬で、エクリン汗腺の受容体に作用し、過剰な発汗を抑制します。使いやすいシートタイプで、わきの下に直接塗布します。
使用可能年齢: 9歳以上が対象となっています。
注意点: 使用中に皮膚のかぶれやかゆみが生じることがあります。異常を感じた場合は、使用を中止し、医師に相談してください。
4. アポハイドローション®
概要: 抗コリン作用を持つ外用薬で、手のひらや足の裏の多汗症に対して使用されます。汗腺の受容体に作用し、発汗を抑えます。
使用可能年齢: 12歳以上が対象となっています。
注意点: 皮膚の乾燥やかぶれが生じることがあります。使用中に異常を感じた場合は、医師に相談してください。