連日お日様が強く照りつけています。 公園でのお散歩、プール、キャンプ、そして海。夏休みは楽しいイベントがたくさん詰まっていることと思います。 でも、そんな楽しい夏のイベントとともに、親御さんが気になるのが「子どもの日焼け対策」ではないでしょうか?
「赤ちゃんにも日焼け止めって必要なの?」 「どんな日焼け止めを選べばいいか分からない…」 「塗るだけじゃなくて、他にできることはないの?」
今回は、そんな疑問にお答えすべく、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医と日本小児科学会認定小児科専門医の視点から、お子さんのUV対策と日焼け止めの選び方について、エビデンスを元に分かりやすくお話ししていきたいと思います。
1. なぜ子どもにUV対策が必要なの?
「子どもの頃に日焼けした方が丈夫になる」なんて話を聞いたことがある方もいるかもしれません。ですが、実は子どもの肌は大人よりもずっとデリケートで、紫外線の影響を非常に受けやすいのです。
紫外線の「短期的な影響」と「長期的な影響」
- 短期的な影響(その場で起こる影響)
- 赤み、ヒリヒリといった、いわゆる「やけど」と同じ状態(日光皮膚炎)
- 皮膚の乾燥、ごわつき
- 免疫力の低下
- 長期的な影響(将来の健康に関わる影響)
特に、子どもの頃に強い紫外線を浴びた経験は、将来の皮膚がんリスクを高めることがわかっています。お子さんを守るためにも、日々の紫外線対策はとても大切です。
「でも、ビタミンDはどうなるの?」と心配になる方もいらっしゃるかと思います。
ビタミンDは、骨の健康に不可欠な栄養素で、日光(紫外線)を浴びることで体内で作られます。 確かに紫外線対策をしっかりするとビタミンD不足になるのでは?という疑問はもっともです。 しかし、日常生活の中で、手のひらくらいの面積に15分ほど日光を浴びるだけで十分なビタミンDは作られます。お散歩の際や、ちょっとした外遊びでも十分に足りる量ですので、過度な心配は不要です。心配な場合は、ビタミンDを多く含む食品(魚、きのこ類など)を積極的に摂ることを心がけましょう。
2. いつからUV対策を始めるべき?
結論から言うと、「生後6ヶ月以降」から日焼け止めの使用が推奨されています。 それでは、6ヶ月未満の赤ちゃんはどうすればいいのでしょうか?
生後6ヶ月未満の赤ちゃんの場合
まだお肌がデリケートすぎるため、日焼け止めの使用は基本的には推奨されていません。
- お出かけはなるべく午前10時~午後2時の日差しが強い時間を避ける
- ベビーカーの日よけや帽子、長袖の薄手の服で紫外線を遮る
これが基本の対策になります。
生後6ヶ月以降のお子さんの場合
生後6ヶ月を過ぎたら、日焼け止めも選択肢の一つとなります。ただし、日焼け止めだけに頼るのではなく、生後6ヶ月未満の赤ちゃんと同じく、
- 時間帯を考慮したお出かけ
- 帽子や長袖の服を活用
- 日陰を積極的に利用する
といった「物理的な遮蔽」を組み合わせることがとても大切です。 日焼け止めはあくまで補助的なアイテムとして考えてくださいね。
3. 日焼け止めの選び方と使い方
いざ日焼け止めを選ぼうと思っても、たくさんの種類があって迷ってしまいますよね。

(1) 日焼け止めの種類と特徴
日焼け止めには大きく分けて2つのタイプがあります。
- 紫外線吸収剤(ケミカル)
- 紫外線を吸収し、熱などのエネルギーに変えて放出することで日焼けを防ぎます。
- メリット:サラサラとした使用感で塗りやすい。
- デメリット:まれにお肌に合わないことがある。
- 紫外線散乱剤(ノンケミカル)
- 酸化亜鉛や酸化チタンといった成分が、紫外線を反射・散乱させて日焼けを防ぎます。
- メリット:肌への負担が少ないため、敏感肌や赤ちゃん向けの製品に多い。
- デメリット:白浮きしやすい、テクスチャーが重たいことがある。
お子さんの場合は、紫外線散乱剤を主成分とした、いわゆる「ノンケミカル」や「紫外線吸収剤不使用(紫外線吸収剤フリー)」と記載されているものを選ぶのが安心です。
(2) SPFとPAって何?
