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こどもの薬、いつまで使える? 正しい「保管方法」と「保存期間」の知識 - 武蔵小杉駅の小児科 - 武蔵小杉森のこどもクリニック小児科・皮膚科のブログ

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こどもの薬、いつまで使える? 正しい「保管方法」と「保存期間」の知識

日々の診療の中で、お父さんお母さんから、本当によくいただく質問があります。

「先生、前に風邪をひいた時にもらったお薬が残っているんですが、今回も使っていいですか?」
「シロップって、冷蔵庫に入れておけば、次の発熱の時にも使えますか?」
「塗り薬のチューブ、これって去年のだけど…大丈夫?」

お気持ち、とてもよくわかります。 こどもは急に熱を出したり、咳をしたりします。そんな時、手元に薬があると少し安心しますよね。でも、ちょっと待ってください。 その「残っているお薬」、本当に使っても大丈夫でしょうか? そして、そのお薬、正しく「保管」できていますか?

お薬には、食べ物と同じように「適切な保存方法と使用期限」があります。特にこどものお薬は、飲みやすくするために特別な加工(調剤)がされていることが多く、大人の薬よりもデリケートです。

皆さんが最も疑問に思う「処方されたお薬の保存期間と正しい保管方法」について解説します。


 

その前に! こどもの薬「保管の3大原則」

 

まず、お薬の種類別解説に入る前に、すべてのお薬に共通する「保管の基本」からお話しします。ここを間違えると、どんな薬もすぐにダメになってしまいます。

 

原則①:「湿気・光・高温」を避ける

 

お薬は非常にデリケートです。

  • 湿気
    粉薬が固まったり、カプセルがくっついたりする原因です。
  • 光(直射日光)
    お薬の成分が化学変化(分解)してしまうことがあります。
  • 高温
    特に夏場の車内(ダッシュボードは70℃を超えることも!)や、窓際は最悪の環境です。

ダメな場所の例⇒⇒台所(湿気・高温)、窓際(直射日光)、車の中(高温)

 

原則②:指示された「温度」を守る(室温? 冷所?)

 

お薬をお渡しする際、「冷蔵庫で保管してください」とか「室温で大丈夫です」といった説明があるはずです。これは非常に重要です。

  • 室温保存
    医学的には「1℃〜30℃」を指します。つまり、真夏・真冬以外は、家の中の涼しい場所でOKです。
  • 冷所保存
    医学的には「1〜15℃」を指します。ご家庭では「冷蔵庫」がこれにあたります。

<冷蔵庫保管の落とし穴!>
「冷所保存」=「キンキンに冷やせば良い」わけではありません。 冷蔵庫の冷気の吹き出し口付近は、時に0℃以下になり、薬が「凍結」してしまうことがあります。シロップや坐薬が凍ってしまうと、成分が分離したり変質したりして、元に戻りません。

冷蔵庫に入れる場合は、ドアポケット野菜室など、冷えすぎない場所がおすすめです。

 

原則③:こどもの手の届かない場所に「安全に」保管する

 

これは、小児科医として最も強くお願いしたいことです。 こどもは何にでも興味を持ちます。甘いシロップや、きれいな色のシートに埋まっている錠剤は、こどもにとって「お菓子」に見えてしまいます。

誤飲事故は、ご家族が「ちょっと目を離した隙」に起こります。 必ず、こどもの目線より高い場所、手の届かない場所(鍵のかかる棚などがベスト)に保管してください。


 

そもそも「使用期限」と「保存期間」は違います

 

保管の基本がわかったところで、次に「期限」の話です。 お薬の箱や容器に書かれている「使用期限」。 これは、「未開封の状態で、正しく保管された場合に、その品質が保証される期限」のことです。スーパーで売っている牛乳パックに書いてある「賞味期限」と同じようなものだと考えてください。

しかし、私たちが処方薬としてお渡しするお薬の多くは、その場で調剤されています。

  • 大きなボトルからシロップを小分けにしたり。
  • 錠剤をすりつぶして粉にしたり(粉砕)。
  • 複数の粉薬を混ぜて、1回分ずつに分けたり(分包)。

これらはすべて、お薬の「開封」であり、「調剤」です。 牛乳パックの封を開けたら、賞味期限に関わらず「お早めにお飲みください」となりますよね? お薬も全く同じです。

一度「調剤」されたお薬は、もはや箱に書かれた「使用期限」の対象ではありません。私たちが気にすべきは、調剤後の「安定して使用できる期間」なのです。


 

