ブログ
Blog
Blog
今日は、お子さんの体調不良でたまに耳にする「自家中毒」についてお話しします。
「自家中毒」という言葉、聞いたことありますか?
正式な病名ではないため、馴染みがない方もいらっしゃるかもしれませんね。医学的には「ケトン性低血糖症」「アセトン血性嘔吐症」「周期性嘔吐症」などと呼ばれます。これらは、疲労やストレス、空腹などをきっかけに、急な吐き気や嘔吐、ひどい場合は低血糖を繰り返す病態の総称です。
「うちの子も、風邪をひくと必ず吐き続けちゃうんです…」
「元気なのに、急にあくびをしだして気持ち悪くなって…」
そんなお悩みを抱えているママやパパも多いのではないでしょうか。
この記事では、自家中毒の原因、症状、そしてご家庭でできるケアの方法を、日本小児科学会認定小児科専門医の視点から分かりやすく解説します。
まず、自家中毒がなぜ起こるのか、そのメカニズムを簡単に説明します。
人間の体は、活動するためのエネルギー源として、主にブドウ糖を使います。このブドウ糖は、ご飯やパンなどの炭水化物から作られ、肝臓に蓄えられています。
ところが、風邪で食欲がなかったり、熱が出てたくさんエネルギーを消費したり、ストレスがかかったりすると、このブドウ糖が足りなくなってしまいます。すると体は、脂肪を分解してエネルギーを生み出そうとします。
このとき、「ケトン体」という物質が大量に作られます。ケトン体は、体にとっての「非常用エネルギー」のようなもの。しかし、このケトン体が血液中に増えすぎると、吐き気や腹痛を引き起こしてしまうのです。
これが、自家中毒の正体です。「自家中毒」という名前の通り、自分の体内で作られたケトン体が、自分自身を苦しめるような状態になるため、こう呼ばれています。
自家中毒のお子さんは、一般的に以下のような症状を訴えます。
このような症状は、数時間から数日続くことがありますが、適切なケアをすれば自然に回復するのがほとんどです。
自家中毒は、どのようなお子さんにも起こりうる病気ですが、特に注意したい特徴があります。
お子さんが来院された際には、まずはお話を詳しく伺います。そのうえで、自家中毒が疑われる場合は、尿検査を行います。尿の中にケトン体が増えているかどうかを簡単に調べることができます。また、必要に応じて血糖測定も行い、低血糖の状態になっていないかを確認します。
もし、自家中毒を何度も繰り返したり、低血糖を含めた症状が重い場合には、他の病気が隠れていないか調べるために、採血などの精密検査が必要になることもあります。
自宅でのケアが難しい場合や、脱水症状がひどい場合には、医療機関での治療が必要になります。
治療の基本は、足りなくなったエネルギーを補給すること。多くの場合、ブドウ糖を含んだ点滴治療を行います。点滴をすることで、お子さんの体はすぐにエネルギーを補給でき、吐き気やぐったりとした症状が改善していきます。
また、嘔吐がひどい場合には、吐き気を抑えるための制吐剤を使用することもあります。
自家中毒は、疲労や空腹、ストレスが原因で起こることがほとんどです。日頃から以下の点を心がけることが、予防につながります。
また、熱を出したり、食欲がない時でも、少しずつで良いのでブドウ糖を含むものを摂らせてあげることが大切です。ブドウ糖は、ご飯、パン、麺類、バナナなどに多く含まれています。
お子さんが突然吐いてぐったりしている姿を見ると、ママやパパはとても心配になりますよね。もし、ご心配なことやご不明な点がありましたら、いつでも当院にご相談ください。
お子さんの健やかな成長を、家族とともに支えていきたいと願っています。
【SNSでも情報発信中!】
当院のSNSでは、小児科・皮膚科に関する役立つ情報や、季節ごとの病気の注意点などを発信しています。ぜひフォローしてください!
Instagram: 武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科
当院の外観写真
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)