日焼け止めのパッケージに書いてある「SPF」や「PA」のマーク、見たことがありますよね。これは紫外線からお肌を守る効果の高さを示しています。
- SPF (Sun Protection Factor)
- 「UV-B」という、肌の表面に炎症や赤みを引き起こす紫外線から肌を守る効果の指標です。
- 数値が高いほど効果も高いですが、その分肌への負担も大きくなります。
- 日常生活(公園遊びなど):SPF15〜20程度で十分です。
- プールや海、炎天下でのレジャー:SPF25〜30程度を目安にしましょう。
- PA (Protection Grade of UVA)
- 「UV-A」という、肌の奥まで届き、シワやたるみの原因になる紫外線から肌を守る効果の指標です。
- 「PA+」から「PA++++」まで4段階あり、「+」が多いほど効果が高くなります。
- 日常生活:**PA++**程度
- レジャー:**PA+++**以上
結論として、日常生活では「SPF20〜30、PA++〜+++」くらいのもので十分です。 「SPF50」や「PA++++」のような強力なものは、肌への負担が大きくなる可能性があるため、特別なレジャーの時だけにするのがおすすめです。
(3) 日焼け止めの正しい塗り方
日焼け止めは、塗る量と塗り直しがとても大切です。
- 塗る量:
- 顔ならパール粒大2個分、腕なら片腕に10円玉硬貨2個分が目安です。
- 「ちょっと多いかな?」と感じるくらいがちょうどいい量です。
- 塗り直し:
- 汗をかいたり、水に濡れたりすると効果が落ちてしまいます。
- 2〜3時間おきに塗り直しましょう。
- 塗る場所:
- 顔、首、耳の後ろ、手の甲、足の甲も忘れずに!意外と日焼けしやすい場所です。
(4) 日焼け止めの落とし方
日焼け止めをきちんと落とすことも、肌トラブルを防ぐ上で非常に重要です。 石けんで落とせるタイプのものがほとんどなので、お風呂で優しく洗い流してあげてください。 ゴシゴシ擦ると肌を傷つけてしまうので、泡を転がすように丁寧に洗いましょう。
4. 日焼けしてしまったらどうする?
もし、うっかり日焼けして赤くなってしまった場合は、すぐに冷やしてあげてください。 冷たいシャワーや、濡れたタオルで冷やすのが効果的です。炎症がひどい場合は、保湿剤を塗るのも良いでしょう。 水ぶくれができたり、痛みが強い場合は、かかりつけの小児科や皮膚科を受診しましょう。
最後に…
今回は、お子さんのUV対策と日焼け止めについてお話ししました。 日焼け止め選びに迷ったら、まずは「ノンケミカル」「紫外線吸収剤不使用」の表示があるものから選んでみてください。 そして、日焼け止めに頼りきるのではなく、帽子や長袖の服、日陰をうまく利用する「物理的な遮蔽」を組み合わせることが何より大切です。
夏の太陽の下で、お子さんが元気に、そして安心して遊べるように、ご家族みんなでUV対策を楽しんでいきましょう! ご不明な点があれば、いつでもお気軽にご相談ください。
<参考>
日本小児皮膚科学会HP「こどもの紫外線対策について」
<関連>
当院Blog「保湿剤・日焼け止め・虫よけの正しい順番は?皮膚科医が教える春夏の子どもスキンケアガイド」

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武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科
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