【種類別】こどもの処方薬、ホントはいつまで?(保管方法つき)

 

では、具体的に「粉薬」「シロップ」「塗り薬」など、種類別にみていきましょう。

 

① 粉薬(散剤・ドライシロップ)

 

こどもの処方で最も多いのが、1回分ずつ小さな袋(分包紙)に分けられた粉薬ですね。

  • 保存の目安
    できれば処方された日数内。保管状態が完璧(湿気のない冷暗所)であれば、調剤日から約3ヶ月程度という見方もありますが、これはあくまで「目安」です。
  • 保管方法
    最大の敵は「湿気」です。 特に、甘い味付けがされていることが多い「ドライシロップ」と呼ばれるタイプの粉薬は、非常に湿気を吸いやすい(吸湿性が高い)性質を持っています。

【院長からのアドバイス】
ジメジメした場所(台所や洗面所など)は絶対にNG。袋の中でカチカチに固まったり、逆にベタベタになったりします。こうなると、成分が変化している可能性が非常に高いです。直射日光の当たらない、涼しくて乾燥した場所に保管してください。缶やジッパー付きの保存袋に入れるのも良い方法です。 基本は「処方された日数で飲み切る」。残ったら、基本的には廃棄が安全です。

 

② シロップ(水薬)

 

ここが最も注意が必要なポイントです!

  • 保存の目安
    「冷所保存」で約1週間。
  • 保管方法
    原則として冷蔵庫(野菜室やドアポケット)で保管します。
  • 理由
    糖分が多く、雑菌が繁殖しやすい「生もの」です。一度開封し、別の容器(スポイトやカップ)に移し替える過程で、雑菌が混入するリスクがあります。こどもの唾液がついたスポイトをボトルに戻すのは絶対にやめてください。

 

【院長からの最重要アドバイス】

処方された日数を過ぎた抗生剤シロップは、

  1. 効果が著しく低下している(または、なくなっている)
  2. 細菌が繁殖している(腐敗している)

この2つの重大なリスクがあります。 残っていても必ず捨ててください。これは「もったいない」ではなく、「こどもの命を守る」ための大切な約束です。

 

③ 塗り薬(軟膏・クリーム)

 

皮膚科・小児皮膚科診療も行っている当院では、塗り薬のご質問も非常に多いです。

  • チューブに入ったままの薬
    • 保存の目安
      開封していなければ、約6ヶ月〜1年程度。開封した場合は3か月
    • 保管方法
      高温多湿、直射日光を避けた室温でOKです。冷蔵庫に入れる必要はありません(逆に固くなって塗りにくくなることも)。
  • 容器(ケース)に小分けにされた薬
    • 保存の目安
      約1〜2ヶ月程度
    • 保管方法
      室温保存。指で直接すくわず、清潔な綿棒やヘラを使うと長持ちします。
  • 2種類以上を混ぜ合わせた薬(混合軟膏)
    • 保存の目安: 約1~2ヶ月以内
    • 保管方法
      室温保存。混合すると成分が分離したり、不安定になったりしやすいため、早めに使い切ってください。

<ワンポイント>
塗り薬は、開封した日付をマジックでチューブや容器に書いておくと、管理がとても楽になりますよ。

 

④ 目薬・点鼻薬

 

こどもは結膜炎(はやり目)やアレルギー性鼻炎にもよくなりますね。

  • 保存の目安
    開封後、約1ヶ月
  • 保管方法
    指示がなければ室温保存でOKです。専用の袋(遮光袋)が渡された場合は、必ずその袋に入れて保管してください。
  • 理由
    目や鼻の粘膜に直接使うため、非常にデリケートです。先端がまぶたやまつ毛、鼻の穴に触れることで、雑菌が混入・繁殖しやすくなります(これを「汚染」といいます)。
  • 例外
    防腐剤が入っていない、1回使い切りタイプ(使い捨て)の目薬は、残った液はその場で廃棄してください。

 

⑤ 坐薬(解熱剤・けいれん止めなど)

 

  • 保存の目安: 比較的安定していますが、処方から6か月~1年を目安にしましょう。
  • 保管方法: これが一番間違いやすい! お薬によって「室温保存」か「冷所保存」か異なります。必ず薬剤師さんの指示を確認してください。
    • 室温保存のもの
      例:ダイアップ
    • 冷所保存(冷蔵庫)のもの
      アルピニー、アンヒバなど。

