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暑い夏もそろそろ終わりが見えてきましたね。今回は最近処方できるようになったアトピー性皮膚炎の新しい外用薬2種類についてお話させていただきます。
ひとつ目はコレクチム軟膏®(一般名:デルゴシチニブ)。
「JAK阻害薬」という種類で、従来のステロイド外用薬や免疫抑制外用薬とも異なる製剤になります。アトピー性皮膚炎の炎症にかかわる免疫細胞の「JAK/STAT経路」を阻害することで抗炎症作用を発揮します。成人用0.5%製剤と小児用0.25%製剤があります(小児でも必要に応じて0.5%を使用する場合があります)。1回に5g(5gチューブ1本分)まで外用することができ、生後6ヶ月から使用することができます。主な副作用としては、にきび(2-3%)、毛包炎、赤み、ピリピリとした刺激感などがあります。厳密な比較はできませんが、ミディアムクラス(ロコイド軟膏やキンダベート軟膏のクラス)からストロングクラス(リンデロンV軟膏のクラス)のステロイド外用薬と同じくらいの強さといわれており、炎症が強い部位の外用にはあまり向かない場合があります。
もうひとつはモイゼルト軟膏®(一般名:ジファミラスト)。
「ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬」という従来の外用薬ともコレクチム軟膏®とも違った機序の製剤です。細胞の炎症に関与する物質の発現を調節することにより、皮膚の炎症を抑える作用があります。こちらも1%製剤と0.3%製剤があります。1回の使用量の制限はなく、2歳から使用することができます。主な副作用としては、にきび、色素沈着、かゆみ、かぶれなどがあります。強さもコレクチム軟膏と同等かやや強い程度の印象で、強い炎症を抑える作用はありません。
コレクチム軟膏®もモイゼルト軟膏®も、ステロイド外用薬のような長期外用による皮膚委縮、血管拡張、多毛といった副作用がないため長期使用しやすい外用薬となっています。
長らくアトピー性皮膚炎の新しい治療はでていませんでしたが、ここ数年で注射剤のデュピクセント®(一般名:デュピルマブ)、ミチーガ®(一般名:ネモリズマブ)、アドトラーザ®(一般名:トラロキヌマブ)、内服薬のオルミエント®(一般名:バリシチニブ)、リンヴォック®(一般名:ウパダシチニブ)、サイバインコ®(一般名:アブロシチニブ)などが次々に発売されています。症状や年齢に応じて使える薬は異なりますし、当院では行っていない治療もありますが、ご案内は可能ですので、興味があれば遠慮なくご相談ください。
<参考>
https://www.corectim-patient.jp/
https://www.otsuka.co.jp/for-patients/information/moizerto/
日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務
医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)