<アドバイス>
 坐薬は体温で溶けるように作られています。室温保存のものでも、夏場の車内など30℃を超える場所に放置すると、溶けて変形し、使えなくなるので注意してください。 「冷所保存」の指示で冷蔵庫に入れる場合も、凍結を避けるため野菜室がベターです。


 

【一番大切なこと】自己判断で「残り薬」を使うことの危険性

 

さて、ここまで「保存期間」と「保管方法」の話をしてきました。 「じゃあ、坐薬は1年大丈夫そうだから、次に熱が出たら使おう」 そう思われたかもしれません。

ですが、最も強くお伝えしたいのは、「症状が似ていても、自己判断で残り薬を使わないでください」ということです。

 

危険な理由①
診断が変われば、薬も変わる

 

こどもの症状は、非常に変化しやすいのが特徴です。 例えば、前回は「ただの風邪」だった咳。でも、今回は「気管支ぜんそくの初期症状」や「肺炎」の咳かもしれません。 前回は「ウイルス性の胃腸炎」だった下痢。でも、今回は「細菌性の食中毒」かもしれません。前回の風邪薬を今回のぜんそく発作に使っても、効果がないばかりか、適切な治療(吸入など)の開始が遅れてしまいます。 「同じ症状=同じ病気」とは限らないのです。私たち小児科医は、喉の様子、胸の音、お腹の張り、そしてご家族からのお話(エピソード)を総合して、その「今回」の診断をしています。

 

危険な理由②:こどもの「体重」は、すぐに変わる

 

こどものお薬の量は、非常に厳密です。そのほとんどは「体重(kg)あたり、何mg」という計算式で決まっています。

3ヶ月前に10kgだったお子さんが、今は12kgになっているかもしれません。 たった2kgの違いでも、お薬の種類によっては、必要な量が変わってきます。 以前の薬を使うと、量が足りなくて効果が出なかったり、逆に(まれですが)多すぎて副作用が出たりするリスクがあります。

 

危険な理由③:お薬が変質・劣化している

 

先ほどお話しした通りです。保管方法が適切でなかったり、保存期間を過ぎたりしたお薬は、もはや安全とは言えません。そんなものを、病気で弱っているこどもに飲ませるのは…どう考えても体に良くありませんよね。


 

お薬は「安心」のためのツールです

 

お薬は、こどもの「今、ここにある苦痛」を取り除く大切なツールです。 しかし、使い方や保管方法を間違えれば、そのツールはかえってこどもを危険にさらすことにもなりかねません。「もったいない」というお気持ちは、物を大切にする日本の素晴らしい文化です。ですが、こと「お薬」に関しては、その考えは一度リセットしましょう。

お薬は、その時の病気を治すために「使い切る」のが基本。 残ったら、それは「お守り」ではなく「廃棄する」のが基本。

私たち小児科医は、その都度、その時のお子さんの体重と症状に「最適」なお薬を考え、処方しています。

「これは、まだ使えるかな?」
「この症状、前と同じかな?」
「この薬、冷蔵庫で合ってる?」

そう迷った時は、かかりつけの薬剤師さんに相談するのもよいです。


【記事のまとめ(結論)

  1. 保管の3原則
    「湿気・光・高温を避ける」「指示(室温/冷所)を守る」「こどもの手から遠ざける」。
  2. 冷蔵庫の注意点
    冷気の吹き出し口はNG。野菜室ドアポケットが安全。
  3. シロップ:冷蔵庫で1〜2週間が限度。
  4. 粉薬
    湿気が大敵。処方日数で飲み切るのが原則。
  5. 塗り薬
    チューブは6ヶ月、混ぜた薬は1~2ヶ月が目安。室温保存でOK。開封日を書いておこう。
  6. 目薬
    開封したら1ヶ月。
  7. 坐薬
    「室温」か「冷所」か必ず確認を。
  8. やっちゃダメ
    症状が似ていても、自己判断で「残り薬」を使わないこと。(診断が違う、体重が違う、薬が劣化している可能性があるため)

 

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院長 大熊 喜彰 (おおくま よしあき)
記事監修
院長 大熊 喜彰
(おおくま よしあき)

日本医科大学医学部 卒業、順天堂大学大学院・医学研究科博士課程修了、国立国際医療研究センター小児科勤務、東京女子医科大学循環器小児科勤務

医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本小児科学会指導医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、そらいろ武蔵小杉保育園(嘱託医)、にじいろ保育園新丸子(嘱託医)

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